100話 終わりの世界の始まりの世界
俺達は宿屋に泊まり、明日から家造りを始める事にした。
三人に新しい土地を見せると、メルヘンチックでおもしろそうだと嬉しそうに言っていた。意外と気に入ってくれたようだ。
だが、俺にはこの世界が面白くもなんとも感じない。もっと刺激的な何かがあっても良いのではないのだろうかと思う様になっていた。
あの子が考える事が中途半端過ぎて、幼稚すぎる。そんな気がしてならなかった。
宿屋の部屋で俺はノートに思った事を書きなぐる。あの子がどのように反応するのかわからないが、必ず読んでいる事は分かっている。だから俺が世界を変えるのを手助けしてやろうと思い、ノートに思いを込めて書き込みを始めたのだった。
「まず初めに二種類の人間がいる事が分かっている。この事実を変えることはできない」
『何が言いたい?』
珍しく早く回答が浮かび上がってくる。
「貴女たちは情報操作をできる事が可能なのかが知りたい」
『面白くなければ意味のない話だぞ……分かっているのかい? 太一君』
「アビリストは転職システムで成れたりしたらどうだろうか?」
『どういう意味だ?』
「為替の他にも君達の使者が居るでしょ? それ達にアビリストになれるようにする…その中で職業を選べるようにする」
『なら、アビリストという存在の意味がなくなる。コモマンもアビリストも我が父が作った存在だ。私がどうこうできる問題ではない』
「交渉する価値はあるだろ…面白い世界を作りたいんだろ?」
直ぐに返答が来ていたのに帰ってこない。何か悩んでいるのか……。
「もし無理なら転職システムでなんかはどうだろうか?」
再び答えが返ってこない。ここまでか……。最後に……。
「コモマンという名前の変更を望む。ダサいと思う。レグリア人とかそういった名前に変えたらどうだろうか。アビリストは冒険者というのに変更を望む」
『しばし待ってくれないか……。君の言いたいことは分かる。だが、名前の変更はすぐにできるが、転職システムに関してやアビリストの存在を変更するのは難しい。先程も書いたが、これは我が父を説得しなければならない……これはすぐには出来ない。父も面白いことは大好きだからな……上手く話せばなんとかなるかもしれん』
ノートはそこで会話が途切れる。彼女にも色々な立場があるのだろう。俺はそう思いながらベッドで横になると、部屋の扉がノックされる。
「タイチ様……起きていらっしゃいますか?」
相手はミリーのようだった。
「どうぞ、開いてるよ」
そう言うと、ゆっくりと部屋の扉が開き、俺はそちらを見る。ミリーは薄着で現れ、緊張した表情をしていた。
「ど、どうしたんだよ……ミリー……」
「ご、ご主人様は私の体に興味は無いのですか…一年近く一緒に暮らしておりますが、全く私の体に興味を示さないではありませんか…」
「ち、ちょっと待て…な、何を言っているんだ!」
「私はそんなに魅力がありませんか…? ハーフは……駄目ですか?」
「そ、そんなこと無いけど……ま、先ずは落ち着け!」
「落ち着いております。タイチ様に奉仕するのが私の生き甲斐。私は目を治して頂き、何もお礼をする事が出来ませんでした……。ですから……」
「いやいや、自分の体は大事にしようね……」
「やはり魅力がないのですね……」
い、いや、そうではないから……魅力は物凄くあるよ……あるのだけれど……。
ゆっくりと近寄ってくるミリー。
俺は後退り、逃げ場が無くなる。ミリーは明かりを消し、俺の布団に潜り込む。お互いが未経験のため、何をして良いのか分からない。
取り敢えずキスだけはして俺はミリーを抱きしめるように眠りにつくと、ミリーは幸せですと小さく呟き眠りについた。結局初めてはお預けである。
翌日になり、隣にはミリーがスヤスヤと寝ていた。昨日起きた事は嘘ではなかったのだと思いながら俺は体を起こす。そして、何気なくノートに目をやると、あの子から回答が来ていたのであった。
俺はそれに目を通すと、その内容に驚愕する。
『お父様との話の結果、全てを私に任せてくれた。この世界には興味がないらしい。だから、全て私がやりたいようにやって良いとの事。そこでだ……一度世界を滅ぼすことに決めた』
俺は寝ぼけているのかと思って目をこすったのだが、別に寝ぼけている訳では無く、本当に書かれていた事であった。世界を滅ぼすと言う事は……天変地異が起きると言う事。そしてその後、新たに世界をつくると言う事になるのだろう。俺もこれで殺されてしまうのかと思ったのだが、俺達四人は一瞬だけ時代を飛び越えさせることにするらしい。
『太一君が言っていた職業システムは面白いと思う。だが、それをやるには一度世界を滅ぼすことが必要になる。時代を作り直さないとならないのだ。それは仕方ない事……』
し、仕方ない事なのか…?
『タイプは二つを作ることは絶対との、父からご命令だから逆らえん。何か案はあるか?』
こんな大事なことを俺が決めても良いのだろうか…。そう思いながら…俺は提案する。
「二つの惑星が重なってしまい、世界は破滅する。その時に生まれるのがレグリア人と冒険者の二種類のタイプ……。レグリア人は冒険者になることができない……いわゆるNPCのような存在で、冒険者はプレイヤーキャラクターのような存在。お互いに死があり、生き返らせることは不可能。レグリア人は魔法が使用できるが大した魔法は信用できない。冒険者は生まれながら自分の職業を選択する事が出来る……」
書いていることはMMOそのものだと思いながらも俺は書き続ける。
「冒険者に至っては人種も選べるようにする。犬族やキツネ、猫など色々とね……後は職業だよね。職業のようなものを選ばせて、ある程度いくと、転職できるシステムにすればいい。冒険者はどこから生まれたのかやってきたのかわからない、記憶を失った状態からスタートさせる事にすればいい。もしくは捨て子だ。レグリア人は王家のために全てを捧げるような感じで、冒険者は傭兵まがいに自由に生きていく。また、ライバル国に近い国もあった方が良いかもしれない。ラスタン人とか言う人種をつくればいいんじゃないか? で、やはりNPCのような生き物だが、レグリアとの交流は多少あったりする。仲が悪いとかそんな感じにすればよいかと思う。魔物に限っては、倒したらコアを売却するように自分で解体させたりさせる。肉は食べれる物と食べれない物があったりすると良い。魔物も徒党を組んで戦ってきたりし知恵がある奴がいると面白いと思う。例えば、ザコキャラが軍隊のような物を作り、人里を襲ったりするなどの要素があっても良いかと思う。そこで一般人は冒険者に依頼などしてガルボのやり取りや、道具のやり取りなどをするのは如何だろう? 冒険者も商人等が居てそういったやり取りをする奴らが居たりするのも面白い。また、洞窟や遺跡などでアイテムを手に入れたり道具を手に入れたり、武具を手に入れる事が出来たりすると面白いかも知れないな。そこでレアアイテムを手に入れたりする……。これは大規模の戦いで戦ったりする巨大に強い奴にしたりして……ここまでにすると、世界の管理者が必要になる。それはそっちで決めてくれれば良いかと思う。まるでゲームのようだがね」
『私にとって人間は駒の一部でしかない。面白いな……問題はガルボに関してと言う事か』
「それなら敵を倒したらガルボになるか、道具にするか、そのままに素材として選ばせるので良いではないかと思う」
『成る程……武器に関しては……』
「基本的に弓矢と魔法、剣だけで良いのではないか? あとは忍者のような武具を作ったりしたりする……とかはどうかな。銃火器は有っても構わないと思う。ガンナーとか言う職業があっても良いのではないかと」
『それでいいだろう……。細かい修正はあとあとやっていけば良い感じだな。転職は…』
「それはそっちで神官を派遣させればよいのではないだろうか」
『フム、一理ある。で、子供に関してはどうする?』
「NPC同士で子供を作ったらNPC。冒険者同士で作ったら、神殿の前に置かれるで…どうだろう。冒険者なんだからそこからは自分でどうにかしてやらなきゃならんでしょ?」
『冒険者に生まれた宿命と言う事か……。しかも、町や村に神殿が必要と言う訳か……』
「村に関しては小さくても構わないと思う。繁盛するとかは自分達でやらせるべきだ」
『それで行こう…』
「動物は普通にいるようにしてくれよ」
『何故だ?』
「経験を積ませるのと、肉を手に入れるのにはやっぱり動物が一番いい。だが、凶暴にしてくれないとつまらない。生活するうえで、肉や農業は必要になる」
『成る程ね……ではそうさせてもらうとしよう……明後日には世界は破滅する。新しい世界で生きて行ってくれ。あ、君の奴隷達は自分で性別を選べさせるようにさせてやろう。しかも奴隷では無くしてやる。後は好きに生きるが良い……。君には色々と世話になったな。君の特殊能力は今までと変わらない能力を付けてあげよう。手伝ってくれたお礼だ。これでこのノートの役割は終わりだ……直ぐに消滅させてもらう』
そう描かれて数秒後にノートの存在は消えてなくなってしまった。
ミリーやシオンなど……彼女たちと出会ったとき、俺の事を覚えているのだろうか……。
気掛かりはそれだけであった。




