不全
ドゴオオオォォォッ
破滅の足音は、何よりも大きく。シャレも言うが。衝撃は衝撃波となって、生きる人類を震撼させる。
ガゴオオオォォォッ
これまでにない破壊活動。これまでが静かだって事を思わせるほどの、世界全土。時代の中が文字通りの、”終焉”を告げようとする。
宇宙が誕生した時、星が光始めた時、水やガス、風、熱、炎を生み。海を作り、大地を作り、マグマを作り。植物が生まれ、微小ながら動く生命すら行動を開始し。植物が幾多の種類に枝分かれしていくように、生命の全てもその習いに惹かれ、環境を知って多くの分類と成長を遂げた。
知識を得た者が人間となり、その人間もまたこれまでの生命と同じく、進歩と発展という表現の自由を変えて、成長していく。
しかし、それでも彼等の尽きる時代が
”終焉”
という道なのだろうか。
「生きてる……」
当然かもしれない。それを絶望ではなく、ましてや希望ではなく。
春藍達は当たり前に言えてしまい、思えた自分達にかつてない動揺を生んだ。
人類が管理社会を築いてまで達した領域は、向こう側に立っているたった1人の人間が手にしていた。
絶えず彼女に襲い掛かる白の津波が、黒の背景へと遷り変わっていく。そこに救われたという予感はない。それが無害であってもだ。脅威であるに違いないと、訴えるのに十分なもの。
バードレイの体がほんの少し、自分達に向けて進む時。
「どこへ行くの?」
辿り着く過程を終わらせ、春藍達の前に並んだ。
1つ1つ能力を使ってくるが、どいつもこいつもその過程が一瞬で終わってしまうのだから、春藍達には連続かつ広範囲、多様性あると推測される。
タッチ
そして、今までその能力が人に向けられて使われていない事。4人も同時に触れられる素早さが大した事ないと、言えるほどだ。
危険性が特別に優れていると分かっているのに、彼等は避ける事もできない。
急速な成長は一時的なものであり、臨界点に達すると同時に訪れるのは急激な退化、老化、衰え。”終焉”の効果を存分に使うのであれば、生命にある成長すら飛ばされて、衰えのみを与える。むしろ、それだけで抑えられているのは幸福かもしれない。
ガクッ
「ごふっ」
「ぎゃあぁっ」
ロイと水羽が地に転がり、骨の痛みと皮膚の痛みがこれまでになく、デカイ信号となって体に襲いかかる。
穢れが吹き出るように春藍にも、ライラにも急激な退化が襲い掛かり、立ち上がる事ができず。恐怖のみが増大していく。
「うぅっ」
「くっ……」
体の力が急速に抜かれ、衰えるという生命の絶望。
意識が薄れていくという、眠りとは違った安心のない恐怖に春藍もライラも怯えた。
それを超える者が傍に立つ。
「……………」
勝てるのか、これに……。
バードレイは前を向いている。すでに春藍達を倒したと言えるほどの状況でも、まだ残った者がいる。
「やっと出会えたね」
「そうね」
最後の管理人、クォルヴァが彼女の前に立ちはだかっていた。
”SDQ”が周囲に雪崩れ込み、また誘発させていく。その様子を見届けてクォルヴァに尋ねる。
「なるほど、あなたが”SDQ”を抑止していたわけですか」
藺兆紗との戦いで敗れたが、そのまま”SDQ”と同化し。事態を抑えこんでいた。しかし、今。彼がここに立っているという事は制御を失っている状況。
「なんの用?」
「どけ」
「いいわよ」
バードレイはその言葉になんて事はなく、クォルヴァへ進む形で春藍達から離れていき。クォルヴァも進む形で春藍達の元へつく。
バードレイはこの世の終わりを眺めるように見渡していき。クォルヴァは春藍達をその力で救出させる。
「ぶはぁっ」
「た、助かった……」
同時に
「ありがとう。ここまで持ちこたえてくれて」
「クォルヴァ。あんた、生きてたのね!」
「…………」
その言葉にどう返せばいいのか。困ったもんだと、表情が複雑だった。
「話しは終わったかしら。どーしてくれんの?」
バードレイはまったく彼等を見ずに。けれども、クォルヴァにだけは伝えていることだった。
理解していて、クォルヴァは弧を描くようにバードレイへと近づいていく。返す言葉は、
「私には知りません」
「へぇ」
危機的な状況で優雅に散歩しているようだ。
「あなたはどうします?”時代の支配者”。私と戦ってみますか?」
「あなたは勝てないじゃない」
「でしょうね」
時間稼ぎにしては互いに何かが足りていないと、窮地から救われた春藍達は感じる。逃げ出すべきかどうか。その判断は自分達が決めること。まず、戦うという選択肢はなかった。
スタンッ
「でも、私はあなたを倒せる。それはあなたも気付いている」
睨み合うほど近く来ている事だ。どこにそれがあると、絶望を知った春藍達には理解が届かなかった。
そして、それも甘い読みであること。
クォルヴァはまた歩き始める。大胆にバードレイに背を向けてまで、春藍達に向かってくる。
「私が倒れる前に、あなたを含んで世界が終わる」
希望を届けに来たわけではない。むしろ、逆である。ここまでこっ酷くやられて、なんら次に繫がる材料を手に出来ないで
「あなたはまだ不完全な状態だからだ」
進歩の余地を残している、恐るべき事実。
「”SDQ”を乗り越えられない。確実にその数であなたが潰える」
否定も肯定もなく。
「どうかしら?」
「諦めないのは素晴らしいけれど、きっと白い世界に包まれていくだろう。あなたもそうなり、人々は失う。能力1つでクリアできるのなら、我々管理人でも、どうとでもなった。でも、できなかった」
ドオオオォォォォッ
「どーしようもなく、膨大に溢れているんだ。全世界なんて言葉。たった一つの世界のものではない。分かるだろう?バードレイ」
勝ち負けじゃなく、生き残れるかどうかをクォルヴァは訴える。
何を残すか。何を消すか。
「クォルヴァ。あんた……」
「落ち着け。ライラ、助ける」
どこか桂を思わせるような言葉で返された。
クォルヴァが実力ではなく、言葉で持ってして、バードレイを止めようとする。