おっと……
「死の煙のケイ……」
「ああ、正真正銘の俺だ。ほら、足だってあるし煙草だって吸っている。歴とした生きた人間だ」
「……どうかしら?この世界で最高峰の防御力と攻撃力を誇るノスモーキングに相対して無傷な貴方を人間だって言う方が無理じゃない?」
「ああ、素晴らしい兵器だな。頭脳、防御、攻撃、全てにおいて完璧だ。よくぞここまでの兵器を創り上げたな。」
ケイは遜色なく、ノスモーキングを賞賛する。
「……ええそうよ。貴方たちを抹殺するために創り上げたのよ…さあやりなさいノスモーキング。この男に禁煙という地獄を味合わせてやりなさい……!」
歯噛みしながら苛立たしげにノスモーキングへと命令を下すエミリア。しかし、ノスモーキングは壁際で震えたまま一向に動こうとしない。
「……何故?」
「気付かないか?お前は完璧に作りすぎたんだよ。この兵器を司る頭脳をな」
「……なるほどね」
エミリアの創り出したノスモーキングのAIは完璧だった。いや、完璧以上だった。
状況を瞬時に判断し、最適解を導き出す優れた演算能力。それは優秀すぎるがあまり、機械には必要のない物まで獲得してしまった。
それは感情である。
感情を獲得してしまったノスモーキングはケイの圧倒的な力を前に、恐怖に支配され、最早戦うことが出来なくなってしまったのだ。
「ノスモーキング。二度は言わないわ…戦いなさい……!」
再びノスモーキングへと命じるエミリアだったが、やはり一向に動こうとはしない。
「残念だったな。頼みの綱はもう戦えず、残っているのはお前の下僕のみ。さあ、洗いざらい吐いてもらうぞ」
煙草を構えるケイ。しかし、エミリアは一向に動じる気配はない。
「……はぁ……仕方ないわね……」
エミリアは翼をフワリとはためかせる。すると数匹の蝶がエミリアの翼から現れ、クイーンズ・サーヴァント、そしてノスモーキングへと吸い込まれるように消えていく。その瞬間、クイーンズ・サーヴァントは赤い光をカメラアイに迸らせ、アピスとケイに襲いかかる。
「デッドエンドスモーク!!!」
ケイがデッドエンドスモークを放つ。
煙に包まれ、右前脚部が爆散するクイーンズ・サーヴァント。しかし、クイーンズ・サーヴァントは止まることなくケイへと突貫してくる。
「あん?」
突っ込んでくるクイーンズ・サーヴァントをひらりと躱すケイ。しかし、ケイの死角からもう1機のクイーンズ・サーヴァントがニコチンパッチ機関砲を連射しながらケイへと襲いかかる。
「ケイ!伏せて!!」
アピスの声が聞こえたケイは咄嗟に伏せる。アピスは先程弾かれたガットグリルガンを手に取ると、クイーンズ・サーヴァントの背面に装備されているニコチンパッチ機関砲を正確に射貫いた。装備されていたニコチンパッチ機関砲が暴発し、一瞬動きが止まるクイーンズ・サーヴァント。その一瞬の隙をケイは見逃さなかった。
「ナイスだピアス!今度こそ吹っ飛べ!デッドエンドスモークッッッ!!!」
ケイの放ったデッドエンドスモークにより、クイーンズ・サーヴァントは壁にめり込むほど吹き飛ばされ、そのまま動かなくなった。
「よし、まずは1機……次は…!」
ケイはすぐさまターゲットを切り替え、もう1機のクイーンズ・サーヴァントを探す。しかし、辺りを見渡すももう1機のクイーンズ・サーヴァントはおらず、いるのは怪しげに微笑むエミリアのみ。その時だった
「ケイ!上!」
アピスに言われ、ケイが上を見上げると、天井からクイーンズ・サーヴァントが急降下してきた。ケイはすぐさまアピスを突き飛ばした。クイーンズ・サーヴァントが降下した衝撃で土煙が舞い上がる。
「……ッ!」
ケイに突き飛ばされたアピスは瓦礫の上に着地すると、クイーンズ・サーヴァントの方を見やる
そこには
「ぐあっっっ!!」
クイーンズ・サーヴァントの前脚に拘束され、0距離でニコチンパッチ機関砲の集中砲火にさらされているケイの姿が。
そして、ケイはそのままクイーンズ・サーヴァントに押しつぶされ、断末魔の悲鳴が研究区画に響き渡った。