エミリアの置き土産
エイジの姿を見て無造作に煙草に火をつけるケイ。だがケイには微塵の隙も無い。それはエイジも同じだった。
「はっ!健康に気を遣った結果、そこにいる女王サマのアッシー君にでもなったのか?」
「言ってろ!頭も煙草も時代遅れのヤニカスが!」
「その時代遅れに後れをとったのは何処のどなたでしたっけねえ?」
凄みのある笑みを浮かべて互いに煙草を構えるケイとエイジ。二人の溢れんばかりの闘志が吐き出す煙へと現れ、ケイの吐き出す煙とエイジの吐き出す煙が空気の流れによって衝突する度に火花が散っており、まさに一触即発の状況となっていた。
「……ちょっと、喧嘩しに来たわけじゃないでしょ?もう余り時間ないわよ」
そんな中、エミリアが臆することなく二人の間に割って入り、エイジに向って苛つきながら言う。その瞬間、エイジは構えを解いた。
「おっと、すまんすまん。悪いなケイ!この前の仕返しをしてえ所だが、あんまり時間も無くてな。今度会ったときはその肺にぶち穴開けてやるから覚悟しておけよ」
明るい口調とは裏腹に殺気をみなぎらせながら言うエイジ。そしてエイジはエミリアを小脇に抱えると、加熱式煙草の端末に新しい煙草をセットし咥えた。
「ちょっと!待ちなさい!!」
「……ああそうそうお土産置いていくわ。精々楽しんでね」
「悪いが巻き込まれたくはないんでね。生き残ってたらまた会おう!」
アピスの制止も空しく、エイジはエミリアを抱えたまま白い煙を吐き出す。すると、重力から解放されたかのようにエイジの身体は浮き上がる。そして次の瞬間には目にも止まらぬ早さで天井を突き破り、加熱式煙草独特の残り香と衝撃波を残し、エイジとエミリアは去って行った。
「…痛つつ……あんのクソ野郎……」
エイジから放たれた衝撃波に吹き飛ばされたケイは悪態を吐きつつ瓦礫の中から起き上がると、そこへほぼ無傷のアピスがやってきた。
「立てるケイ?」
「……なんでお前無傷なんだ?」
「さあ?日頃の行いと……ほら、美人は得をするって言うじゃない?」
とぼけたように言うアピス。だがケイには理由が分かっていた。おそらくエイジはケイだけに衝撃波が当たるように、飛び立つ瞬間煙を吐き出す角度を調整していたのだ。その正確な角度計算は容易な物ではないことをケイはよく知っているだけに尚更苛ついていた。
ケイは一人で瓦礫の山から立ち上がると、大穴の開いた天井を苦々しげに見つめる。そんなケイに対してアピスはこう言った。
「ねえ、そろそろ私たちも脱出しない?あの女狐が何か仕掛けていったみたいだし、面倒なことになる前に早く行きましょ?」
「……その前にアレを解体しとかないとな」
チラと静止しているノスモーキングを見るケイ。先程までケイを恐れて、機械なのにもかかわらず震えていたのにもかかわらず、今は不気味なほど静かである。
「……今アレに手を出すのはやめておいた方が良いと思うんだけど。あの女が何を仕掛けているか分からないわよ」
「確かにそうだがアレを破壊しなければ今回の任務は失敗だ。仕掛けが動き出す前に破壊する」
「ッッ?!伏せろ!!」
ケイがアピスの頭を押さえ、アピスを無理矢理地面に伏せさせる。その瞬間、アピスの頭上を超高速で何かが通り過ぎ、数秒後大きな破裂音と共に瓦礫の山が吹き飛ばされた。
「おい、大丈夫かアピス?」
「ええ、貴方が無理矢理押さえつけたおかげで顔に擦り傷ができたこと以外はね」
アピスが顔に出来た擦り傷をわざとらしくさすりながら睨み付ける様な目でケイを見る。
「二度と煙草吸えなくなるよりは良いだろ。そのまえに……」
ケイはノスモーキングの方を見やる。先程まで怯えていた影は鳴りを潜め、そこにいたのは先程放ったであろう背中にあるアンチニコチンパッチ砲の最凶の名を冠する対ヘビースモーカー兵器だった。
「どうやら第2ラウンドらしいわね……さっきとは様子が違うわよ」
「みたいだな……女の勘は当たらないと言うが今回は当たったみたいだな……チッ…あの女め……」
ため息を吐きながら煙草を構えるケイとガットグリルガンを構えるアピス。それに対してギラリと単眼のカメラを光らせるノスモーキング。その瞬間、ニコチンパッチ機関砲が火を噴いた
高評価してくれたら嬉しいな……




