107話 人を襲う冒険者
翌朝私達は、タイチ様が起きる前に朝食作りにチャレンジを始める。これは重大なミッションだ! 愛するタイチ様だけに作らせる訳にはいかない! それに…。
(ミリーの作る料理が一番美味しいよ!!)
なんて言われた日には私は天にも登る気分になるだろう。
しかし現実は厳しいものだった…。
「な、なんだ…この物体は…」
タイチ様の顔が引き攣っており、私達は項垂れるしかなかったのだった。
四人で失敗したものを処分し、タイチ様が朝食を作り始める。かな手慣れた動きで食事を作るなんて素敵だなぁ…。
その後、食事を食べ終わり、私達は食器を片付ける。
「明日こそは成功させよう!」
アズロットが気合いを入れるかのように私に言う。だが、成功する見込みはないのだ。だって、私達は誰一人として作り方を知るものはいない。適当に作って差し出しているだけなのだから。しかし、タイチ様はそんな私達を咎めようとはせず優しい笑みを見せてくれる上に、頭も撫でてくれた「怪我はない? ありがとうね」と…。
予定通り町の外に出て私を中心に戦闘をしてくれる。タイチ様たちが仰るように、前のように体が思うように動きをしてくれない。タイチ様は銃を使うのを禁止している。先ずは身体を慣らすことが大事だと仰っていた。
暫く戦っていると身体が慣れてくる。私はタイチ様を見ると、タイチ様は理解してくれたのか、頷き私達を集める。
「次の段階に移ろう。次はいよいよタンダゴの町へ向かうことにする。今夜が最後のギツアの町で過ごす日になる。今日はゆっくりと休んで、明日に備えよう」
私達は返事をして町に戻ると、アズロットが何かを発見する。
「タイチ…あの子達って…確か、ウッドマンにボコられてた子だよね? なんか、装備品が無いように見えるんだけど…」
話が見えてこない。私が情報を集めている時に出会った人の事を言っているのだろうか…。
「あぁ、剣士の少年だったな。あの時はもうちょっとマシな武器を持っていたし、鎧を身に纏っていたはずだ…」
タイチ様も覚えているという事は、相当真新しい記憶だということだ。それは失礼に当たるが、装備品まで覚えている辺りはアズロットの言うとおりだろう。
マシな武器を…マシな防具を…考えられる事は一つしかない。追い剥ぎにやられたのだろう。命からがら逃げたか、命乞いをして、なんとか見逃してもらったか…。
「どうするの? タイチ」
どうもこうも無いだろう。タイチ様には関係は無い。
「ミリー、あの子達のところへ行くよ」
「はい…かしこまりました…」
流石我がご主人様…お心が広すぎる。私なんか全く助ける気なんて無いのに…追い剥ぎにあったあいつ等が悪いのだから放って置けばいいだなんて考えてしまった。
「君達…どうしたんだ? 昨日の武器とか…鎧とかは…」
タイチ様の呼びかけに、少年達は身体をビクッと震わせる。何かに怯えているようだ。
「あ、あんた達は…」
少年がタイチ様に気が付き返答をする。早く答えろ。
「昨日は動物狩りに行ったんじゃないのか? ウッドマンは君達では厳しいって言っただろ?」
「ち、違うんだ…ぼ、冒険者が…俺達が動物を探していたら、冒険者が襲ってきたんだ!」
やはりそういう事だった。冒険者が冒険者を狩る…。考えられない話ではない、私達のいた世界でもそう言った盗賊がいた。やはり何処の世界もそういう奴らがいるって事だ…。
「これからどうするんだよ? そんな武器やレベルでは、ウサギや鶏程度しか狩れないぞ…」
「し、仕方ないじゃんか! お、俺達は負けてしまったんだ…」
「なら仕返しを使用じゃないか…そういった奴らを叩きのめしてやるよ」
え? だって、先ほどはギツアの町を去るからって…。
「案内しろよ…俺達が敵をとってやるよ」
「任せな、私達は強いよ!」
アズロットまで…。シオンは我、関せずだし…。少年らと話をつけたタイチ様。戻って来たばかりの町をすぐに出ていく。タイチ様は何がしたいのだろうか…。
少年等に連れられて襲われた場所まで付いていくと、冒険者はまだその場で酒盛りをしていたのだった。
「よう、冒険者諸君…」
タイチ様が優しく微笑みながら近寄る。危ないのでアズロットが一緒について行く。流石アズロットだ。前衛的な仕事をさせるなら彼女しかできないだろう。しかも直ぐに武器を出せる準備までしている。
「なんだ? お前ら…」
「悪いんだが…彼らの武具を返してくれないか? 今のままでは狩りすらまともに出来ないしさ…」
タイチ様はお話で済ませようとしているのか? まさか…こういった連中は頭が悪いから話しても無駄だと…タイチ様が一番知っているのでは無いのですか?
「お前達も同じようになりたくなければ、武器や防具をおいて…あと、その子達を置いてどっかにいけよ。ワーッハッハッハ…!!」
やはりゲスはゲス。だが、タイチ様のことだから何かしら案があるのだろうと思いみつめていると、タイチ様はイキナリ腰に装備していた銃を取り出し発泡し始める。
「お前ら…俺達レベルが低いと思って、油断しんだろ? 優しく話しかけてやったんだからすぐに返せばいいのに…」
手や脚に撃ち込んだ弾丸。魔法使い…クレリックだっけ? そんな奴が居るようで、傷を必死に治すのだが、タイチ様の撃つスピードに間に合うわけはない。
のた打ち回る冒険者。タイチ様は少年らの武器を探していると、痛みに耐えていた男が一矢報いるため、起き上がろうとしていた。気がついた時には私は男の首を跳ね飛ばし、殺していた。
「ん? おぉ…流石アサシンだな。ありがとう…ミリー。お陰で助かったよ」
タイチ様はそう言って微笑み、手にしていた銃で全員の頭を撃ち抜き、生き残っているのは私達と少年の二人だけになっていたのだった
武具を回収し、我々は町に戻る。少年らは泊まるガルボすら持っていないということだったので、タイチ様が少年らも一緒に泊めてあげる優しさを見せる。
お礼を言う少年等だが、先程の光景が忘れられないのか、ビクビクしていた。失礼な奴らだ。
我々(タイチ様)が食事を作り、少年らに食事を振る舞う。さすが私の王子様である。やること全てが素敵で素晴らしい。
我々は翌日に備え、休む事にしたのだが、タイチ様は何かを調べているのか、部屋の灯りが消えるのが遅かったのだった。




