第72話「嫉妬の理由」
新アニメ 『ツインスターズ・ストーリー』
初アフレコから数週間。
収録は順調だった。
真優と美優は主演として活躍。
葵も重要キャラクターとして高い評価を受けていた。
しかし。
ある日。
アフレコ終了後。
真優
「お疲れさまー!」
美優
「お疲れさま」
葵
「……」
いつもなら返事をする葵が。
なぜか無言だった。
真優
「葵ちゃん?」
葵
「先帰る」
美優
「え?」
葵はそのままスタジオを出て行った。
真優
「どうしたんだろう」
美優
「何かあったかも」
翌日。
収録現場。
スタッフたちの会話が聞こえる。
スタッフA
「主演の二人すごいね」
スタッフB
「人気も実力もあるし」
スタッフA
「今一番勢いあるかも」
その言葉を。
少し離れた場所で。
葵が聞いていた。
握り締める台本。
葵
「……」
その日の収録。
演技は完璧だった。
しかし。
休憩時間。
葵は一人だった。
美優は気付く。
美優
「真優」
真優
「ん?」
美優
「行こう」
真優
「うん」
二人は葵の元へ向かう。
真優
「葵ちゃん」
葵
「何?」
真優
「怒ってる?」
葵
「怒ってない」
美優
「嘘」
葵
「……」
沈黙。
そして。
葵
「嫉妬してるだけ」
真優
「え?」
葵
「二人に」
真優
「私たちに?」
葵
「そう」
葵は苦笑した。
葵
「主演」
葵
「人気」
葵
「ファン」
葵
「ライブ」
葵
「全部持ってる」
真優
「そんなこと」
葵
「あるよ」
声が少し震えていた。
葵
「私だって頑張ってる」
葵
「負けないくらい努力してる」
葵
「でも」
葵
「気付いたら二人の背中ばかり見てる」
静かになる。
真優も。
美優も。
何も言えなかった。
すると。
真優
「葵ちゃん」
葵
「?」
真優
「私」
真優
「葵ちゃんに嫉妬したことあるよ」
葵
「え?」
真優
「演技上手いし」
真優
「かっこいいし」
真優
「いつも冷静だし」
葵
「……」
美優
「私もある」
葵
「美優も?」
美優
「ある」
葵
「嘘」
美優
「本当」
三人とも笑った。
少しだけ空気が軽くなる。
美優
「嫉妬するのは」
美優
「本気だから」
葵
「……」
真優
「ライバルだもん」
葵
「そうだね」
真優
「でも」
葵
「?」
真優
「追いかけられるだけじゃ困る」
葵
「え?」
真優
「早く追いついてきて」
葵
「何それ」
真優
「だって一緒に武道館行くんでしょ?」
葵
「!」
真優
「ライバルがいないと寂しい」
葵は思わず吹き出した。
葵
「変な人」
真優
「よく言われる」
美優
「毎日聞く」
三人は笑う。
心の奥にあったモヤモヤは。
少しずつ消えていった。
嫉妬。
悔しさ。
憧れ。
全部。
夢を追う人には必要な感情。
そして。
その日の帰り道。
葵は空を見上げた。
葵
「まだ負けないから」
その表情は。
どこか吹っ切れていた。
ライバルとして。
仲間として。
再び前を向いて歩き始める。
第72話 完




