後日談 スズエ視点
ユキナさんの病院に入院した私は、ユキナさんの協力のもとモロツゥを内部から変えていった。
シルヤも病院で一緒に寝泊まりしてくれて、出来る範囲で動いてくれる。
「シルヤ、これを児童相談所に渡してきてくれる?」
ある日、私が封筒をシルヤに渡すと弟は「いいけど、どうしてだ?」と首を傾げた。
「それ、ランの家庭状況が書いてある書類だよ。ランの身柄もこっちで預かろうと思ってね」
「なるほどな。了解」
シルヤは笑い、それをすぐに持って行ってくれた。
一週間後、退院出来た私はシルヤにオムライスを作った。その後片付けをしているとシルヤがゲームを作っていたのでパソコンを使っていいと持って来ようとするとドアベルが鳴った。
「はーい」
出ると、そこにいたのは大荷物を持ったラン。
「ラン、久しぶりだな」
「久しぶり、スズエ。身体の調子はどうだ?」
「何とかやってるよ」
ランを中に入れ、シルヤに伝えると「マジ!?」と嬉しそうに笑った。勝手に部屋に入っていいからパソコンを持っておいでとランの食事を作りながら告げると、シルヤはパソコンを取りに行った。数分後、知り合いからもらったすごく性能のいいパソコンを抱えて目を輝かせているシルヤが戻ってきた。
「これ、すっげぇいいパソコンじゃん!」
「ほしいならあげるよ。それ、使ってないし」
「マジで!?いいの!?」
「マジマジ。使わないともったいないし」
私自身、情報収集のために三台使っているがそれは一切手を付けていない。それなら、ほしい人がもらうべきだろう。
「それ、そんなにいいパソコンなんだな」
ランがそのパソコンを見て呟く。
「そうだぜ。これ一つで基本的なことはほとんど全部出来る」
「オレはよく分かんねぇな……」
「容量が多いから、裏情報とかもすぐだぜ」
「ラン、明日時間あるなら電気屋行くか。パソコン買ってやるよ」
私がそう言うと、ランは「いいのか?」と聞いてきた。
「ここに住む以上、パソコンは必要だからな。必要経費だ」
「ついでに服とかも買いに行こうぜ。それも通帳から引き出していいよな?」
「もちろん」
さてと……まずは……。
土曜日、私はある人の家の前に来ていた。
「どちら様?」
彼女――マミさんはドアベルを鳴らすと出てくれた。私がフードを着ていたので最初は戸惑っていたようだったが、封筒を渡すと、
「……これ、あの時の……」
内容を見て、私のことが分かったらしい。
「もしかして、スズエか?」
「えぇ、そうですよ。お久しぶりです。そして遅くなりすみません」
それを警察に提出してください、というと、彼女は頷いて「あたしもすぐ、そっちに行くからな」と笑った。
別の服装に着替え、図書館に行く。そこには彼がいた。
「隣、失礼しますね」
「あ、どうぞ」
そうして隣を確保すると、彼はすぐに気づいたようだ。
「……スズエ?」
「あら。やはりあなたにはすぐに気づかれましたか」
「退院出来たんだ、よかった」
彼は安心したように笑う。
「あなたの弟も、保護しましたよ」
「……そう。安心したよ」
「一応、ある程度整ったので勧誘しようかと」
これ、名刺ですと渡すと、彼はどうもと受け取った。
そうして、私は皆を集めた。
「スズエさん、本当にここにいてよかったんですか?」
共同生活が始まって数日後、キナが話しかけてきた。隣には彼女の姉がいる。
「もちろん。あのバカ親が主催したゲームに巻き込まれた以上、私にも責任があるからな」
あのバカ達のおかげでモロツゥの世間的評価は下がってしまった。まぁ、そんなことはどうでもいいけれど。
私は祖父母の研究を引き継ぎ、しばらくは学校に行きながら所長として過ごしていくことにしている。
進路はレイさんが通っている大学に進学することに決めている。成績は大丈夫なので研究の方に集中出来る。
「忙しそうですね……」
腕には研究資料を抱えている。キナはそれを見てそう言ったのだろう。
「これ、意外と簡単なものだからそこまで忙しくはないぞ。むしろ経営の方が大変でな」
やっぱり厳しいものがある。兄さんやユウヤさんを中心に大人達に支えられながらやっているけど、高校生の、しかも女性が経営している研究施設などどうしても冷たい目で見られる。しかも施設側が前科持ちだから後ろ指さされることも多い。
「今度、研究成果を発表するんですよね?」
ナナミさんに聞かれ、私は「そうだね」と頷いた。
これに成功すれば、補償金が出る。かなりのプレッシャーだけど、祖父母の悲願を果たすためここでやり遂げないといけない。
研究成果発表の日。ユウヤさんとランが一緒に来てくれた。
「頑張ってね」
「オレもここにいるからな」
「うん……」
私が舞台に立って、祖父母の研究を発表した。
「すっごい緊張した……」
結果は大成功。二人は「お疲れ様」と近付いてきてくれた。
「よかったね、おじいさんとおばあさんもきっと喜んでいるよ」
「そうだったらうれしいです」
ユウヤさんと話していると、不意に手を握られた。
「ラン?」
「あ、すまねぇ」
ランがわずかに頬を染めながら、手を離した。ユウヤさんはニコニコしながら「ボク、ちょっとトイレに行ってくるね」とその場を離れた。
「……な、なぁ、スズエ」
「なんだ?」
彼は私をジッと見て、
「オレ、お前のことが好きだ。……その、付き合ってほしい」
告白された。私はキョトンとした後、
「……ありがとう。私も、好きだよ」
恋が実ったという喜びとともに、その手を取った。
いつの間にかいなくなっていたフウが、喜んでいた気がした。




