第44話 『世界のランウェイ』
WORLD FASHION COLLECTION当日。
パリ。
朝六時。
まだ空は薄暗い。
しかし会場周辺はすでに熱気に包まれていた。
世界中から集まった報道陣。
ファッション関係者。
インフルエンサー。
各国のテレビ局。
誰もが今日のショーを待っていた。
ホテル。
美優はいつも通り早く起きていた。
窓から外を見る。
遠くに見えるパリの街並み。
静かな朝。
だが胸の奥は少しだけ高鳴っていた。
コンコン。
部屋をノックする音。
「入って」
扉が開く。
真優だった。
「眠れた?」
「普通に」
「強いなぁ……」
真優は苦笑した。
自分は緊張で何度も目が覚めたのに。
その頃。
麗華の部屋。
鏡の前で静かに座っていた。
メイク前。
誰もいない部屋。
麗華は鏡越しの自分を見る。
そして小さく笑った。
「世界か」
昔。
夢見ていた場所。
一度は諦めかけた場所。
それが今。
目の前にある。
午前十時。
ショー会場。
世界最大級のランウェイ。
観客席は満席。
数万人規模。
世界中へ生配信される。
スタッフが走り回る。
モデルたちも準備を進める。
美優たちは控室へ案内された。
そこで再び見かける。
昨日の金髪の女性。
長身。
圧倒的なオーラ。
世界ランキング上位モデル。
名前は――
エマ・ローズ
彼女は美優たちを見る。
そして近づいてきた。
「こんにちは」
流暢な英語。
麗華が返す。
「こんにちは」
エマは微笑んだ。
「あなたが神崎麗華ね」
「そうだけど」
「話は聞いてる」
麗華は少し驚く。
そして。
エマの視線が美優へ向く。
「あなたが美優」
「はい」
「会社を作ったモデル」
「そうです」
エマは興味深そうに笑った。
「面白い人ね」
「ありがとうございます」
「褒めてるのよ」
「ありがとうございます」
真顔だった。
数秒後。
エマが吹き出した。
「ははっ!」
麗華まで笑う。
「美優らしい」
しかし。
次の瞬間。
エマの表情が変わる。
真剣な目。
「でも」
「?」
「ランウェイでは負けない」
その言葉に。
麗華が反応する。
「私たちも」
「負ける気ない」
世界トップモデル同士の火花。
周囲の空気が少し張り詰めた。
午後。
ショー開演。
照明が落ちる。
音楽が流れる。
歓声が響く。
世界最高峰の舞台が始まった。
次々と登場するトップモデルたち。
圧巻のステージ。
観客は魅了される。
そして。
特別ステージ。
司会者が紹介する。
「次は日本から!」
会場がざわめく。
巨大スクリーンに映る。
M&M COMPANY。
歓声が広がる。
最初に登場したのは真優。
堂々と歩く。
笑顔。
自信。
数万人の観客を惹きつける。
拍手が起こる。
続いて麗華。
会場の空気が変わる。
圧倒的な存在感。
歩くだけで観客の視線を奪う。
まさにトップモデル。
観客席から歓声が上がる。
そして。
最後。
スポットライトが一点に集まる。
そこに立つのは美優。
深い青色のドレス。
静かな表情。
しかし。
その一歩に迷いはなかった。
ランウェイを進む。
世界中のカメラが向けられる。
フラッシュ。
歓声。
拍手。
全てが聞こえる。
それでも。
美優は前だけを見る。
夢だった。
この舞台。
この景色。
この瞬間。
全てが夢だった。
だが。
今は現実。
ランウェイ中央。
美優は立ち止まる。
振り返る。
完璧なターン。
会場が沸いた。
「Beautiful!」
「Amazing!」
海外メディアも興奮している。
実況席も盛り上がる。
ステージ終了。
真優。
麗華。
美優。
三人が並ぶ。
観客総立ち。
大歓声。
拍手が鳴り止まない。
その時。
巨大スクリーンに映し出された。
M&M COMPANY
そして。
日本国旗。
会場はさらに沸き上がった。
ショー終了後。
バックステージ。
スタッフたちが駆け寄ってくる。
「素晴らしかった!」
「大成功です!」
「海外メディアの反応も凄い!」
真優はその場に座り込んだ。
「終わったぁ……」
麗華が笑う。
「お疲れ」
その時だった。
CEOが現れる。
満面の笑み。
「おめでとう」
三人を見る。
そして。
信じられない言葉を口にした。
「世界合同プロジェクトの中心メンバーに選ばれました」
全員が固まる。
世界規模のプロジェクト。
その中心。
つまり――
M&M COMPANYは世界企業として認められたということだった。
美優は静かに夜空を見上げる。
まだ先がある。
もっと大きな夢がある。
そして。
新しい挑戦が待っている。
世界への第一歩は終わった。
だが――
本当の物語は。
ここから始まる。
第45話へ続く。




