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発動条件
薄汚れた石畳の上で、男は銀貨の入った袋を握りしめていた。
名はレイン。
三十歳、奴隷。
異世界転生してから、ただの一度も“主人公らしいこと”は起きていない。
与えられたスキルは――
《コピー》
だが、発動しない。
何をしても、何も起きない。
「……クソスキルが」
奴隷として酷使され、殴られ、食事は最低限。
希望なんて、とっくに捨てていた。
だが――
「……今日は、使うか」
拾った大金。
普通なら逃げるか、隠すか。だがレインは違った。
向かった先は、路地裏の奥。
赤い灯りが揺れる、いかにもな店。
「……最後くらい、いいだろ」
どうせ人生終わってる。
なら、最後に一度くらいは――




