第42話 『パリへの出発』
WORLD FASHION COLLECTIONまで残り一か月。
M&M COMPANY本社は慌ただしくなっていた。
海外向け資料。
契約書。
スケジュール調整。
取材対応。
社内は大忙しだった。
社長室。
美優はパソコンと向き合っていた。
机の上には大量の書類。
真衣が苦笑する。
「休んでますか?」
「寝てる」
「何時間ですか?」
美優は少し考える。
「四時間」
「少ないです!」
即答だった。
そこへ真優が入ってくる。
「社長〜」
「その呼び方やめて」
「無理〜」
もう恒例になっていた。
真優はソファに座る。
「緊張してる?」
「少し」
「珍しい」
「初めてだから」
パリ。
世界の舞台。
さすがの美優も少しだけ緊張していた。
一方その頃。
麗華はトレーニングルームにいた。
ウォーキング練習。
姿勢確認。
ポージング。
何度も繰り返す。
スタッフが言う。
「もう十分ですよ」
しかし麗華は首を振る。
「まだ」
「でも……」
「世界だから」
その一言で全員が黙った。
妥協しない。
それが神崎麗華だった。
出発前日。
M&M COMPANY全体会議。
社員たちが集まる。
モデル部門。
俳優部門。
ブランド部門。
お菓子部門。
全員が見守る中。
美優が前へ立つ。
「行ってきます」
短い言葉だった。
しかし。
それだけで十分だった。
社員たちが拍手する。
「頑張ってください!」
「応援してます!」
「世界でも勝ってきてください!」
会場は温かい空気に包まれる。
天野結衣も前へ出る。
「美優さん!」
「ん?」
「絶対テレビで見ます!」
「ありがとう」
「私もいつか世界行きます!」
その言葉に。
美優は笑った。
「待ってる」
結衣の目が輝いた。
翌朝。
東京国際空港。
出発ロビー。
報道陣が集まっていた。
テレビカメラ。
記者。
ファン。
空港は大騒ぎだった。
「美優さーん!」
「応援してます!」
「麗華さん!」
「真優さん!」
声援が飛ぶ。
三人は手を振った。
記者が質問する。
「世界進出への意気込みは?」
マイクが向けられる。
まず麗華が答える。
「日本代表として恥ずかしくない仕事をします」
拍手。
続いて真優。
「楽しみながら全力で頑張ります!」
会場が笑顔になる。
そして最後。
美優。
無数のカメラが向けられる。
美優は少し考えた。
そして。
静かに言った。
「世界にM&M COMPANYを知ってもらいます」
シンプルな言葉。
だが。
力強かった。
数時間後。
機内。
窓の外には青空。
飛行機は雲を越えて進んでいく。
真優が窓を見ながら言う。
「本当に行くんだね」
「うん」
「不思議」
麗華も笑う。
「同感」
美優は外を見る。
遠ざかる日本。
近づく世界。
思い返す。
モデルになった日。
ブランドを作った日。
会社を作った日。
麗華と出会った日。
仲間が増えた日。
全てが繋がっている。
十数時間後。
飛行機は着陸した。
パリ。
世界中の人々が憧れる街。
空港を出る。
その瞬間。
冷たい風が頬を撫でた。
「ここが……」
真優が呟く。
「パリ」
麗華も周囲を見る。
「始まるね」
美優は静かに頷いた。
その時だった。
黒い高級車が止まる。
スーツ姿の男性が降りてくる。
三人の前へ歩いてきた。
そして。
流暢な日本語で言った。
「ようこそパリへ」
全員が驚く。
男性は名刺を差し出した。
そこには世界的ブランド企業の名前。
そして肩書き。
CEO
真優が固まる。
麗華も目を見開く。
美優だけが冷静だった。
男性は微笑む。
「ぜひお話がしたい」
「M&M COMPANYについて」
パリ到着直後。
まさかの世界企業トップとの接触。
三人はまだ知らない。
この出会いが――
M&M COMPANYの未来を大きく変えることになることを。
第43話へ続く。




