表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
永遠編
606/634

墓場


ブシュッ




あの巨大なアンリマンユの屋根が、SDQの単純な"質量"に耐え切れず、崩れ落ちる。



ガシャァンッ



それでも、"質量"は残り、空に留まった。

異変の正体を確かめる事はできたが、それらに近づく事の危険さと時間の無さが事実。

人の選択が、人のためにある事を示す。

歌は語る。



「熱い土を踏みしめる人」



生きていこうとする



「どこまで歩いても終わりはないよ」



人が潰えても、残って語り部となるだろうか。



「……あはは、恥ずかしいね。ちょっと憂い憂いな気分」



謡歌は子供達と一緒に歌を作っていた。

下手とか上手いとか、ちょっと恥ずかしさがあっても、残るならそーいう形が良かった。

もし、旅立つ時。間に合って欲しいと、短い時間に思う夢だった。



「謡歌さん、歌おー」

「うんうん」

「精一杯やろーよ」

「そうね。みんな」



ピアノでも、笛でも、なんでも欲しいと思うけれど。

声と喉と、言葉があって。みんながいてくれることがとても嬉しかった。

そう、この時になっても。思えるという人間の強さであり、ある種の愚かさ。

死ぬのに楽しめる?それは人以外には理解不能な感情であり、選ばれている人にしか感じられない事であろう。



何故、笑える?何故、幸せだと。



強がっている。


「…………思いの他」



船の出港待ちにしちゃ、随分と長すぎるせいか。

またいつか会おうとする別れじゃない。これで最後と分かった姿を知る。

それがこうして、笑顔でいてくれる彼等のことを見て、背負っている重圧プレッシャーを知れて。今の全てと、そのギリギリの生存と希望がどれだけ大切か。ライラは胸抑え、



「思ったよりある方だぞ。さっき揉んだしな」

「五月蝿いわね、ロイ」

「乳首以外は固くなんなよ」

「黙れ」



こうして、気を楽にしろってか。



「重大な役目だ。俺達の今の任務は、アレクと春藍。あのタイムマシンを守りきり、旅立つこと。その先の事はそこで決めればいい」

「……そうね。ゴチャゴチャ考えすぎはあたしに似合わないか」



一度終わる世界、時代。

それでもロイは言う。それに真面目さ100%、全振り。



「俺。色んな世界見て来ても、共通して。どこにでも楽しいもんがある事が良い。先はそーしてぇな、ライラ」



ロイが感じれば、自分も。春藍も



「当たり前じゃない」



終わらせないから



「で?アダムとイヴって神様がいてよ」

「そんな展開を予告しない」

「ノリが悪いな。俺がちょっと真面目になっても良いだろ」



夜弧が行なっている記憶操作は順調に進んでいる。とはいえ、不休のまま突き進めている。なにかを感じ取りながら、探りながらのことである。

彼女の決意がどうにも人のために思えず、自分のためにやっている節をライラは抱いている。



「俺達にとっちゃ、3番目くらいの事だ。夜弧に任せろよ」

「……残念だけど、そうね」



治安の維持と警護は続く。



「……見られてるな。大分遠いが」

「やっぱりロイも気付いているのね。私の霧と雲の索敵に時折掛かる生物が、確かにいる」

「藺兆紗が死んでねぇ、証拠だろうな。だが、仕掛けてこねぇのはなんだ?こっちから行くか?」



退屈の紛らわしのつもりだろうか。それとも相手の僅かな希望を折るためか。

こんな状況を6時間ほど続いているが



「十中八九、誘いよ。あいつは大勢の人間を操作できる能力。自身は戦わずして、私達の分断を図っている。けど、もう人間のストックはないはず。小細工に構わないことね」

「…………だな」

「怖いのはこの監視、通しのやり方が明らかな能力だって事。それも複数。大人数の自動操作ではなく、意図的な操作であるから手強いかも。相性という意味で、やられる事もあるけど。……"けど"って可能性のこと」



絶対に勝てない。こっから覆せる手段があれば、この前にやっているだろう。

無事に時間が流れてくれる事がライラ達の勝ちと言える状況に、藺兆紗が気付いていないとは思えない。また、諦めてくれるとも思っていない。

膠着状態のままでもいい。




そーやって、今。住民達が記憶の入れ替えが行なわれ、終わる時まで笑っていること。

幸せを作っていく事。

大した人類であると、賞賛をする。


「だけど、母様の世界には要らない人達」


バードレイの子達はその動きを読み切って準備を仕掛ける。いくら向こうが強くても、情報解析を持つ能力者は限られている事を看破。

奇襲という単純ながら、強さを覆す戦略。

存在をキャッチされても、何をしてくるかの動向を探れない。




ガシャァンッ   バシャアァァッ



「先手がこちら」

「必勝もこちら」




磁石型の科学。"バドリアス・マグネット"が、トイレ型の科学。”生活妖精ライフエンジェル”に装着される。

サポート型の能力が全力で活きる瞬間が今。想定はされていても、読み切るには知らなければ出来ない事だ。

流れ出る水。溢れる水。濁流と共に仕掛け、海のフィールドで有効に起動する準備も整っている。




「参ります」



春藍達 VS バードレイの子達。


”時代の支配者”と呼ばれる者の、子供達の牙が抜かれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ