入国管理官たちと私
マレーシアの入管はとにかく遅い。よくそういう話を聞いた。
初めてそれをきいたとき精々1時間くらいだろうと思っていた。
母がマレーシアを観光で訪れたことがある。
―――何ここの入管、信じられる? 2時間くらいかかったんだけど!
しってる。それくらいが普通だ。私のときは3時間かかった。
私はエントランスビザで一度入国し、中で学生ビザに切り替えるという方法をとった。その過程も中々にすごいのだがまあそれはおいおい。
KLIA2の空港でやる気のない感じで「SIM Caaard」と連呼しているマレー人に携帯を設定後契約してもらい入管へ向かう。私の前にはいかにも日本人の、同じくらいの歳の青年が歩いていて、なんというか、心細そうに入管の脇のスペースに入っていく。そこに行くのはビザの発行が必要な人たちが行くところで、私もきっと同じような顔で青年の後に続いて入っていった。
スペースに入るとすぐに3人くらいのマレー人が何か手続きをしている。それに片言の英語で話しかけ入国のために必要な書類を手渡した。
学生ビザの発行には現地の学校関係者が同じ書類をもってきて入管に来、本人証明をして一緒にマレーシアに入国するのが通例であると私は聞いている。私はまだきていない、誰がくるかもわからない学校関係者を入管で待たなくてはいけなかった。
書類を受け取った青年は笑顔でありがとう、というとまた自分の仕事に没頭し始める。
数分後、青年含め他のマレー人が一斉に仕事を片付け始めた。
鞄に色々いれて立ち上がり、ほかの者たちに笑顔で何かをいう。そして帰り始めた。
おそらくそのときのノート:関係者帰り始めた。私、死ぬのでは?
死んでないから今ここでこんなのを書いている。安心して。
やがて数分後学校関係者のヒジャブをかぶった女性が入ってきた。なんでわかるか? 笑顔で「車代さん?」と話しかけられたから。日本語ペラペラだった。生きた。
冗談ではなく本当にそのときの私は彼女に後光がさしているようにみえた。