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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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455/472

第55話『それぞれの場所』

映画の撮影が一時休止に入った日。

芸能界は別の“動き”を見せていた。

結衣には新しい仕事が入っていた。

「お菓子メーカーのCM?」

真優が台本をめくる。

「しかも単独」

結衣は固まる。

「単独……?」

美優が短く言う。

「個人としての評価が上がってる証拠」

結衣は嬉しいより先に不安が来る。

「映画と違う意味でプレッシャーなんですけど……」

真優が笑う。

「でもこれ、かなり大きい案件だよ」

結衣は台本を見る。

そこには明るい笑顔の女の子。

「……私にできます?」

美優は即答する。

「できるかじゃなくて、やる」

シンプルすぎる圧だった。

一方その頃。

白石凛。

そして、もう一人。

藤崎麗華。

二人は同じスタジオにいた。

M&M COMPANYとは別のプロジェクト。

自社ブランドの広告撮影。

麗華が軽く髪をかき上げる。

「結衣ちゃん、CM決まったらしいね」

凛はカメラテストを受けながら答える。

「そうみたい」

麗華は笑う。

「ライバル増えるね」

凛はカメラ越しに一瞬だけ視線を上げる。

「別に」

麗華は楽しそうに続ける。

「でもさ、あの子、伸びるタイプだよ」

凛は何も言わない。

ただ、カメラに向き直る。

シャッター音。

パシャ。

その瞬間、凛の表情が変わる。

プロの顔。

圧倒的な安定感。

麗華は小さく呟く。

「……やっぱりあなたも化け物だよね」

——同日。

結衣はCM撮影スタジオに立っていた。

お菓子メーカーの明るいセット。

カラフルな背景。

スタッフの声。

「じゃあいきまーす!」

カメラが回る。

結衣は笑顔を作る。

しかし——

ぎこちない。

「カット!」

監督がすぐ止める。

「結衣ちゃん、ちょっと硬いね」

結衣は苦笑する。

「すみません……戦場じゃなくてお菓子なんですけど……」

スタッフが笑う。

でも結衣は本気で混乱していた。

(映画と全然違う……)

“演じる”じゃない。

“自然な自分”を出す仕事。

それが一番難しい。

三テイク目。

また止まる。

真優が小声で言う。

「今の凛なら一発だな」

結衣は固まる。

(比べるな……)

でも、勝手に頭に浮かぶ。

凛の集中力。

麗華の余裕。

(みんな、違う場所で戦ってる)

その時だった。

スタッフが言う。

「少し休憩入れましょう」

控室。

結衣は椅子に沈む。

「これ、映画より難しいかも……」

そこへメイクスタッフが言う。

「結衣ちゃんってさ」

「映画のときより“素”のほうが難しいタイプだよね」

結衣は苦笑する。

「それ、褒めてます?」

「褒めてる」

その頃。

別スタジオ。

凛と麗華の撮影は順調に進んでいた。

凛は無駄のない動き。

麗華は空気を支配するような笑顔。

監督が言う。

「この二人、バランスいいね」

麗華が笑う。

「ね、結衣ちゃんに見せたい」

凛は少しだけ間を置いて言う。

「見せなくていい」

麗華が吹き出す。

「相変わらずだね」

凛は淡々と続ける。

「今はそれぞれでいい」

その言葉に、麗華は少しだけ真顔になる。

「……そっか」

同じ頃。

結衣は再びカメラ前に立っていた。

深呼吸。

(これは戦いじゃない)

(でも逃げ場もない)

カチン。

「スタート!」

結衣は笑う。

今度は少しだけ自然だった。

“作った笑顔”じゃない。

小さな成功。

監督が頷く。

「今のいいよ」

結衣は小さく息を吐く。

(違う場所でも、ちゃんと戦ってる)

その実感が、少しだけ心を強くした。

夜。

結衣はスマホを見る。

凛のCM撮影記事。

麗華との共演写真。

(すごいな……)

でも、不思議と焦りは少し減っていた。

それぞれの場所で、それぞれの戦い。

そしていつか——また交わる。

結衣はそう思った。

第56話へ続く。

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