上下
ゴゴゴゴゴゴゴ
巨大な津波に
ドドドドドドド
巨大な炎龍に
「タンマタンマ!!」
高波に飲まれて身動きがとれない水羽。アレクの炎龍を直撃されたら大ダメージである。波は止まらない。合わせるようにアレクの炎も止まらない。
「ああああああっ!」
両者はぶつかり、激しい水蒸気、熱を生み出す。
◇ ◇
「ふんっ」
空間移動でやってきた人数の合計は、76人。
全員が来るのではなく、戦闘特化のバードレイの子達だけである。
サポート担当が春藍達の間合いに入れば、邪魔なだけだ。
「はっ」
吸わないからか。アレクのそれは馬鹿にしてる度合いが強い。
「俺は止める。春藍、ライラ。こいつ等を任せるぞ。俺は整備で忙しい」
いきなりの言葉にして、上から決め付けている台詞。
判りきっているって。
バギイイィィッ
「はい!任せてください!」
春藍は1人、徒手拳闘で粉砕。一瞬の隙で倒す様。さらには動きを止めてしまっているバードレイの子達の急所を、的確に突き、撃ち、殺す。
容赦のなさを見せて、アレクを安心させる。
ドガアアァッッ
「僕とライラでこの場は大丈夫です」
って春藍1人でなんとか成りそうな雰囲気。確かに人数差があって、各々能力を発揮できるとしても。純粋な強さで春藍を大きく下回っている奴等の集まり。
能力に自身の能力がついてこれてない典型。ここまで持ってきたのは賞賛するけど、そこまで
「あたしも休むよ」
ライラとアレクの読みは、大当たりである。
確実にバードレイの子達の心理を見抜いていた。
「!!」
「っ!」
思惑通りにいったのは、戦う事が許されただけであった。最悪な手であるのはこの3人が固まっているところを、転送の場に選んでしまったこと。
こっから先が力比べか。力比べになってしまったのか。
その力比べ。強さの上下を決めるとき。数で大幅に上回っていても、1人1人が感じる実力の差。
春藍の冷静でいて、奮うにしては無感情。故、半分も満たんであろう実力で、
ベギイィィッ
"超人"となった者を殴り殺せる。"機械運命"の装甲のみでやり遂げる、絶対的な実力差。
恐怖が入り混じる形で春藍から距離をとるバードレイの子達。
まだ戦ってすらいない状況で、4人もやられた!
これほどの使い手があと5人!?
私達が選ばれた存在であるというのに、そんなことすら抱かせないこの差はなに!?
春藍は近い順番で打撃のみの応戦を展開。数という差が見えており、散らばる彼女達を纏めて葬るのは難しい。また、向かってくる相手ならば、1人1人を確実に倒す。能力というものを、素の強さで無意味にする。これほど数が脆く思えることはない。
「"髪芸術"」
髪を自在に操作し、束ねることで鉄すら砕く髪にもなる。だが、春藍にとっては鈍らも良いとこ。
パシィィッ
春藍が両の手で髪を握る。引き千切るまでの一瞬。殺される事を前程にできる。ひとまずは退散への布石。分かっている。
ブヂイィィッ
「!あ」
魔術、"マジックタッチ"が春藍の両足を掴んでいた。対象者からは触れる事ができず、こちらからは掴めるというシンプルな能力。故に力の差が
「!っ、んんっ」
「魔力を掴む力に変えてるんだね」
こ、この人。見かけによらず、メチャクチャ重たい!!掴んだだけじゃ、まったく動かせない!動きを止めることで精一杯。
「!!」
"魔術"の使い手は、"科学"や"超人"よりもそれが誰なのかを見切るのが難しい。しかし、春藍は攻撃を受ける程度で誰がやっているかを掴んだ。銃でくるか、レーザーでくるか。
掴まれる両足でパワーを上げて、
「蹴る」
ドガアアアァァッ
"マジックタッチ"の使い手を倒し、掴まれている状態から脱出。多少の重さが消えた程度に過ぎないほど。
まだ"創意工夫"、"テラノス・リスダム"、"マグニチュード"などなど。多彩な能力を保有する春藍が、"機械運命"のみの応戦。数による無理矢理の事では敵わない相手だった。
ならば、相性をとる。
「”魔導掃除”」
対”魔術”用に作られた、掃除機型の科学。相手の魔力を吸い上げ、”魔術”を封じる。
「ねぇ」
彼女がライラと戦う選択は間違いではない。
「実力差が分かってないようね」
それに気付ける戦意がこいつ等にあるかどうか。
”魔導掃除”は確かに、”魔術”の使い手には有効。特に効くとすれば、夜弧、クォルヴァ、三矢のような特殊な力を発揮するタイプには有効。彼等は離れた地点の魔力操作が苦手である。だが、ライラの場合は違う。放出した魔力を操作し、変化させるタイプ。”魔導掃除”に吸収され、別の異空間に流されても、操作と性質を高められる。ぶっちゃけ、ライラが凄すぎるだけでちゃんと効くものだ。
故に
ドゴオオオォォォッッ
「!………」
「吸っても変わらないわ」
”魔導掃除”をなんと中から破壊する。
相性が決して良いってわけじゃない。だが、見せ付けるには良い。
「それとあたし。春藍と違って、加減しないから」
放出された魔力がもったいない。たったそれだけの事で、”アブソ・ピサロ”による攻撃は10数人を纏めて葬り去る事であった。
確実にやられる。上陸した者達がそれに気付き、寿命を数える。
強い。確かに強い。
「ふふふふふふ」
「うふふふふふふふ」
この笑いにすら興味を持たれない。
母様にとっては、この戦いは調査に過ぎない。
命に価値などなく、子にやれることなどない。
子も分かっているという恐ろしさ。その恐ろしさを超えるものが、バードレイ。
ムクリッ
「私なの」
起き上がる、”時代の支配者”




