表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
456/472

第56話『教わるという選択』

CM撮影を終えた翌日。

結衣はM&M COMPANY本社の廊下をうろうろしていた。

三往復目。

真優がコーヒーを持ちながら出てくる。

「何してるの?」

結衣は即座に頭を下げた。

「弟子入りさせてください!」

真優が一瞬固まる。

「……は?」

美優が後ろから静かに出てくる。

「朝からうるさい」

結衣はそのまま姿勢を崩さない。

「お願いします!真優さんの演技力、盗ませてください!」

真優はコーヒーを一口飲む。

「急にどうしたの」

結衣は言葉を探す。

「最近、全部“なんとなく”でやってる気がして……」

「それ、結構まずいやつだね」

美優が即答する。

結衣は続ける。

「凛さんみたいに“戦える演技”がしたいです」

「麗華さんみたいに“空気を支配する感じ”も欲しいです」

「でも全部中途半端で……」

真優は少し黙る。

そしてため息。

「つまり、全部欲張って迷子ってこと?」

「はい!」

即答。

美優が横目で見る。

「素直すぎる」

その時、真優が言う。

「じゃあ聞くけど」

「はい!」

「私の何を学びたいの?」

結衣は固まる。

「えっと……全部です!」

真優は無表情になる。

「帰れ」

「待ってください!!」

結衣は全力で止める。

真優は少しだけ笑う。

「冗談」

美優が呟く。

「珍しい」

真優は椅子に座る。

「結衣はさ、今“全部真似しようとしてる状態”だよね」

結衣は頷く。

「うん。でもそれだと絶対ブレる」

真優は続ける。

「だから“軸”だけ作る」

結衣は身を乗り出す。

「軸……?」

美優が短く言う。

「感情の置き場所」

真優が頷く。

「それができれば、凛にも麗華にも崩されない」

結衣は息を呑む。

その頃——

別スタジオ。

白石凛と藤崎麗華は撮影の合間に控室にいた。

そこへ美優が電話をかけている。

「結衣が弟子入りしたいらしい」

麗華が吹き出す。

「なにそれ可愛い」

凛はスマホを見たまま。

「遅いくらい」

美優が続ける。

「で、どう思う?」

麗華は即答。

「いいと思うよ。あの子、今が一番伸びる時期」

凛は少しだけ間を置く。

「真優なら正解」

美優が確認する。

「同意?」

麗華が笑う。

「同意」

凛も短く言う。

「同意」

電話は切れる。

同じ頃。

結衣は真優の前で正座していた。

「じゃあ始める」

真優の一言。

空気が変わる。

「まず、泣いてみて」

結衣は固まる。

「え?」

「理由なしでいいから」

「ええええ!?」

真優は動かない。

「できないなら弟子じゃない」

結衣は必死に考える。

でも涙は出ない。

焦る。

「無理です……!」

真優は冷静に言う。

「じゃあそれが今の限界」

その言葉が刺さる。

結衣は黙る。

そして——

目を閉じる。

(悔しい)

(できないのが悔しい)

その瞬間。

涙が一粒落ちる。

真優が小さく頷く。

「それ」

結衣は驚く。

「今のが……?」

「うん。感情の置き場所が“外”じゃなくて“中”に入った」

美優が横で言う。

「やっとスタートライン」

結衣は涙を拭く。

でも少し笑う。

「弟子入り……認めてもらえますか?」

真優は立ち上がる。

「まだ早い」

「えっ」

「でも、悪くない」

結衣は固まる。

美優が一言。

「合格ラインには乗った」

その夜。

結衣は一人で台本を開く。

今までと違って見える。

(感情の置き場所)

その言葉だけが頭に残る。

そして遠くで思う。

凛。

麗華。

真優。

みんな違う場所で、同じくらい遠い。

でも——

少しだけ近づいた気がした。

第57話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ