表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
永遠編
610/634

岩登


野菜の皮を剥けば早く腐りやすくなってしまう。

溢れる力を剥き出しにする事は、腐ったことだ。

そーいうことでバードレイの力はこれまでも変わりなく、一般と言って良いほどの魔力が流れ出てる程度。

威圧的な雰囲気もなく、威厳もなく。女と語る姿にしてはとてもズタボロ。振り撒く笑顔はこんな荒れた土地に、満足しているというイカレ具合。



「あら」

「母様。お待ちしておりました」



生きるバードレイの子達が、起き上がったバードレイを出迎える。

そんな子達は素早く


「大変、申し訳ございません」

「まだ人類が生きておられております」

「しばし、お待ちを……」



自分達の力不足を謝罪する。チャンスをくださいなどと、愚かしい事を思わず。この命が消えても良く、キチンと語ることにバードレイは



「構わないわ。急く事じゃないの」



特に咎める事はない。また、それを語り。認める事をよくに思う。子達を通り過ぎていく様はこれくらいは許される、頂点の優しい振る舞い。

どちらへ?そんな言葉すら発してはならない。子達は、親を見守る。ただ、そうするだけ。

バードレイは逆に親が子供を心配させないよう、目的地を告げること。買い物に行って来る、美容室に行って来る。そんな気持ちで語ることは



「私、ロッククライミングをしてみるわ」



は?



「あの高い崖の上に彼等がいるから、ロッククライミングで行ってみる」



それは別に構いませんけど、無駄じゃないですか?

今。交戦中ではありますが、"別窓"はまだ壊されておらず。"人語ひとかたり物語ものかたり"と"ペンシルシャドウ"、"バドリアス・マグネティック"のコンボで、空間移動が可能である。

戦うためなら移動という無駄を削るべきだ。

またそんな遊びは非効率以上の、寄り道だ。



「私がしたいのは、ロッククライミング」



それ今する事か?

そんなギャグ調な返しに、恐ろしげもなくバードレイは子達に、やりたい理由を伝える。



「だってここ滅ぼすし、ロッククライミングをする機会って今日しかないかも」

「…………」



母様が目覚めたという事は早くも完成したということ。

しかし、分かっていたことに理解も到達したこと。彼等の強さは突き抜けている。

お気をつけて



「お気をつけてください」

「ええ」

「ロッククライミングの時は、命綱をしてください」

「もちろん。でも、その綱がないからできないって、私はそれが嫌」



遠まわしな退き止めを、気にも留めない。彼等の強さを見誤っている?違う、圧倒的に自分に対しての自信が強い。

直接見ただけじゃなく、やられていく子達を知っている。おそらく、母様も分かっている。怒りに震えている?だったら、ロッククライミングなんかしない。

あの人は自由なのだ。



「連れは要らない。気持ちは受け取る」



母様が言うのなら、子は誰もついて行く事はできない。

歩く距離ですら相当あるにも関わらず、バードレイはマイペースに進んでいく。何を思って見上げているんだろうか?明らかに春藍達の方を意識していない。



「ふーっ」



激しい戦闘。残酷な災害。そんな中を忘れているかのような、散歩気分。

ロッククライミングはするだろう。しかし、


「眠っ」


バードレイは一睡する。きっと誰もしないだろう。道のど真ん中で寝転んで、堂々と寝ている始末。

やる気のない。というより、暇潰しといったところだろうか。

彼女のロッククライミングもそーいったところか。



◇      ◇




『母様がそちらへ向かっています』



魔術、"ベルティ・リンディン"

魔力で鈴や鐘などに具現化し、別地点の音をそこから放出する能力。"別窓"の向こう側から、こちら側にいるバードレイの子達の一部に届く連絡網。

激しい戦闘の中でなんの制限もなく、情報網を使えるのは大きい事だ。

しかし、こちらから伝えたい事はあまり届かないだろう。



ゴギイイッッ



連絡を受けとった1人は今、ロイによって両肩を外され、トドメに顎を拳で砕かれ戦闘不能にさせられた。



「そこそこやるがよ」



住民を守る形で引いた丸円の中で暴れる。



「たかが雑兵だ」



実力にそれなりの差があっても、ロイ達との差を埋めることができない。

7人がロイと対峙する中で最も、実力のある者が前へ出る。


「私がやる」

「了解」


体内から"刀"を抜き取って、ロイとの応戦を臨む。1対1をして、残りの6人を先に行かせる。負け戦と分かっていての、有効な時間稼ぎ。縛り。



「…………」



ちっと人数が多い。負ける事はないが、護り切るには無理な数。

アレクがさっさと全部焼き払ってくれりゃ楽なんだがよ。重要なのは分かるが、整備してんな。そいつを最優先で護らなきゃならねぇも分かるがよ!

こっちの手も考えろ!春藍を回せ!



ライラの"アブソ・ピサロ"は圧倒的に破壊、殲滅に長けた能力。味方すら巻き込む事が多いため、パワーをセーブし戦っている状況で活躍を抑えていた。春藍もほとんど同じであるが、余力を残しているという意味合いが強い。

タイムマシンを護る春藍、アレク、ライラの3人は完全に鉄壁であった。


一方で、住民達側を護っているロイ、夜弧、水羽の3人。

夜弧はこんな急襲時でも、住民達の記憶操作を行なっており、実質的な戦闘はできず。水羽も波に乗ってくる敵を先んじて迎撃したため、まだこの場所に戻ってこれていない。

敵が増えるだけでなく、散られると身体能力のみのロイにとっては面倒極まりない。



「ロイさん」

「ロイさん、私達は……」

「後ろに引っ込んでろ。なるたけ、固まれ。水羽は来る」



バードレイの子達の戦力差、戦力の数。

数の比率は7:3で、タイムマシンを護る春藍達側に集中している。向こうにとっても、それを破壊しに来たのだから当然だろう。とはいえ、ロイの方にも30人ほどいる。

後ろの住民達も隊列を組んでいるわけではない。真正面での対応ならできるが、四方八方やられると難しい。



「俺はタイマンするほど、今暇じゃねぇよ」



ギイイィィッ



1人1人。秒殺していかないと厳しい。だが、中にはいる。ロイとほんの少しの間、対等に戦える奴。

数でカモフラージュして、ロイ側の方が強いバードレイの子達が集中していた。直接ぶつかり合えば、ロイ側の方が強いかもしれない。

狙いは両方。むしろ、1つ。

全ての殲滅、殺害。故に来ている。おまけに1人1人、捨て身で構わないと来た。



「やるじゃねぇか」

「どーも」



両手で握った刀を拳の甲で受け止めている間、バードレイの子は右手を空ける。力に押し負けそうになると思わせ、体内から発射させるは隠した刀。



「っ!」



右手から刀が現れやがった!二刀流か!



奇襲を活かした戦い方。1つの刀から2つとなれば多少驚くが、飛躍的に戦闘力が伸びるわけがない。むしろ、隠した力を晒したのだ。決着は分かっている。

刀を振り下ろし、体の返しが遅くなったその瞬間に。ロイの素早い横蹴りは、彼女の横腹を捉えた。



「ごはあぁっ!?」



両手の刀を手放すほどの高威力。わずかに稼いだ時間。戦いではなく、過ぎ去るという行い。

ロイと向き合わないとは致命的なミス。しかし、リスクを抱えなければ住民の抹殺はできない。


「やらせるかよっ!」


近いところを狙うか。"紫電一閃"のスピードを振り切れるわけなく、急所も晒す。




ドゴオオォッ




3,4人はロイの格闘に成す統べなく、地面に転がる。しかし、時間稼ぎを計っての行動。

反応についていくだけの対応策。1人がロイの攻撃を読んでの応戦。


「くっ」


力にも差が在りすぎる。一度、拳を止めたぐらいでロイの2撃目を受けきれない。瞬間、体全体が旗へと変化する。



フワッ



「!体をなんかに変える"超人"か!」



"自旗"、自身の体を旗の状態に変化させる超人。

ロイの連続攻撃の短い間で変化する速度。加えて、一部を旗に。一部を足に。部分的な変化による攻撃。本来、格闘戦なら相当な強さを持つ能力であるが、



ガチイィィッ



「面白ぇな」



奇襲が通じないっっ!!

経験の差か、余裕の表れが生んだものか。旗となっている自分を掴まれ、

打撃系が通じにくいなら惨く、



ビリィッ



「破いてしまいだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ