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【第134話 成金は買える!】

 Tdカンパニー。シアトルに本社を構えた貿易会社だ。世間ではゾーン団とのしがらみ等は一切公表していないので、誰も知らない。ある日、ある時、突然、株で一発当てただけのベンチャー企業としか思っていないのが現状だった。


 そのTdカンパニーでは、オーナーである勇者ワタルから、出産を無事に終えたモナが代表取締役として任命されていた。


 Tdカンパニーの屋上ヘリポートには、漆黒のエアウルフからワタルが降りてくると、モナが出迎えていた。


「オーナー! お疲れ様です! 早速、応接室までどうぞ。雨森さんが既にお待ちです」


 ワタルがモナに連れられて応接室へ行くと、アメリカでガマの油売りを行っていた雨森とデメタと、数ヶ月ぶりに再会した。


「雨森さん! デメタ! 久しぶりです! アメリカでの行商は大成功だったみたいで良かったですよ!」


 ワタルが雨森の頭の上のデメタを見ると、全ての指には下品な金の指輪がはめられていて、首には金のチェーンネックレスがジャラジャラと掛けられていた。


「ゲコ! ゲコ!」


「デメタもアメリカが気に入ったみたいで、よくアメリカウシガエルのケツばかり追っかけてやすぜ!」


 そんな挨拶をしていると、早速、モナから仕事についての説明があった。


「本日、集まって貰ったのは、既にメールで説明したようにデメタの油の医学的根拠が必要になったからです。今のままでは薬事法違反になりますので。このままではせっかくのガマの油が医薬部外品扱いにされてしまうので、医療の現場では使用できなくなるのです」


 こちらの世界の法律などまったく知識のない雨森が反論する。


「べつにあっしは売れりゃあ、医薬部外品とやらでも構いませんぜ?」


 その雨森の意見には、ワタルが否定的な意見を言う。


「雨森さん。それは勿体ないよ。ガマの油の効果は本物だもん。俺としては、ちゃんとした医療の現場で使って欲しいよ。モナも俺と同意見だよね?」


「はい。デメタの油はノーベル賞が狙えるほどの薬です! 立派な医薬品です! それに、私は異世界のことはさっぱりわかりませんが、雨森さん以外にもガマの油売りっているんだとしたら、他のガマの油売りが先に医薬品登録をしてしまいますよ? そうなると、雨森さんの油はジェネリック扱いになりますよ?」


 それを聞いたデメタが口を挟んだ。


「ゲコ! ゲコ! ゲコ!」


「おっと! デメタが恐ろしい事を言ってますぜ! デメタは勇者様に、異世界へ行って他のガマガエルを絶滅してこいですって!」


 デメタはニコッと歯を剥き出しにして微笑むと、デメタの歯は全て金歯になっていた。完全にアメリカで成金になってしまっていた。


「でもさ、デメタ。ガマガエルを絶滅させたら、デメタは一生独身で過ごすのかい? 来翔さんや雨森さんみたいに、一生独身でいいのかい?」


「ゲコ! ゲコ! ゲコ!」


「ハハハ! デメタがさらに恐ろしい事を言ってますぜ。結婚とは男の墓場だ! ですって!」


 新婚のモナと結婚生活が順調なワタルは、苦笑いしていた。


「まあ、なんにせよ。医学的根拠さえ揃えば、デメタの独占販売が出来るんだから、もっとお金持ちになれるよ? わざわざ他のガマガエルを殺す必要も無いんだよ」


「ゲコゲコゲコ!」


「それなら、その医学的根拠ってやつはどうしたらいいのかを教えろ! ですって」


 ここからはモナが説明をした。臨床試験や成分分析等のことを細かく説明すると、一つだけ重大な壁にぶち当たった。


「え? 作り方ですかい? そんなもんはデメタの身体から滲み出てくるだけでござんすよ? それをあっしが集めて終わりって次第でございます」


「え? それじゃ、なんの加工もしてないんですか? 殺菌も消毒も?」


「へい。滲み出てきただけでござんす!」


 モナとワタルは顔を見合わせて困り果てた。


「カエルの分泌物をそのままと言うのは、正直、難しいですね……」


 しばらく応接室では、モナとワタルがあれやこれやと悩んでいたが、最終的にはデメタの鶴の一声で決まってしまった。


「ゲコゲコゲコゲコ!」


「あいや! デメタの奴がもうめんどくさいから医薬品なんてどうでもいいそうで、特許出願中にして深夜の通販番組に出せ! と言っておりやす……」




 ◆




 それから数日後。そのデメタの希望通りに、ことは進んでいた。


 モナは全米に流れるように、深夜の通販番組の枠を買った。もちろん、本当に特許も出願中にしてから、雨森とデメタと勇者ワタルと、紅一点として詩音がスタジオに招かれた。元々、アイドル活動っぽい事をさせられていた詩音とワタルにとっては、深夜の通販番組などは簡単なことだった。


「勇者様も詩音さんも、デメタのワガママに付き合って貰ってありがとうござんす!」


 詩音は台本を片手に答える。


「別に良いわよ。デメタには世界を救ってもらってるし、こんな事で恩返しできるならお易い御用だわ」


 そして、いよいよ撮影は始まり、ワタルと詩音の通販でありがちなオーバーなリアクションで撮影は滞りなく終わり、すぐに全米に週に三回ペースで放送された。


 すると、ガマの油はあっという間に在庫を売りつくして、デメタもフル回転で油を分泌していた。油を出せば出すほどすぐに売れていくので、雨森とデメタの懐はどんどん潤っていった。


 そんな雨森は、通販番組が全米に流れてから、わずか半年でシアトルにプール付きの別荘も買ってしまっていた。成金カエルのデメタは、毎日毎日プールで泳いで成金生活を満喫していた。


 それでも貯金額はどんどん増えていき、雨森とデメタは故郷に錦を飾る事を決めた。




 ◆




 シアトルにも冬が訪れる頃、異世界へ帰るために奥尻島のゲートを使うため、日本へとやって来た。


 そして、江差にある来翔の宿屋に来て、デメタは久しぶりに戦友のレフトに再会した。


「ゲコゲコ!」


「ピヨピヨ!」


 久しぶりの再会を、フェアリー達が暖かく見守っていた。


 江差町では、もうヒグマもLEONも笹山で冬眠している季節になっていた。




 (第135話へ続く)



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