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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第37話 部長のオンとオフ

 家に帰って来たら、メイクを落とす。

クレンジングシートをみると、あの日の部長を思い出す。


あの日は、二人で大笑いしたあと、メイクを落とした。

オクト部長が、メガネをかけ直した素顔……素敵だった。


やばいやばいやばいやばい……

バシャバシャと洗顔した。


思い出すと、まだドキドキしているわたし。

両手でパンパンと顔を叩いて、気合を入れた。

課題をやらなきゃ、三日間しかない。


テーブルに、課題の紙を広げた。

【モヤモヤした不安】

その下に枝を伸ばす。


仕事に慣れてないからかもしれない。

生活の変化は?……いきなり上司と同居だもの、当然影響している。

疲れ……これもある。


うーーん……やはり、オクト部長抜きで原因を突き止めるには、無理がある。

毎日、家でも会社でも、顔を見ているんだもの。

オクト部長を無視……できない。

でも……原因、“部長”って書いたら、終わりな気がする

そのとき、


ガチャ


「ただいまー」


オクト部長が帰って来た。


ビクッ!


「お、おかえりなさーい」


「……声が上ずっているな。なんか、あったか?」


わたしは、テーブルの上をわたわたと片付けた。


「ああ、チル偉いな、課題をやってたのか……、進んでいるか?」


「い、今ちょうど考えているところです!」


部長の顔が見られない。


「そうか。ならいい」


部長はかばんを置いてお風呂場に向かった。

(ふぅ、よかった。)

部長からの追及はなかった。

と、思ったら、洗面室から顔だけ出した。


「あ、言っておくが、家で仕事する必要は無い。オンとオフの切り替えは大切だぞ」


「は、はい!」


気のせい?

今、部長の肩見えたけど……、上半身裸だった?

キャー!

一緒に住むって、こういうことなのか。

やっとわかった。

なんて、美味しい……違っ! 刺激的なの!



シャワーを浴びた後のオクト部長は、いつも通りだ。

ご飯作る。

テレビつける。

ビール飲む。

ルーティンは崩さない。


なんで普通にしてられるんだろう。


食後はノートパソコンで、何か見ている。

わたしは知っている。

あれは、モフモフの猫動画を見て癒されているんだ。

わたしは、本棚に行くふりをして、画面をチェックした。

うん、……ブレていない。

子猫が遊んでいる動画だった。


「あの、……話しかけてもいいですか? 部長……」


「ん? 何」


「やっぱり……何でもありません」


「そうか」


あれ?

普段ならここで、追及の手を緩めないのに……。

今は、癒されタイムだから、そっちに夢中なんだ。

ま、いいか……。



 翌日。

悪魔契約コーポレーション営業部。

会議から戻ったばかりの部長を、受付の女の子が呼びに来た。


「オクト部長、来客でーす」


「ん? アポなしか……」


「すみません、内線を鳴らしましたが会議中でした。お客様には、お待ちいただいてます」


「誰だ」


「音楽事務所のアカネさんという女性です。なんでも渡したい物があるそうです」


わたしは、パソコン入力しながら、全神経を部長の会話に向けていた。

ヨシフォーのマネージャーだ。

今日も来たんだ。


カタカタカタカタ……


「チル……」


「はい、お茶ですか?」


「いや、ノーアポだし、物を受け取るだけだから、応接室は使わない。すぐ戻る」


「はい」


「お茶じゃなくて……、お前、何を入力している」


はっ!


aopvq@lkdnhvoivhqeknlakadkjbfhfon;add c.9????

でたらめに入力していたのが、バレた。


オクト部長は、冷たい視線でわたしを見下ろしてから、ロビーにむかった。

うう……、恥ずかしい。

でも、気になる。

わたしは、お手洗いに行くふりをして、ロビーに向かった。


柱の陰からそーっと、覗いてみる。

わたしは耳の感覚を研ぎ澄ませた。

誰にも秘密だが、わたしの聴力はものすごくいい。


「……アカネさん、いらっしゃいませ。ご用件は?」


オクト部長の営業スマイル、完璧だ。

——あんな顔、わたしには向けないのに。


「ごめんなさい、急に来てしまって。Yoshielから頼まれたデータ、このメモリに入ってますわ」


「ああ、例の件ですね。ありがとうございます」


「それから……、好きです」


え? あの女マネージャー――!! 告ったぁ!

オクト部長は、笑顔で応えた。

ええ? 笑うのか?


「はい? よく聞こえません」


「まあ、聞こえないなら、もうちょっと近くに寄りますね」


女マネージャーは、オクト部長によりそい、その腕に手を添えた。


「オクトさんの電話番号……、教えてくださる?」


完全に誘惑のポーズだ。

だけど、オクト部長はやんわりと断った。


「会社の方針として、個人的な質問には、お答えしてはいけないことになっているんです」


「あらぁ、そんな……。わたし、オクトさんのこと、もっと知りたくて」


「先ほども申し上げたように、わたしどもはそうしたご要望には、お応えできません」


「いいですわ。ここで教えてくださらないのは、当然よね。勤務中ですものね」


「そういう問題では……。すみません、次の会議があるので、ここで失礼します」


「え?」


「今度いらっしゃるときは、前もってアポイントを取ってくださいね。じゃ、」


オクト部長は、エレベーターに向かって去って行った。


かっこいい。

毅然とした態度で、最後に釘を刺して行った。


その後ろ姿に見惚れていると……、

女マネージャーに見つかった。


「そんなところで、のぞき見? 一体、どういう新人教育してんのかしら、あなたの上司」


ああ、万事休す。


「あら、なるほど。あなた……」


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