子人
散らばっているカードを選択というのなら、良質な使い手を勝者というのだろう。
選択を自分で確かに選び、勝ち残る事でも良い。
敗北といえど、選択というカードを自らとれるという事が基本、大事。自分のことだから。
愚かという枠かな?悲しいという枠かな?その選択というのを決めきれない、自分というのがいたら、一番残念なこと。
それは人生の敗者以下。人生の失格者。
選択を、確かに、選ぶこと。
大人はそーいうのを自然とでき、気付くべきことだった。できれば、上手く伝えてくれるといい。
「謡歌さん」
子供は無邪気で純粋で、選択というのをご理解するのは当分、先のこと。
選択ができないって事を身を持って、知りながら成長していく。
「なーに?」
こんな状況の中でも、子供達がいる。
大人達の会話をどーやって受け止めればいいか。でも、分かっている事もある。
「死ぬって、なんですか?」
もうすぐなんだなって、受け入れる顔ではなく。とても不安で分からなくて、なんか悲しいから。涙堪えても、表情が引きつって、不安特有の震えを発する。
難しい質問でなった事もない謡歌には、それを大人的に伝える。
「これまで生きたって、証明。かな?」
本来。
こんな災害、トラブル。
そんな理由で奪われる命を許せず、悲しくなることを当たり前にする。
「死んじゃうのに?生きたって?」
「そ、死んじゃうけれどね」
謡歌のそれは励ましじゃない。でも、ちょっとだけ。不安をとれると良かった。
自分でも辛いのに、子供な君達にはもっと辛いよね?子供の震えがまともだって分かっていて、強がって、平静で話すのが今の大人だった。
「精一杯。今を生きるの。自分は生きてるんだーって、思って、今日を生きるの」
「……でも、死んじゃうよ?そんなに長くないって」
「誰だってそうなの。でも、よーく見て」
自分の体を見れば、まだ元気に話せる口。こんな気持ちが分かる感情。触れ合っている手足に
「話せるって、良いんじゃない?笑えるのって良いこと。これって生きてるって事」
ただ脳と心臓が動いているだけの者を、人とは呼べないし。
子供には難しいけれど。その条件を満たしながらも、人生楽しんでない奴は、人とは呼べない。
また、それらが欠けていても、人生を楽しんでいる奴など大勢いやがる。
子供は今、その時の事しか分からないから。勝った負けたや、上や下で比べるんだろう。結果だけが大好きなんだ。競い合うって、どこからか気付ける愉しみ。ちょっとは進歩したかなっていう、成長の喜び。勉強なんてクソ喰らえだけど、興味が惹かれるものに対して、ホントに好きになれること。人と出会い、友情なり、愛情に飢える幸せ。
色々周りに転がっている。そーいうもんだった。
「でも、何もないよ」
今はそんな人生論など、意味はなさない。
ガキが、ゲーム機や漫画のない時間に囚われていて、当たり前に感じる退屈。
力が弱くて意志が起伏で、こんなことを楽しめない。楽しめるわけもない。大人は無理に笑っているよう伝える。
「あるよ、あなた達の命があるから。大丈夫」
助かるなんて事は言えないけれど。
「じゃー、考えよう」
「なにをです?」
「楽しくなる事でも、なにか……」
こんなところでもあれば、
「本でも落ちてないかな?童話とかでもいいし」
他を探せと言われそうだけれど、
「宝探しでもしよっか?」
「でもでも、危ないです。みんなと離れるのは危ないって、ヒュールさん達が」
「そーね。あ!じゃー、私達でお話でも作ってみない?」
「お、お話!?」
「男の子は鬼ごっこでも、かくれんぼでも、ボールがあればサッカーとか?思いっきりやろうよ。あ、唄とか作るのも楽しいかも」
「でもっ、ボールないし。逃げられる範囲も狭いし」
「……あ」
ほんの少しだけであった。自分が持っていた、最後の気持ち。
「ちょっと待ってて」
子供のように、家族のように。ほんの少しだけ甘えたかった。子供達の輪をちょっと抜け出して、
「お兄ちゃん、ちょっと良いかな?」
「謡歌」
整備中の兄、春藍に声をかける。
「行ってやれ、春藍」
「でも」
「お前の肉親だろ。俺もさっきは助かった。ちょっと安心できた」
「……ありがとうございます」
アレクの言葉もあって、春藍は謡歌と一緒に行く。
ドーーンッ
「待ったーーっ!」
そこへマッハで飛んで来るのが、水羽だった。
「僕も行って良い!?いい!?謡歌!」
「うん!いいよ、水羽ちゃん」
ロイと一緒に周囲の監視役になっていたが、彼の計らいでしばしの時間をもらえた水羽。
春藍的には水羽がいてくれれば、いいんじゃないの?みたいな雰囲気であったが、水羽はそれを許さないように春藍を睨みつけていた。一方、謡歌の方には笑顔で応える二面性。
「お願いがあるの、お兄ちゃん。私のわがまま」
「できること、あるかなぁ」
「そんな理由で逃げようとするな、お前~。ぶっちゃけ、離れろと僕はいいたいが」
「謡歌ちゃん、手。強く握りすぎ。痛い……」
2人は謡歌に連れられて子供達の前へ。正直、春藍はこーいうのが苦手であった。どーやって接すれば良いのかを。ちなみにであるが、謡歌の兄であるということはあまり知られてはいない。子供達は春藍にも、水羽にも近づいて服を引っ張る。
「ねーねー、何をして楽しむのー?」
「一緒に鬼ごっこー?かくれんぼー?」
「科学の作り方を教えてー」
「うっ、あの」
ちょっとタジタジな顔を出す春藍に、謡歌が助け舟を出す。
「こらこら、お兄ちゃんに詰め寄り過ぎちゃダメ。お兄ちゃんは忙しいの」
「えーっ」
「でーも、みんなと遊んでくれるんだから。ちょーっと待ってね。いい子だから」
「わーい!」
子供達を手なずけつつ、
「お兄ちゃん。ボールや紙、ペンって造ってくれる?」
「それくらいだったらいいけど……」
「あとは私が子供達のお世話をするから。忙しいのにごめんね」
「僕もするぞー!子供の世話!」
謡歌に言われた通り、欲しい物をぱっぱと豪華に、”テラノス・リスダム”で製造する。それくらいで子供達は良いものなのか?
しかし、自分とは違うことを見ておきたい。また、見ていて欲しいと。
「あは、ありがとう。お兄ちゃん」
謡歌が、自分が造ったボールを捕り上げた時、春藍はそう感じた。




