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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第11話 「ちゃんと好きだったから、苦しかった」

放課後。

窓の外では、 オレンジ色の夕陽がグラウンドを照らしていた。

「……で?」

天野大将が、 購買のパンを食べながらニヤニヤする。

「最近のお前らどこまで進んだ?」 「何も」 「その返し飽きた」

兼次郎は問題集を閉じた。

すると。

「兼次郎ー」

前田茉優が、 教室の後ろからひらひら手を振る。

「ちょっと付き合って」 「なんで」 「いいから」

有無を言わせない口調。

兼次郎は少しだけ眉を寄せたが、 結局立ち上がった。

その様子を見て、 玲緒菜が少し不安そうな顔になる。

その視線に気づいた兼次郎は、 小さく言った。

「すぐ戻る」 「……うん」

玲緒菜は笑った。

だけど。

どこか無理してる笑顔だった。

それを見た茉優は、 小さく目を細める。

―――

校舎裏。

人の少ない静かな場所。

茉優は自販機でジュースを買うと、 一本を兼次郎へ投げた。

「ほら」 「……サンキュ」

炭酸の音だけが響く。

しばらく沈黙。

先に口を開いたのは茉優だった。

「玲緒菜のこと、好きなんでしょ」

直球だった。

兼次郎は缶を見つめたまま答える。

「……分からん」 「まだそれ言う?」 「本当に分からない」

茉優は苦笑した。

「昔の兼次郎ならさ」 「?」 「“分からない”じゃなくて、“興味ない”って言ってた」

「……」

図星だった。

恋愛なんて面倒。

そう思っていた。

誰かを特別扱いする意味も分からなかった。

でも今は違う。

玲緒菜のことで頭がいっぱいになる。

その変化を、 兼次郎自身が一番理解できていない。

すると。

「……ちょっと羨ましい」

茉優がぽつりと呟いた。

「何が」 「玲緒菜」

風が吹く。

茉優は空を見上げながら、 静かに笑った。

「私さ」 「……」 「ちゃんと兼次郎のこと好きだったんだよ」

兼次郎が目を向ける。

茉優は続けた。

「最初は、“頭いいし顔いいしモテるし”くらいだった」 「最低だな」 「うるさい」

少し笑う。

でもすぐ、 その表情が柔らかく崩れた。

「でも付き合ってから分かった」 「……」 「兼次郎、優しいんだよね」

兼次郎は黙って聞いていた。

「私が落ち込んでる時、 絶対気づくし」 「……」 「体調悪いとすぐ分かるし」 「……」 「私が欲しい言葉、 不器用だけどちゃんと言ってくれた」

茉優は小さく笑う。

「好きになるじゃん、そんなの」

夕陽が、 横顔を赤く染めていた。

「……じゃあなんで別れた」

兼次郎の問いに。

茉優は少しだけ黙った。

そして。

「苦しかったから」

静かな声だった。

「兼次郎ってさ」 「?」 「優しいのに、全然自分の感情見せてくれない」

兼次郎の目が少し揺れる。

「私ばっかり好きみたいで」 「……」 「本当に私のこと好きなのか、分かんなくなった」

胸が少し痛んだ。

茉優は笑おうとして、 少し失敗した顔になる。

「付き合ってるのに、 ずっと距離ある感じだったんだよね」 「……悪い」 「ううん」

茉優は首を横に振る。

「たぶん当時の兼次郎、 恋愛よく分かってなかったし」

その通りだった。

好きと言われたから付き合った。

嫌じゃなかった。

一緒にいるのも苦ではなかった。

でも。

“恋”だったのかと聞かれると、 分からなかった。

「だから別れた」

茉優はまっすぐ兼次郎を見る。

「でもさ」

「?」

「今の兼次郎見てると、 ちょっと悔しい」

「……何が」

茉優は少しだけ寂しそうに笑った。

「玲緒菜には、 ちゃんと感情出してるから」

その言葉に、 兼次郎は返せなかった。

確かに。

玲緒菜には、 自然と本音が漏れる。

独占欲も、 安心も、 嫉妬も。

全部。

「……未練、あるのか」

気づけば聞いていた。

茉優は少し驚いてから、 ふっと笑う。

「あるよ」

即答だった。

「だって」 「……」 「今の兼次郎、 めちゃくちゃ好きになりそうだもん」

風が吹く。

茉優は缶ジュースを軽く揺らしながら、 静かに言った。

「でもね」 「?」 「たぶんもう遅い」

兼次郎が目を向ける。

茉優は少しだけ切なそうに笑った。

「兼次郎の目、 玲緒菜見てる時だけ全然違うから」

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