101話 面談と新世界へ
『やあ、ミリー君』
「あ、あなたは……一体誰ですか……」
私の目の前に現れた美しい女性。私よりも年齢が若い人だと感じるが……。しかし、今まで出会った中でも神々しさがあり、私は両ひざをついて頭を下げるようなポーズを取ってしまう。何故だか恐れ多い感じがしてしまうのだ。
『君は……太一君の奴隷だった……犬族とハーフの奴隷。それで間違いがないかな?』
この方はタイチ様をご存知である。流石タイチ様、こんな神々しい女性とも知り合いであるなんて……私はやはり凄い方に買われてしまったのだと改めて理解をする。
「は、はい……。た、タイチ様に買われたミリーと申します……」
『ふむ、素直で良い子だと思うよ。ミリー』
「あ、ありがたきお言葉です……」
『君のような子が私の側近に居てくれると、私はだいぶ楽が出来るんだが……そうも言ってられんか……。さぁ、話を元に戻そう。君はどうなりたい?』
「ど、どうと言いますと……? タイチ様のお傍に居たいとしか……」
『太一君を愛しているのか』
「奴隷の身分ですが恥ずかしながら……」
私は恥ずかしながらそう答える。
『別に人を愛するのに身分なんか関係ない。なるほどな……この後はアズロット、シオンとも話をしなくてはいけないから直に言わせてもらう。君は生まれ変わる。奴隷と言う身分から解放させてあげると言っているんだ』
な、何を言っているの? このお方は……。
『まずは性別を選びたまへ……ちなみに太一君は男性を選んだぞ』
「女性で……」
『フム……で、種別を選びたまへ……』
種別?
『好きな生物で構わん。ヒューマン、犬、猫族などだ』
「い、犬族を……」
『フム、今と変わらない種族が良いのか? いや、ハーフだったからちゃんとした種族を選んだと言う事になるのか……そこら辺も考えなければならんな……』
この方は何かブツブツ言いながらメモを取っている。
『職業を選べ……好きな職業だ』
「た、タイチ様と一緒に居られるなら何でも構いません。常に一緒に居られる職業が良いです」
『魔法使い系にしとくか……どうせ太一君の事だから銃を持たせたりして戦わせるのだから』
「ま、魔法が使えるんですか!」
魔法なんて夢みたいな話だ。何て素敵な話だろう……。
『サブ職業を選びたまへ』
「さ、サブ職業?」
『職業には一つとは限らん。吟遊詩人に成りたければ、それを選べばいい、他になりたければ他を選べば良い』
「た、タイチ様と相談することは……」
『ならん。それはお前の人生だからだ。太一君と一緒に居たければ一緒に居る職業を自分で選ぶが良い。嫌になれば転職をすればいい』
そう言って神々しい女性は手を前に差し出すと、沢山の職業が現れる。私は何が起きているのか分からず呆気にとられてしまう。
しかしタイチ様の事を考え、本当に何が役に立つのかを考えると、私は職業から選び直した方が良い気がした。
「あ、あの……タイチ様は私に何を求めているのか分かりませんが、私はこのアサシンというのになりたいです。そして、サブ職業で追跡者という職に就きたいと思います……それで如何でしょうか……」
『成る程、魔法は太一君が必要になれば与えてくれるからな……面白い。君はタイチ君のために生きて行きたいというのだな?』
「御意……」
『分かったその願いを叶えてやろう』
そう言われると、私は光の渦に包まれ意識が遠くなるのを感じる。タイチ様の傍に居られるのなら、私は何にだってなるのだ……私を選んでくれた時からそう決めたのだ……。
★――――――★
『やあ、君は……シオンという名前で間違いが無いか?』
「あ、あなたはどちら様でしょうか……」
眩し過ぎて直視できない程の輝きを放っている。相当な人物だろう……。
『私の事など、どうでも良かろう……私は君に質問をしているんだがね……』
「も、申し訳ありません……私はしがない奴隷のシオンと申します……お許しを……」
『そこまで悲観することは無い。さて、これから世界が変わろうとしている。それは太一君と一緒に居て、何と無く体験している事だと思うのだが……いかがかな?』
「は、はい……世界が……おかしな事になっているとは……思っております……」
『素直で宜しい。世界は一旦滅びを迎える。これは避けられぬ運命だ。別にこれはお告げでも何でもない。私にとってただの遊びの一つだよ……』
「遊びの一つで世界を滅ぼすなんて……」
『君はアリの巣などを悪戯したことは無いのか? それは蟻の住む世界を滅ぼそうとしたことではないのか? ただ無邪気に……』
何が言いたいのか分からない。だが、言われている意味は、お前は偽善者のような事を言うなと言う事だけは理解できた。
『さて、世界は新しく変わる……その中で、君達四人は特別に扱ってやろうと思っている』
「わ、我々四人……ですか?」
『太一君、ミリー、シオン、アズロットの四人だ。既に太一君とミリーとは面談を済ませてある。二人とも物分かりが良くてね……クククッ……』
まるで悪だくみをしている様な笑い方をする人だ……一体何を考えているのだろうか……。
『君は現在奴隷をしているが、それを解放してやろうと思っている』
「え? 奴隷……解放? だって、魔法契約で……」
『我々にはそんなのは関係ない。創造主にそんなちんけな魔法なんか必要あると思うのか?』
創造主……と言う事は、神々の者……この人は一体何者なのだろうか……。
『直に言う……君は生まれ変わる。まずは人種を確認しようか……』
「人種? それは人間とか獣人とかという話ですか?」
『呑み込みが早いね……そう言う事だよ』
「なら、ヒューマンにしてください」
『職業は? ちなみにサブ職業も選べる』
「賢者……」
『強欲だね……良かろう。そしてサブ職は?』
「アーチャーでお願いします。タイチ様の武器は基本的に飛び道具がメインです。アーチャーがあると言う事は、アーチャーがいる世界があると言う事……だったら私はタイチ様をお守りするために魔法が使えるアーチャーになりましょう……」
『よかろう……それで決まりだな。その願いを叶えてやろう……』
そう言われると、暖かな光が私の全てを包み込み、意識が消えゆくのであった。
★――――――★
『やあ、アズロット……』
私の前に知らない女性が現れた。周りには誰もいない真っ白な空間。ここは何処だろうか、普段身に付けている武器が無い……と言う事は、夢の世界か?
『意外と察しが良いな……』
「ご用件は?」
『フム、嫌われているのか? まぁ仕方あるまい。我々に対して、お前は恐れる者の存在の血を引いている。怖がるのも当たり前か』
何が言いたいのだろうか……血を引いていると言ったな。魔族の血を差しているのか?
『直に言う、お前が住んでいる世界は滅ぶ。だが、太一君やお前達だけは生かしてやることに決めている……』
世界の滅び? と言う事はこいつは神々の者か?
『お前に選ばせてやる。人種を』
「人種を選ばせる? と言う事は、この禍々しい私の血を取り払い新しい生物として生まれ変わらせるとでもいうのか?」
『その通りだよ、アズロット。さぁ、この中から一つだけ人種を選べ』
そう言っていくつかの種類が私の前に現れる。皆は何を選んだのだろう。だが、私は迷わず選ぶ。
『ヒューマンか……憧れていたものなぁ……』
何もかもお見通しという目が気に入らないが、私が殴り掛かってもこいつには勝てることは無いだろう。一瞬で消滅させられてしまうはずだ。
『では、職業を選びたまへ……』
数々の職業が目の前に現れる。私は何が良いのか分からず一つ一つ内容を読んでいくことにした。
『まさか君がここまで慎重な奴になるとは思っても見なかったよ……』
ほざけ、偉そうに……。自分の運命が決まるのであれば、それは慎重に選ばないといけない物だろう。そして一つの答えに辿り着く。
「この刀剣銃術師という職業に付けない理由は?」
『ヒューマンだからさ……君がエルフ族を選んだりしたら……選べるんじゃないか?』
知っているくせに、そう言う事を言わない奴……。
「職業をこれにしたい。刀剣銃術師……ヒューマンが駄目ならハーフヒューマンにしてくれ。天空族と記載されているのを先ほど確認した」
『成る程、君は随分と知恵を回すようになったな……良かろう。ハーフヒューマンに変更してやる。そして職業は刀剣銃術師……君は勇者になりたいのか?』
「いや、私はタイチに拾われ、大事に育てられてきた。私の我が儘も何もかもタイチがフォローしてくれた。だから今度は私が彼の前に立ち、先導に立ち彼を支えよう……」
『ふん、ジャンヌダルクかい? 君は……神の言葉を聞いたと言って民を先導してフランス革命を起こす……彼女は魔女として火あぶりの刑にあって死んだがね……』
「タイチが望むならそうするよ……火あぶりでも何でも受けてやる。私がタイチの前に立ち壁となって守ってやる! そして、タイチのために戦うんだ!」
『なるほどね……で、サブ職業は何にするかい?』
「一つ確認させてくれないか……私が選んだ刀剣銃術師は攻撃がメインな職業なのだろう? 守備に関して何かあるのか?」
『ないな……』
「あんたが言う勇者に必要な物とはなんだ?」
『私に向かって言う言葉遣い……君は性格を直した方が良いのではないか?』
「話の内容からすると世界は滅び、私達の記憶もリセットされるんだろ? どうせ……」
『多少……な。そうだな……神官か……女性だから巫女と言った所か……クレリックに関しては回復魔法を主に覚える職業になる。これを選ぶ人が多いのではないだろうか。巫女に関しては人気の少ない職業になるだろう。補助系の魔法を覚えるための職業だ。嫌なら転職する事も可能だから生まれ変わっても変える事が出来る……が、刀剣銃術師に関してはここでしか選べない職業となっている……もし、私がお前と同じ立場なら……巫女を選ぶかな……それはなってからの楽しみだ。しかし、これは一般的にお前達しか選ぶことのできない職業だと言う事を忘れないでくれ。他の物はこんな風に選ぶことは出来ないし、私みたいな案内人がいるわけでもアドバイスをしてくれる人がいるわけでもない。自分で選んで勝手に決めて行くのだ……君達は太一君の知り合いだから今回はこうしているだけ……太一君という存在に感謝したまえ』
「最後に一つだけ……お願い」
『しますをつけろ……』
「お願いします……」
『言ってみろ……』
「この目の色だけは……変えないで下さい。これは私の名前に由来している目……忘れたくもないし、捨てたくもない……」
『我が儘な奴らだ』
彼女がそう言うと、私の横にはミリー、シオンが立っていた。
『最後に私からのプレゼントを上げようではないか……その容姿、太一君が好むものに替えてやるよ。精々、新しい世界を楽しむんだな……』
彼女がそう言うと、私達は光に包まれ姿を消す……この後どうなってしまうのだろうか……。
★――――――★
『さて、太一君全ての作業が終わったよ。世界は破滅し、新しい世界に変わった……君達はこの世界を生き、そして自由に生活をしていくんだ。君のステータスで変化を幾つか付けさせてもらった』
真っ白の空間で女の子は悪戯な笑みを俺に見せる。
「まずは。スキルを付けるのはポイントで可能。これは変化がない。しかし、君の職業だけは無いのだよ……作る事が出来なかった。当て嵌まる物がないのだ……』
「お、俺の職業……?」
『なので一つだけ私に与えさせてくれても構わないか?』
「条件を付けさせてくれるなら……」
『条件とは?』
「それはそっちがなんて言うかの話さ……」
お互いが探り合うかのように笑う。
『君の職業はスキルマスターだ。全てのスキルを扱えてしまうんだ。しかも君には特殊能力がある……それは、召喚能力だ。これ以上の物はないだろう?』
「名前がダサいね……それに職業を聞かれたら応えられない。皆はそれなりに答える事が出来るはずだが、俺だけ答える事が出来ない。だったら召喚能力者としてくれよ。召喚士と勘違いするだろ?」
『分かった。で、君の条件は何だい?』
「召喚能力は以前取り決めたままにしてもらいたいのと、職業から外して欲しい俺の職業は青魔導士……」
『青魔導士? なんだそれは……そんな職業は無いぞ?』
「見た技や魔法をコピーできる魔法使いさ、例えば毒霧を受けるとする。すると、その技が使えるようになる。魔物しか使えない魔法や技が使えるようになる職業……。だけど、これには条件が有って、一度その攻撃を受けるか、見ないと覚えることは出来ない……面白い職業だろ」
『分かった分かった、好きにしろ……。だが、その職業は君だけの職業……オリジナル職業だ。人に説明するときは気を付けて説明したまえ』
呆れた顔して俺を見る。
「大丈夫、赤魔導士とか、黒魔導士があるからそれと似たようなものだというよ。ある意味最強の魔導士だね」
『最低だな‥‥君って奴は。サブ職はスキルマスターで構わんだろ? これだけは譲らないかな! そこまで譲歩したんだ、これは私の言う事を聞いてくれよ!』
頬を膨らましながら上目使いで女の子は言う。
『ちなみにステータスも変わっているので注意してくれ。全ての人が他人のステータスを見れると言う事を忘れるな……だが、スキルは見る事が出来ない。見れるのは自分と、君だけだ……他の者が人のスキルを見ちゃうと問題になるからな』
「これからが大変になるだろうけど……」
『問題ない、補助に君の知っている子を付けさせてもらった。おいで……』
呼ばれた少女は恥ずかしそうに俺の前に現れる。まさか……死んだリタに再び会えることは思っても見なかった。俺は茫然とリタを見つめていた。
「お久しぶりです……タイチ様……」
「リ、リタも……元気そうで……い、いや、死んでるから……」
「今回の件では私も大変お手伝いをさせて頂きました。世界は大きく変わっております。まずは全てのステータスをリセットする事からさせてもらいましたので、タイチ様はレベル0からスタートとなります」
「え?」
「ミリーやシオン、アズロットがいるのですから大丈夫ですよ、それにその反則的な能力がありますから……あ、袋はそのまま残っております。通貨はガルボ……これも変えておりません……為替一族もいなくなり、他の者となっております。全てはガルボで世界は動いていると思って下さい」
クスクスと笑うリタ。意地悪な所は変わっていない。
「全ての管理は私が行わせて頂きます。何かありましたら……私が○○様にご相談することになっておりますゆえ、この新しい世界を楽しんできてください……。後は……これをお持ちになって下さい。タイチ様の世界ではスマホ? とか言われている物ですよね? 何かありましたらそれでお知らせさせて頂きます。これは皆さんに内緒ですよ? 後無くなったり壊れたりしませんし、充電も必要ありません。それでは行ってらっしゃいませ……。私の愛した愛しきタイチ様……。ご武運を……」
「ちょっと、カベルネはどうなったんだ!」
俺の質問にリタは冷たい目をする。
「タイチ様が知る必要はありません。が……お答えいたします。消滅いたしました。存在そのものが。新しい世界に行ったら彼女の事は頭からなくなってしまうでしょう……。これは私達を裏切った罰です。私達の約束を守らなかった報いでございます。アズロットにもその事は忘れてもらいます。新しい人生を……アズロットにも歩んでもらいたいですから……あの子は素直で優しい子です。あの約束に縛られないで欲しい……私はタイチ様と出会えませんでした。後悔があったと言えば……それだけです。ですが今は願いがかない幸せです……。アズロットにもよろしく言っておいてください……」
リタは少しだけ寂しそうな顔をしていう。俺にはリタの言う意味が分からないが、アズロットとリタの三人で話した時に何か取り決めがあったのだろう……。俺はそう思いながら、リタが用意した扉のノブを捻り、新しい世界へと旅立つのだった。
「俺もリタが好きだったよ……」
扉から出る前に一度振り向きリタに言うと、リタは少し驚いた顔した後、嬉しそうな顔して一粒の雫が頬をつたったのだった。




