最終話(おまけ)極秘事項開示
結婚指輪を、チルに内緒で準備したい。
俺は悩んだ末に、部下のタルトをカフェに呼び出した。
タルトはチルと席が隣同士で、比較的仲がいい。
チルのことを相談するなんて俺のプライドが傷つくが、背に腹は代えられない。
俺の呼び出しに、タルトはビビるかと思った。
だが、意外にも平然とやって来た。
「チルちゃんの指のサイズですか?」
「ああ、……ま、知っていたら参考にしようと思っただけだ……」
「知らないですねぇ。僕がそれ知ってたら、おかしいですよ」
「だな」
「すみません、お役に立てず……」
「昨夜、指のサイズを測ろうとして失敗してしまった……。俺としたことが……。お前に助けを求めるのはおかしいという自覚はある」
「わからないなら、聞いちゃえばいいんじゃないですか?」
「は?」
タルトは、ポケットからスマホを出すと、さっそく電話をし始めた。
プルルルル……
ピッ
「もしもし、チルちゃん?」
「おまっ!……タルト、バカか? 聞いたらバレるだろ」
タルトは冷静に、電話でチルと話している。
「あのさー、もうすぐ僕の母さんの誕生日なんだけどさ……」
何言ってんだ、こいつ!
「うん、それでね、母さんの結婚指輪をリフォームしてプレゼントしようと思ってるんだ。そう、デザインが古くてさ、母さんが使いづらそうなんで。うん、親孝行っていうやつ? えへへへ」
そんな話を、いつもチルとしているのか。
……妬けた。
「でさ、僕って指輪のことよく知らなくて。チルちゃん、知ってる?」
おい、チルは毎日雑誌を見て調べてるんだぞ。
「やっぱりね、知ってると思った。
ってかさー、僕の母さん、意外と指が細いんだよね。
ところで、チルちゃんって、指のサイズいくつ?」
! そういう流れ?
「あー、そうなんだ。ちなみになんだけど、おすすめのデザインってある? うん、うん、○○ってメーカーのシンプルなやつね。ネットで見れる? あ、もしよかったら、今見てるそのページ、スクショして送ってよ。そのほうが早い。うん、じゃ、たのんだよー。じゃあねー」
タルトは電話を切ると、俺に向き直って言った。
「9号らしいっす」
「……有能だな、お前」
頼りになるな、この部下。
「お前、いつの間に詐欺トークがうまくなったんだ」
「え? 部長の指導のおかげっすよー。毎日、人間相手に、こんなことしてますんで」
よかった、こいつが敵じゃなくて。
「ところで、部長。指輪どんなのにしようか決めてるんですか?」
「その場で適当に決める」
「そうなんですか……。あ、届きましたよ。チルちゃんが好きなデザインのスクショ。……これ、部長のスマホに転送しときますねー」
俺は、メールを開いて画像を確認した。
「……やっぱりな。こればっかり見てるんだ。毎日……」
「へぇ、さすが部長ですね。ちゃんとチルちゃんのこと見ているんですね」
「……たまたまだ」
「愛されてるなぁ。チルちゃん」
「お前、ほんとに可愛くねぇな」
「よかったら、指輪を買いに一緒に行きます? その店、僕知ってますよ」
「別に……俺ひとりでも」
「そうっすか。じゃ、僕はこれで……」
「待て。一緒に来てくれ」
このあと、男二人で一緒に指輪を見に行った。
この件は、トップシークレットだ。
……以上。
――完――
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これは、
「終わりではなく、また会うための一区切りです」
営業部の物語が完結しても、
オクト部長は、これからもどこかの部署で眼鏡を直しながら仕事をしています。
【あくまでも部長です】は、そんな世界だからこそ、
安心して「また会いに行こう」と思っていただけたら、嬉しいです。




