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RELIS  作者: 孤独
終焉編
619/634

取引


重要な機密を出す。


「アレクは残り4日でタイムマシンを完成させる」


それを言っていいのか?重大な事であり、バードレイの子達はそれを破壊しに来ていた。無論、バードレイもそうであろう。


「つまり、4日あれば春藍くん達を助けられる。君はどうだ?無論、君なんかをタイムマシンに乗せたりなんかしない。自身も望みはしないだろう?」

「ふふふふ」

「何日。いや、あと何年以上掛かる?」


むしろそれだけで済ませられるほど。どデカイリスクをすでに払っている。なおもリスクを彼女に求めるのか、世界と。言ってもいいくらいかも。


「出来る限り、こればかりは早くやりたいものね」


一時的に"SDQ"を無力化させても、クォルヴァが語る通りの量だ。全てを終わらせるためには



「君が"終焉"を完成させるまで、私は"SDQ"を食い止める」


それがあなたが生まれる最後の条件。だが、


「これまで続いた時代の人達を消そうとする行為を、私は決して許さない。我々人類と管理人、そして君との決戦は。君の時代で決着を着けよう!もう君が彼等を殺す事はさせない!」



勝つための強さじゃなく、護るための強さ。時に敵に乞うてでも



「私達管理人は、あなたのような敵から人類を護るためにある」


クォルヴァは人を護りたかった。まだ先のことでもだ。


「ごめんね、春藍くん。ライラちゃん。随分と難しい事を君達に頼んでしまって……私達の願いは」


奴を倒して、私達の繋げた人類を護ってくれ。


「クォルヴァさん。正気ですか!?」

「……っ、やってやるわよ。けど」


まったく倒せる、超えるというビジョンが湧いてこない相手を。わざわざパワーアップさせてまで、延長戦にする。確かに今見たとおり、"SDQ"を完全に消すことすらできなかったのに、不気味な色を発しながらも、消滅させていく。バードレイの力がなければ、人類はまず助からない。

でも、バードレイはこの人類を助けるつもりはなく、逆に滅ぼそうと目論んでいる。



己がための、理想を築くためだ。



「ふふふふ」

「あなたの返答は?」


真相は彼女にしか分からないだろう。迷った素振りは見せず、



「待ってあげるわ。もう私にとってはそれくらいが、時間の問題と言えるもの」



素晴らしく感動できて、正気を疑うレベルの答え。



「私の時代となるまで、彼等との接触。及び、私からは人への危害を与えない。代わりに協力などもしない」



恐ろしく、気が長いことも幸いしただろう。

バードレイにとっては今ここで、人類を滅ぼそうが、後に滅ぼそうが。時間が決める事であり、そちらへの問題にあまり関心がない。最後の最後、その仕上げこそが第一。そのためにクォルヴァの協力は不可欠とも言える。

許すというのもまた強さであろう。

狡猾な存在であれば、まず呑まない。続いて、条件を厳しくするものだ。



「だそうだ。ここはお互いのために退こうか。歩ける?」

「ええ」


警戒は解かない。

戦闘がこうもあっけなく終わったと言えるが、残り時間。バードレイの警戒をしなければいけない事。口はそう言っても、読めないものがある。


「全員、怖い顔しないでください。私、言ったことは護る主義。期間中にあなた達に危害を加えない。私の時代になった時、決着をつけよう。いいじゃない」



どうせ私が滅ぼすんだから



その自信。加減次第じゃ、次の瞬間に全滅を喰らう事であろう。

近くにいようが、遠くにいようが。関係もない。

バードレイの監視は誰がやろうが難しく、危険な任務であるが。1人だけ進んで名乗る奴が現れた。


「俺がバードレイを監視する」

「!」

「"本音"が分かる俺なら反逆もその場でキャッチできるし、やられるのは俺だ。大した痛手じゃねぇ」


バードレイがややビックリした顔で、現れた御仁に目をやった。クォルヴァの取引もただただ、勝算なしにやっているわけじゃない。


「いいよな」

「三矢くん。あなたもしつこいわねぇ」

「嫌いじゃねぇだろ?」

「当然…………一緒にトイレ行く?」

「女がそんな事を言ってんじゃないの」




◇      ◇




奇妙な光景である。

つい先ほどまで激しく敵対していた者達と共に歩くだけでなく、住民達が避難したスペースまでご一緒するのであるからだ。

三矢以外は彼女から、やや距離をとっていた。三矢がそうさせていたとも言える。



「んーー……」



バードレイは座れそうなところを見つけて、腰を落とした。まだ服も着ておらず、周囲は色々な意味で騒然としていたが、



「服くらい着ろ」

「会うときに持ってこない方が悪いんじゃない?」



服を渡すついでに三矢も隣に座って、多少の抑制を図った。

バードレイは終始無言を貫くつもりだろう。もしというものがあっても、関係なく。三矢は彼女に問いかける。

1つ。まず言いたかったのは、


「意外だな」

「?」


これにはバードレイも、同様な言葉を返す。



「俺達が束になろうとあんたには勝てなかったろう」



三矢は詳しく見ていなかったが、春藍達の意気消沈ぶりの姿を見れば紛れもない完敗を喫していた。

確実に望みどおり、人類を消し去る機会であった。それをあえてと言うのなら、


「寂しいのか?」


だったら


「そんなことは考えねぇか」


結果はすでに分かっている。その道中を楽しんでいる。

ただ、戦いを楽しむことも。どMのように痛みに悦するような性格でもない。ただただ、自分のためにやっていて


「その気の長さで、人類と世界を滅ぼしてから再誕させればいい。あんたは死んでもきっと蘇る。そんな執念を感じる気がする。不可能なんてないだろうに」



やったことないし。仮にそうして得られるものにどんな楽しみがあるのか。



「自分の手で滅ぼしたいからか?」

「……それはあるわね」



どっちみち滅ぶわけだが、ここはやはり自身が身につけたのであるか。


「災害より私が滅ぼしたい。だって、私。ダサくない?それ思うわ」

「……まぁ。な。ただ、ここから俺達人類を救うというプランはカッコイイじゃねぇか?」

「今更、そんなことしてどーするの?」


バードレイの言葉にも一理ある。今のこの世界というものが、百と数人くらいが生き残った世界。かろうじて、これまでの秩序があって社会という形になっている。

こうして、バードレイを歓迎こそしないが、輪の近くに置かれているのも。人々の温かさというものだろうか。

でも、その温かさが人類を救えるかどうかと言ったら、NOだろう。


バードレイの能力が人類の災害から乗り切る手段であるが、それ以降については到底役に立たないどころか、人類全てから危険と認識される代物となる。そこでもう詰んでいる。加えて、思いつく危機も沢山ある。

まず、食料の限りに問題がある。土地があっても、命を生める環境がすぐに成り立つとは思えないところ。

そんな単純な問題が山ほどあって、生き残りをしていく事に無謀がある。たった一つの可能性を賭けて、タイムマシンがあるというのだから、これだけが人類が次へ残せる手段にしかならない。自分と同じように時を逆らってまで、残した人類の宝石であり、功績だ。



「どー転んでもこの人類を私は救わないし、救えない」



その回答。

惜しみすら感じられないものだ。

そこまでが。もしなのか、



「黙って聞いていい」

「ん?」

「もっと早く、俺達と会ってりゃ良かったんじゃねぇか。それくらいのこと。もし救うってんならよ」




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