表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DEATHGAME ~PRINCESS OF HOPE~  作者: 陽菜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/21

十一章 希望の姫

 それから、ボク達はあの墓場のところに行った。そこにはルイスマとモリナが立っていた。

「来ましたね。ここは死のロシアンルーレット。あなた達には、二人選んでいただき棺に入ってもらいます」

 モリナがそう言って棺を出してきた。四つあり、二つはルイスマとモリナが入るということだ。どうしようか……と考えていると、

「……シルヤ」

「おう、スズ姉」

 スズエさんがシルヤ君に声をかけると、シルヤ君は頷き、棺のところに歩き出した。

「ちょっ……二人共……!」

「大丈夫ですよ、ユウヤさん」

「そうっすよ」

 二人は止めようとするボクの方を見た。

「私達双子の絆……」

「なめないでくださいっす」

 二人は同じ顔で笑っていた。そう、全く同じように。

 大丈夫。私は必ずあなたを守るよ、カイト。

 オレだって、お前を守ってやるよ、カナ姉。

 そんな、二人の声が聞こえてきた気がした。あぁ、この二人に任せれば、大丈夫だ。

「……任せたよ、二人共」

 ボクのその言葉に、二人はニコッと純粋な笑みを浮かべていた。

 二人が棺に入ると、ふたが閉まった。そして、いつもの倍ある棺の中に混ざった。

 それでも、六個に絞り切った。

「……ユウヤさん。二番を」

「う、うん……」

 スズエさんの指示に、ボクは二番を選ぶ。

「は……?な、なんで、アタシの……」

 どうやらルイスマが入っていたらしい。そのまま、ルイスマの声が聞こえなくなった。モリナが選ぶが、そちらは外れてしまう。

「五番」

「分かった」

 そうやって選ぶと……このゲームは、終わった。

 スズエさんとシルヤ君が棺から出てくると、足音が聞こえてくる。見ると、エレンさんの髪色と同じ男性とスズエさんに似た女性がこちらに来たようだ。

「お父さん、お母さん……」

 やはり、父親と母親だったらしい。スズエさんはにらんでいた。

「いやはや、驚いたよ。まさかスズエの力がそこまでとはな」

「さすが、祈療姫の生まれ変わり。私達の計画が台無しになってしまうわ」

 その計画が、世界を滅ぼすということだろう。なぜ、そのために娘を利用するのだろうか。ボク達にはどんなに考えても、理解できないのだろう。

「成雲家の現当主様も、自分の娘を使って滅ぼそうとたくらんでらっしゃるのよ?でも、あなた達は私達の望みと逆に育っていく……やはり、異世界の神様の生まれ変わりだからかしらね」

 母親がクスクスと笑っていると、その隣にナイフが刺さった。

「それ以上何か言ったら、今度は首を狙います。スズカさん」

 ユキナさんだ。鬼の形相をした彼女の手には、数本のナイフが握られている。本当にどこに仕込んでいるんだ?

「おー、怖い怖い。これ以上は殺されそうなんで、一度撤退しますかね」

 父親……確か、コウシロウがふざけた口調でそう言いながら、スズカと共にその場を去った。

「……見た目は似てるのに、どうして親子でこうも違うかなー?」

 ケイさんが軽い口調で聞いてきた。

「親の性格が必ずしも子供に遺伝するわけじゃないってことよ、ケイ君」

 それに答えたのはユキナさん。君って……まぁ、ユキナさんからすればボク達人間は皆子供みたいなものか……。

「そういえば、ちょっといい?」

 ユキナさんが声をかけ、スズエさんにCDを渡す。それにはAIの試験データと書かれていた。

「これ、隠し部屋で見つけたの」

 隠し部屋、というとあのスズエさんの部屋をまねた場所か。

「ぬいぐるみ、結構あったね」

「……忘れてください、ユキナさん」

 部屋の主は顔を赤くしながら告げる。アカリちゃんは「かわいい部屋だったね」と姉にくっついた。

「アカリちゃんも忘れてよ……」

「いいじゃん!女の子らしい部屋だったよ!」

「……………………」

「ひひゃい!」

 スズエさんは妹の頬を引っ張る。アカリちゃんはジタバタと暴れていた。

「お口チャックしようね?」

「うー……」

 姉がにこりと笑うと、アカリちゃんはこくこくと頷いた。スズエさんは満足そうに笑い、ユキナさんの方に向きかえった。

「……見てみましょうか」

 そう言って、スズエさんはパソコンに読み込む。

 流れたのは、メインゲーム。どうやら皆が生き残っている前提で進んでいるようだ。これを見るに、いろいろなパターンを試したのだろう。

 このデータでスズエさんは、花の養分となり一人殺された。

『シルヤ、お前は生きて……』

 涙を流しながら、その言葉を遺して。そこにはやはり、姉としての慈愛が含まれていた。

「……………………」

 これを見ていたスズエさんは無言だった。自分が死ぬ瞬間なんて、たとえ嘘でも見たくないだろう。

「スズエさん……、えっと……。こんなの、見たくなかったよね……?」

 しかし、彼女は予想に反してけろっとしていた。

「あぁいや、そんなのじゃなくて。我ながら美しい散り様だなって思っていたんです」

「え……?」

「綺麗じゃないですか?花に命を奪われて、なんて。――私には、似合わない死に方です」

 そういえば、人形のスズエさんも似たようなことを言っていた気がする。

「私はもっと惨たらしく死ぬ方が似合っているわ。裏社会に生きている私にはね」

 そう言って、彼女は嗤った。それが当然だと言いたげに。そんなことはないと思うけど、今言っても意味ないのだろう。

「……うん?続きがある?」

 ずっと画面を見ていると、没になったゲームが流れた。

 それは、皆が生きている状態でシルヤ君だけが殺されるというものだった。

『あ、あははは……』

 画面の中のスズエさんは、シルヤ君が息を引き取ったところを見て壊れたように笑いだした。

『許さない……!シルヤを殺したお前ら全員、私が殺してやる……!』

 画面の中のスズエさんは涙を流しながら、暴走し始めた。それだけ、弟を愛し守ってきたのだろう。それこそ、目に入れても痛くないほどかわいがっていた。そんな子を殺されたのだから、こうなるのもおかしくはない。

「……本当にありそうだから怖いな……」

 当の本人も冷や汗を流している。ごめん、ボクもすっごい怖い。

「こうならないように、いろいろルールを作ってどちらか一方しか生かさなかったんだね……」

 アイトも苦笑いを浮かべている。

 大丈夫、こうならないようにするから。

 シルヤ君もスズエさんも、他の人達も。ここにいる人誰一人、死なせはしない。スズエさんが禁忌を犯してまで生き返らせた命を、絶対に失わせはしない。



 夢を見た。

 それは雪の日。人間に命を狙われ、重傷を負いながら逃げていた。何とか逃げ切ることが出来たけど、体力の限界がきて倒れる。

 あぁ、ここで死ぬのか……。

 私は覚悟した。そんな中、一人の気配を感じた。

「大丈夫ですか?」

 茶髪の巫女だ。彼女は肩を貸してくれた。

 神社で手当てをしてくれる。

「お姉様……」

 桜色の髪の少女が、部屋の中に入ってきた。「ユキナちゃん、どうしたの?」と彼女は呼び寄せる。

「その……お食事が出来たから……」

「ここで一緒に食べようか」

 おいで、と彼女が言うとユキナと呼ばれた女の子は近付いてきた。

 使用人らしき人が食事を持ってくる。

「食べられますか?」

「あぁ……」

 私は起き上がり、彼女から食事を受け取る。

 食事が終わるとユキナが彼女の膝で寝てしまう。

「お前、名前は……?」

「私、ですか?私はカナと言います」

 カナ……いい名前だ。彼女も厳密には人間ではないらしく、ユキナも龍神と人間の血を引いているという。

「行く場所がないのなら、ここにいても構いませんよ」

 そう言って笑った彼女は、とても綺麗だった。

 ――これは、幻炎と祈療姫の、出会いの記憶だった。



 目を開けると、目の前にスズエさんの顔があった。それは、ついさっき見た祈療姫と同じ顔だった。

「大丈夫ですか?」

 頬を拭われ、ボクは涙を流していることに気付いた。

「大丈夫。ちょっと、懐かしい夢を見ていただけだよ」

「懐かしい……?」

「うん。幻炎と祈療姫が出会った時の夢を見ていたんだ」

 絶望の中、目の前に現れた唯一の光。まさに、「希望の姫」だった。

 目の前の少女の瞳はライム色になっていた。希望という意味を持つ色。

 ボクは彼女の髪に触れる。

「カナ……」

「どうしたのですか?ヤナト」

 彼女はかつて、自身の魂であった名前を呼ぶ。

「大丈夫ですよ、私が傍にいます」

 ヤナトに向かって、彼女は告げる。孤独な自分を、満たしてくれる。

 それは、守護者と主君の、優しい時間だった。


 メインゲームが始まる放送が聞こえてくる。どうやらシンヤとアイトは参加出来ないようだ。まぁフロアマスターと主催者だからね。

 ボクが引いたのは、賢者。本の絵柄が書かれている。それを読み込むと、今回の鍵番は……スズエさんだった。

 ――いつもはフウ君なのに。

 この画面に出てくるということは、彼女は最初から鍵番ということ。それに驚きながら、ボクはメインゲームの会場に足を踏み入れた。

 ――今回の怪盗は誰なんだ……?

 問題はそこになる。シルヤ君?エレンさん?フウ君?それともほかの人?

「では、まずは鍵番と身代が誰なのか特定しましょうか」

 スズエさんがそう言う。彼女は、怪盗に盗まれていなければ鍵番だ。

 コウシロウとスズカは笑って娘を見ていた。苦しんでいるのを楽しむように。 しかし、スズエさんはそんなこと意にも介さず「確か、ルールは怪盗が身代を盗んで、処刑されたら晴れて解放、でしたよね?」とボクに聞いてきた。

「そうだね。問題はその怪盗だけど……」

 相談しようとすると、

「ねぇ、お父さん」

 不意に、スズエさんは父親に声をかけた。

「どうした?」

「もし、身代を盗んだ怪盗が処刑されるとして、それが出来なかったらどうなるの?」

 その口ぶり的に、スズエさんは誰が怪盗なのか分かっているようだ。そして、その人は絶対に殺せないということも。

「そりゃあ……俺達が死ぬことになるだろうな。ルールの中に書いてあるから」

 そう言えば、「主催者側は一人も殺せなかった場合、その命をもって終了させる」というルールがあったような……。でも、そんなこと不可能に近い。

「だったら」

 スズエさんは不敵に笑った。

「あんたたちの負けだ、コウシロウ、スズカ」

 そう、宣言したのだ。え?どういうこと?

「ど、どういう……」

「――怪盗は、私だよ。そして私は、ラン君の役職……つまり身代を引いた」

 皆が戸惑っていると、ユキナさんが怪盗のカードを見せた。それが意味するのは……。

 ――身代を盗んでも、龍神の姫である彼女は殺せない。

 本当に、この子はボクの予想をはるかに超える。きっと、二人でこっそり話し合っていたのだろう。

「……チッ。そうだな、俺達の、負けだ」

「スズエの力をなめていたわね……。でも、覚えておきなさい。私達が死んだところで、生き残りが私達の意志を継ぐわ」

 二人は悔しそうにしながらも素直に負けを認めた。だが、きっとモロツゥの人間は日本中に散ってしまっている。いずれまた、何か問題が起こる可能性が高い。それでも、スズエさんは今回の始末をつけるということだろう。

 スズエさんはレイさんから拳銃を受け取る。そして、彼女は驚いている両親にそれを向けた。

「最後に選択肢をあげるわ。自首し、罪を償いというのならば命だけは助けてあげる。けれどそれをしないというのならば、今この場で殺す」

 その瞳は今まで見たことのないほど、鋭いものだった。

 ――贖罪の女神……。

 己の罪を認める者を許し、救う者。それが、祈療姫だ。

 しかし彼らはにやりと笑い、何かのスイッチを取り出した。

「お前だけでも道連れにしてやる……!」

「……!あいつら、自爆する気だぞ!」

 そして場所的に、スズエさんは巻き込まれる。シンヤはそう言った。

「……それが答えなのね」

 スズエさんは静かにため息をつき、銃弾でそれを発動させないように飛ばした。

「くっ……!」

「一分だけあげる。懺悔なさい」

「ふざけるな!お前なんていなければ……!」

 言葉を言い終える前に、スズエさんは彼らの懐に入り、

「グッバイ。マイペアレンツ」

 目にもとまらぬ速さで二人の頭を打ちぬいた。

 二人が倒れ、スズエさんは銃を投げ捨てる。

「……「愛している」の一言でもあれば、私はもっと迷っただろうに」

 小さく呟いた言葉。ラン君がスズエさんの傍に行き、その手を優しく握る。

「スズエ」

「大丈夫。……行こう」

 スズエさんは最後に事切れた両親を見て、

「さようなら。今でもあなた達を愛しているよ」

 どんな親だろうと、あなた達がいなければ私は生まれなかったのだから。

 そう呟いて、背を向けた。そばに、カオリさんもやってくる。

 出口まで歩いたところで、スズエさんが振り返ろうとする。それを、ラン君が止めた。

「スズエ、振り返るな」

「……そうだね」

 きっと振り返ったら、彼女は引きずってしまう。そう思ってのことだったのだろう。

 ボクはスズエさんの後ろに立ち、その背を押す。

「行くよ」

「……えぇ、ユウヤさん」

 今はただ、みんなが生きて脱出できたことを喜ぼう。

 ボクだって、君と同じ罪を背負って生きていくから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ