表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
災害編
601/634

子酉


自覚することには相当の時間が掛かった。

しかし、それで良い。思春期やっているガキがほんの少し抱く、辛い現実を背く僕の神様がいると、強い信教心が生まれ、根付いて生涯を捧げていただけるだろう。

人生とは、そーいう使い道で良い。自分もそんなもんだった。

誰かと一緒である必要もないし。人から学ぶことは大切であるが、人に頼ることは大切ではない。信じるのは結局、自分で。自分がどうなるかが、幸せでも、楽しさでもある。人ともにいることが幸せも、自分の答え。


バードレイが備えてしまっている意志は、赤子どころか、胎児という栄養だけを食らう、生物の頃からの記憶や経験すらも創造し、堅牢に構築するまで。揺ぎ無くして、証明できねぇのに強い。妄想癖と現実と向き合ってしまう、相反した意志を概念や法則と誇れるほどに、強く兼ね備えていた。



救いにして、世界にとって、絶望するべきところは。



まだ、バードレイが備えているのは、時代のいくつも渡ってきても、その意志という。生きている力の源しかないというところであろう。

彼女がまだ、それだけでいることが救い。



そして、今。

藺兆紗の力を借りて、自らの能力を製造中。

そのため、意志があろうと彼女が動けない(力にもなれんが)。そこで動く手足という、我が子達。

母親の頑張り、生まれてくる事ができた恩。また、養育費をくれる程度の父親。それに応えるため、始動する。



「母様は」



世界を、時代を、代えることを願う。夢と書く。望んでいる。

0からの創造クリエイトを求めての、変革。これまで、そして、どれだけの。時代と、歴史と、人と、命と、仲間と、希望を、踏み躙られ、笑われて、忘れられ、熱く、喜び、暗く、悲しみ、狂い、まともで、


とても気長にやってきたんだろうか。



「失敗を、恐れちゃだめ」



母様は言う。



「気長に、気楽に、やればいい」

「でも、勘違いしないでね」

「失敗してもいいやじゃないの、諦めてもいいやじゃないの」



どーでもいいとは違う。気長でも、その事に対しては全力を尽くすこと。あえて言うのなら、



「私達も、母様にも、代わりがいる」

「死んでも。また。やり直せば良い」

「それだけに。母様は、無敵で、最強で、死なない」

「でも、負けちゃうけど」

「だから、私達にも」

「死などない」

「とても素晴らしいこと」


死なないと思い込むこと。また誰かが、この意志を継いでくれるという。精神異常者が持つまともな思想感。

この子達は、人間という生物でありながらの異常者。

そして、バードレイとは違い、元々は藺兆紗の駒としての教育や人間の製造に携わっており、現状の強さだけをとれば、彼等が信仰するバードレイよりも強い。

さらには能力の開発はすでに済ませており、藺兆紗からの洗脳から解き放たれ、その自由な意志でバードレイのために動き、死すらも受け入れる。



「私達は時代を代えること」

「何もかも、全部」

「だから」



子酉達の全てが、目的に対して動き始める。



「今の人々が、私達の時代に継げてはダメ」

「宇宙を創造するように、母様は気長」

「定義の概念すらも携わりたく」

「法則すらも操り」

「命を産むも、作るも、幸せも、逆の不幸も、全部全部、あげるの」

「世界と時代を、白いキャンバスにしてから、なの」

「そこにこの人類の意志、人が、入ることになれば」

「完全なる支配者ではなくなる」

「母様はショックを受ける。でも、少しかな。消え失せるまで待つかな?」



気長気長と語りながらも、いつあるか分からないチャンスを不意にする事はない。

全力でこの人類の窮地にトドメを刺すために隊列を組む。



「必ず、阻止する。この人類の引継など、母様の時代には引き継がせない」

「この人類は滅びようと極僅かでも生き延びる、シナリオを持っている」

「私達が気長のようにこの人類も、残ろうとしていたこと」

「凄いね。でも、無駄」

「母様が覚醒される前に終わること、それに」

「覚醒された母様は、"時代の支配者"」

「この人類というちっぽけで敵うことはないの」



まさに彼等が行こうとする。その時だった。


「待てよ、お前等」

「!」


立ちはだかったのは、この人数を止めることなど絶対できない。たった一人。そして、弱い者だった。



「させねぇよ」

「……三矢正明」



復活した後。人の心理状況を読み取れる"本音"が、広域のレーダーとなって、2つのグループを感知。

一つはすぐに春藍達であることと、もう一つがバードレイの子供達。

またの無謀である。


「なにができる?」

「あなたは無力だ。戦うことができない」


分かっているよ、言われなくても。ただ、バードレイがここまでを作ったように。

三矢にもまたそれだけの事をやってのけている。とてもちっさいものかもしれないけれど、それを束ねて、積み重ね、時を刻んでここに立っている。


「俺はこの人類を、あんたと対等にできるまで、準備させた。だから言う。攻撃するのを止めろ」

「何を?」

「どの道、滅ぶんだよ!何ができると思ってんだ!!」


たった1人の言葉。加えて、忠誠心の高い敵達ともなれば、話し合いになど持ち込めるわけもない。


「嘘だ。生き残れる奴等がいる」

「わずかな可能性でも、潰すのが当たり前」

「怯えた狼でも、しっかりと獲物の首を食らう。命を食む。当然」

「そのための管理社会。あなたの計画だった」

「見くびってはいない。むしろ、高く賞賛している」

「まさかの交渉?それはないない。無理無理」


でも、やるしかない。

この自分の命がもしかすると、バードレイのためにあるのならば、三矢は吼えた。


「見捨てられねぇんだよ!!ガキは黙ってろ!!お前等の血肉がそれでできている事に、腹も立ってんだよ!!」


こいつ等と話しても埒が明かない。また、アレクと同じような気持ちでもある。


「バードレイを出せ。酉麗子を出せ!お前達の母親を出せ!」

「ダメ。母様は準備中。暇もなく、忙しい」

「あなた方の計画も、母様があってのこと」

「母様。拗ねるかも」

「そしたら、滅ぼすかも。また何光年とかけるかもね、母様」

「人類を助けるも、助けないのも母様次第」


言葉と同じように、今のバードレイは藺兆紗の空間内にいる。出会う事はできない。

ならば、藺兆紗をとっちめても良い。

思いっきりだ。ここを切り抜けろ。

声しか出せないけれど、それでも



「あんた!人類がこれまで!どれだけの思いで生きて、繋げてきたと思っている!!あんただけじゃねぇーんだよ!!」


届いてくれと


「俺達が”いた”って事すら無くなる時代に、自ら納得するのかよ!?俺達は仲間だったろう!あんたも1つ2つ、大切な者がいた!それすら全部消して、あんたはいいのか!?」


分かってるよ。

ここまで来て、この人が折れない。折ったこともない。

だけれど、俺も折れない。折れるわけにはいかない。


「構わないって言うだろう!だが、俺は。あんたの権限だろうと認めねぇー!!認めねぇ!!だってよ!俺達がホントに、世界も時代も変えたんだ!!それすら無くすなんて、まだ欲する意味も、まったくねぇだろ!!あの全員の想いと、頑張りを」




ドスッッ



「五月蝿い、三矢くん」



腹部を刀で貫かれ、あっさりと


「!」

「っ……無駄にできねぇ」


倒れるわけにはいかなかった。痛みを堪えて、足がガクガクと震えても。男なりに踏ん張って


「俺が、そうして、ここにいる、から」


けれども、バードレイの子達から三矢が倒れるまで、動けなくなるまで。

残酷な仕打ちを受けることは当然のことだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ