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私の可愛い奴隷人形  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 哀しき奴隷人形 ――幻想都市ファンタジアシティ――
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第23話 戦争と世界

 【幻想都市ファンタジアシティ】


 白く輝く太陽、青空の下、美しい蒼い建物が立ち並ぶクリスタルの都・ファンタジアシティ。この地の上空に無数の政府の大型飛空艇プローフィビが飛んで来ていた。戦いで傷ついた街を整備する為に送り込まれた政府特殊軍だ。


「ピュ―リタン将軍、マグフェルト総統閣下がご到着です!」


 作業の指揮を執るピューリタンの元に1人の兵士がやって来て言う。彼女は近くにいたトワイラルに指揮の引き継ぎを合図すると、彼女はその兵士についていく。

 壊れた街。クリスタルの聖地ファンタジアシティ。至るところで復興作業が続いていた。作業をするのは特殊軍の兵士とその街の市民たちであった。

 戦争は市民や兵士の命を多く奪った。無力な彼らは強大な連合軍になす術もなく、敗れ去った。だが、破壊された街を復興するのは普段は無力な彼らだった。そんな彼らは、力のある誰かに無理やりやらされるのでなく、自分の意思で動いていた。



「この度のクラスタ失脚は連合軍に取って大きな痛手となった。ファンタジアシティ陥落の報を聞いた時は冷や汗をかいたが、彼女が失脚したのであれば十分だ」


 4人の親衛騎士に守られたマグフェルト総統は笑顔で言う。彼こそが国際政府の最高指導者であった。彼には戦争の痛みは分からない。普段は首都グリードシティで命令を下すだけなのだから……


「マグフェルト総統閣下…… ファンタジア陥落の原因は私の油断と慢心です。申し訳ありませんでした……」


 そう言って頭を下げるピューリタン。そんな彼女を見たマグフェルトは少しだけ笑みを浮かべて、優しそうな表情で言う。


「クラスタ失脚。それがあっただけで十分。それに“わたしの勝利”もあったのだからな!」

「…………」


 マグフェルトはピューリタンがクラスタによって捕まっている間に元老院最高議長の地位から政府総帥と元老院議長を兼任する総統となった。

 第2次ファンタジアの戦いのさ中、首都グリードシティにて正式に総統となった。元老院議長の権力と政府総帥の権力。そして、戦時大権。この3つを持つ強大な権力を持つ政府の支配者となったのだ。


「……では、私は復興の指揮に戻ります」

「ああ、そうしてくれ。市民を守るのは我々の使命だからな」


 笑いながらマグフェルトは去って行く。その後ろを豪華な装甲服に身を纏った4人の親衛騎士がついて行く。ピューリタンはその後ろ姿をぼんやりと見ていた。彼女の心境は複雑だった。

 この戦いで多くの兵士と市民が犠牲になった。そのおかげでクラスタは失脚。マグフェルトは総統の地位を手に入れた。ファンタジアシティの危機を利用して……


「戦争、か……」


 ピューリタンもまたその場から去って行く。

 クラスタの嘆き。戦争を嫌う彼女。その心は怨みと憎しみに支配され、彼女自身が奴隷人形として使われていた。それは僅かな間、一緒にいたピューリタンも薄々勘付いていた。だが、彼女にはどうする事も出来なかった。

 クラスタ失脚した。だが、それでも戦争は終わらない。まだ5人の将軍と連合軍を率いるティワード総督がいる。全員が連合軍から消えない限り、戦争は終わらない。


「ごめん……」


 ヴァランとピューリタンも戦争は嫌いだった。だが、個人の力はあまりに小さかった。世界の流れを変える事は出来なかった。

 スレイヴ・ドールは消えた。ピューリタンは解放され、クラスタは失脚した。だが、まだ“世界”はあの男の“スレイヴ・ドール”だった。戦争という流れを作り出したあの男の……



「マグフェルト総統閣下」

「なんだね?」


 1人の将校がマグフェルトに声をかける。その将校はかなり慌てた様子であった。


「たった今、ハーベスト地方から入った連絡ですが、連合軍の軍艦3隻が現れたそうに御座います」

「ほう……」

「それと共に未確認ではありますが、巨大なウォプルが出現し、暴れていると……」

「そうか。では、まずは元老院に報告して……」

「しかし、時間が…… あの怪物が街に現れれば大勢の市民が犠牲に……」

「……わたしにもっと大きな、大きな権限があれば、即座に殺処分を命令できるのだがなぁ……」


 そう言うマグフェルトの表情はどこか不気味なものがあった。だが、それに気がつく者は誰一人としていなかった。

 彼は大型飛空艇プローフィビの中に姿を消す。大型の機体は空中に上がり、同じタイプの大型飛空艇10隻に守られ、青空の彼方へと消えていった。

 美しかった青空。北の方より灰色の雲が湧き、次第に空を覆い尽くしてゆく。白くなった空は暗くなっていく。不気味な暗雲が覆う。



「トワイラル」

「……ピューリタン、どうした? 総統とは会って来たのか?」

「ああ……」

「…………?」


 ピューリタンは辺りを素早く見渡してからトワイラルの耳元に近づいて言った。


「私は昔、パトフォーに会った事がある」

「……お前ともう1人、会ったヤツがいたな。パトラーって人だっけ?」

「今からいう事は誰にも言わないでくれ」


 ピューリタンはもう一度周りを見渡す。遠くで作業を続ける兵士や市民ばかりで怪しい人間は誰もいない。油断の多い彼女。この時だけは一瞬の隙も見せていなかった。


「パトフォーとマグフェルト。声や姿が似ている……」

「…………。……俺もマグフェルトはなんかおかしいと思ってる。上手く言えないケド、なんか、アイツの敷いたレールを歩かされている……気がするんだ」


 ティトシティの空爆。ピューリタンに下したファンタジア防衛の命令。トワイラルのプレリアシティ派遣。4将軍のファンタジア攻撃。全てマグフェルトによるものだった。

 クラスタの勧誘。ファンタジアシティ陥落。ウォゴプル製造。クリスタル運搬。ファンタジアを失ったクラスタの失脚。全てパトフォーの命令によるものだった。それを何の情もなく、楽しみながら実行したのがバトル=オーディン……


 戦争は続く。以前よりも狂気を増してより激しく、より酷くなって。そして、パトフォーの計画は戦争が進めば進むほど、完成に向かって進む――……

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