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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第67話「あと一週間」

二月下旬。

卒業まで、 あと一週間。

教室。

窓の外には、 まだ冷たい風。

でも。

少しだけ春の匂いが混ざり始めていた。

黒板の端。

“卒業まであと7日”

誰かが書いた文字。

龍也

「うわ、マジであと一週間じゃん……」

椅子へ倒れ込む。

瑠姫愛

「急に実感湧くやつやめて」

結衣は黒板を見る。

少しだけ寂しそうに笑った。

「終わるんだね、高校」

教室の空気は、 少し独特だった。

受験が終わった人。

まだ結果待ちの人。

そして――。

進級できなかった人。

今年。

三年A組、35人。

そのうち。

進路決定者、26名。

残り9人。

留年。

重い数字だった。

もちろん。

誰かを笑える空気なんてない。

この学校は進学校。

受験競争も厳しい。

ギリギリで耐えていた生徒も多かった。

担任が教室へ入ってくる。

いつもより少し静かだった。

担任

「……はい、HR始めるぞ」

全員が席へ着く。

担任は出席簿を閉じると、 少し教室を見渡した。

「お前らも知ってると思うが」

空気が静まる。

「今年は、かなり厳しい結果になった」

誰も喋らない。

「進路決定したやつ」

「まだ結果待ちのやつ」

「来年もう一年頑張るやつ」

担任はゆっくり続ける。

「立場は違っても」

「このクラスで三年間やってきた事実は変わらない」

結衣が静かに前を見る。

「だから」

担任

「最後くらい、変な空気作るなよ」

短い言葉。

でも。

その意味はみんな分かっていた。

教室の後ろ。

留年が決まった男子が、 苦笑いする。

「先生、それ逆に気遣われるとキツいっす」

少しだけ笑いが起きる。

担任

「じゃあ笑っとけ」

男子

「雑」

空気が、 少し柔らかくなる。

玲緒菜はその様子を見ていた。

受かった人。

受からなかった人。

進める人。

立ち止まる人。

春は平等じゃない。

それを、 今、この教室は痛いほど知っていた。

休み時間。

龍也

「……なんか複雑だな」

珍しく静かな声。

瑠姫愛

「うん」

結衣

「喜びづらいっていうか……」

一将は窓の外を見る。

「でも、俺たちが気を遣いすぎるのも違う」

雷斗

「落ちた側が一番キツくなる」

玲緒菜は少し頷く。

その時。

教室後方から声。

「おーい、京大組」

雷斗と玲緒菜が振り返る。

クラスメイトの男子。

「卒業したら頭いい生活してくれよ」

龍也

「なんだよ頭いい生活って」

男子

「知らんけど」

教室に笑いが起きる。

そして。

別の女子が玲緒菜を見る。

「玲緒菜、補欠から逆転ほんとすごかった」

玲緒菜

「いや……運も大きかったよ」

女子

「それでも掴んだの玲緒菜じゃん」

少し照れる。

その時だった。

教室後ろ。

留年が決まった男子が、 ぽつりと言った。

「……ちょっと羨ましいわ」

空気が止まる。

男子は苦笑いした。

「いや、嫌味じゃなくてさ」

「お前ら、ちゃんと頑張り切った顔してんだよな」

誰もすぐ言葉を返せない。

男子

「俺、途中で逃げたし」

「だから来年はちゃんとやる」

龍也

「……」

男子は笑う。

「だから来年、お前ら大学生になったら飯くらい奢れ」

龍也

「そこは抜け目ねぇな!?」

爆笑。

でも。

その笑いの奥には、 少しだけ悔しさが滲んでいた。

玲緒菜は思う。

受験は残酷だ。

努力しても届かないことがある。

でも。

だからこそ。

掴めた春には意味がある。

放課後。

夕陽の教室。

誰もいなくなった教室を、 玲緒菜はぼんやり見ていた。

ここで笑って。

ここで泣いて。

ここで焦って。

ここで未来を考えた。

あと一週間。

長かった高校生活が、 終わろうとしていた。

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