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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第50話 「もう一度」

十一月。

朝。

空気が冷たい。

学校へ向かう道。

吐く息が白くなり始めていた。

受験まで、 もう数か月。

時間は、 止まらない。

玲緒菜は早朝から教室へ来ていた。

篠田玲緒菜

誰もいない教室。

静かな朝。

机へ参考書を広げる。

京大数学。

E判定以降。

玲緒菜は少し変わった。

焦って、 無理に詰め込むのをやめた。

一問ずつ。

丁寧に。

雷斗の言葉が、 ずっと頭に残っていた。

——焦って崩れたのに、また焦るな。

玲緒菜は深呼吸する。

問題を見る。

式を書く。

前より、 少し落ち着いていた。

その時。

教室のドアが開く。

雷斗だった。

武田雷斗

玲緒菜が驚く。

「早っ」

「お前も」

雷斗は玲緒菜の机を見る。

「数学か」

「うん」

少し沈黙。

そのあと。

雷斗が静かに言った。

「前より丁寧」

玲緒菜が少し止まる。

「……分かる?」

「字で分かる」

「怖いんだけど」

でも。

少し嬉しかった。

雷斗は席へ座る。

赤本を開く。

静かな朝。

二人とも、 黙って問題を解く。

でも。

その空気は、 前より少し穏やかだった。

昼休み。

屋上。

結衣がパンを食べながら叫ぶ。

結衣

「共通テストまで70日!?」

龍也が笑う。

龍也

「数字にすると怖いな」

瑠姫愛も苦笑する。

瑠姫愛

「十月終わるの早すぎる……」

一方。

一将はいつも通り。

天野一将

結衣が見る。

「なんでそんな平常運転なの」

「慌てても減らない」

「正論やめて!」

でも。

その冷静さに、 少し救われる部分もある。

結衣が小さく言う。

「……怖いけど」

「ん?」

「なんか、前より逃げたくはないかも」

その言葉に、 一将は少しだけ視線を向けた。

「強くなったな」

結衣が止まる。

「……急にそういうの禁止」

「事実」

顔が熱い。

でも。

ちょっと嬉しい。

放課後。

自習室。

玲緒菜は再び京大数学を解いていた。

難しい。

でも。

以前ほど止まらない。

途中で詰まる。

でも。

考える。

整理する。

その時。

「そこ」

雷斗が横から見る。

「条件一個抜けてる」

玲緒菜が見返す。

「あっ」

本当だ。

玲緒菜は少し笑った。

「最近ちょっと解けるようになった気がする」

雷斗が短く答える。

「積み上げたから」

その言葉が、 静かに胸へ落ちる。

E判定は怖かった。

かなり苦しかった。

でも。

あの時、 折れなくて良かった。

夜。

帰り道。

冬に近づく風。

玲緒菜が空を見る。

「……もう十一月か」

雷斗が隣を歩く。

「早いな」

少し沈黙。

そのあと。

玲緒菜が小さく笑う。

「でもさ」

「ん?」

「前より、“受かりたい”って思う」

前は、 ただ憧れていた。

でも今は違う。

本気で、 そこへ行きたい。

雷斗は静かに言った。

「なら行け」

玲緒菜が笑う。

「簡単に言う」

「簡単じゃない」

でも。

その声は、 ちゃんと信じていた。

受験は怖い。

何度も揺れる。

でも。

揺れたあと、 また立ち上がればいい。

彼らは少しずつ、 本当の受験生になっていく。

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