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(23) 王妃は断罪される

申し訳ありません。風邪を引きまして1日遅れました。

「この場をお借りして、皆様に伝えたいことがあるのです。」

 カミーユのその言葉の後、舞踏会の会場に現れた一人の男を見て、ざわめきがさざ波のように広がる。


「王太子殿下?」

「以前と雰囲気が変わられたようだが……。」

「王都に戻られたのか?」


 王太子の登場に驚きを隠せなかったのは、王妃もだ。思わず我が子の前まで行き、声を掛けた。

「シャール!いつ戻ってきたのですか?」

「今日です、母上。お元気なようで何よりです。」

 シャールの目は、会えた喜びではなく、重く沈むような色をたたえていた。

「今日は母上にお伺いしたいことがあって参りました。コルプ・ハウゼンという男の名前に聞き覚えはありませんか?」

 それはカミーユのところに行かせた暗部の男の名前だ。王妃は動揺を押し隠し、知らぬふりを装う。

「はて、そのような名前に覚えはないが。」

「そうですか。ところで父上を診ていた医者が最近いなくなったと聞きましたが、彼はいまどこにいますか?母上の紹介だと伺っておりますが。」

「高齢ゆえ、これ以上は城に上がれぬと職を辞して国に戻ったが、それがどうかしたのかえ?」

「先ほどのコルプが入城許可証を持っていまして。確認したところ、その医師が使っていた許可証だと言うことが分かりました。なぜ彼がそれを持っているのか、説明していただきたい。」

「……知らぬな。」

 王妃は扇子をバサリと広げ横を向く。その手がかすかに震えていることにシャールは気がついた。

「その男は現在、宰相を毒殺しようとした罪で捕まっております。自決しようとするので、生かしておくのがなかなか大変でしたよ。」

 シャールの言葉に周りがざわめいて、宰相に視線が集まった。宰相は頷くと一歩踏み出し、鑑定書を取り出した。

「私の食事に毒が入っていた調査結果だ。この毒を長期間服用すると、身体が弱り、やがて起き上がれなくなるそうだ。」

「それって国王陛下の……。」

「いや、皇太后様も……。」

 ヒソヒソと話す貴族達の視線が王妃に注がれる。それでも王妃の顔色は変わらない。

「解毒薬も完成したので、ぜひ国王陛下にも飲んでいただきたいと思っておりますよ。」

「そんな怪しげなものを飲ませるわけにはいかぬ!」

 王妃が激昂するが、宰相は涼しい顔だ。

「すでに王太子の許可を得て、国王陛下の下へ届けております。」

「シャール……!」

 王妃がシャールをキッと睨む。シャールは暗い瞳のままだ。

「先ほどの男について、叔父上と調査しました。彼は、帝国の暗部の男でしたよ、母上。」

 シャールの指が王妃を指す。

「この場を以て、国王及び皇太后、宰相殺害未遂の主犯として、母上、あなたを拘束させていただく!」


 近衛兵が会場に現れ、王妃を取り囲む。ぐるりとそれを見渡した王妃の視線が片隅にいたカミーユのところで止まった。カミーユは静かに一部始終を眺めていた。


「お前が…お前さえいなければ!」

 王妃が投げた扇子を、ピルケール王が叩き落とす。

「私の妃に手を上げた罪も付け加えていただきたいものだな。」

「妃になった覚えはありません。」

 静かにカミーユが返す。


「連れて行け。」

 シャールの声で近衛兵が王妃を会場から連れ去っていく。その後ろ姿を見送っていたシャールは、カミーユのところへ向かった。そしておもむろにカミーユの前に跪いた。

「カミーユ・シンクレア。あなたのおかげで、この国は救われた。感謝する。」

「王太子殿下、お立ちください!」

 悲鳴のような声があちこちで聞こえるが、シャールは動かなかった。

「私はこの国の全権をあなたに委ねたいと思う。どうか、受け取ってはもらえないだろうか。」

 シャールがカミーユを見上げたところに割って入ったのは、ピルケール王だ。

「困るなあ。私が王妃にと願っているのだぞ。」

 シャールはゆらりと立ち上がる。

「ピルケール王におきましては、ご挨拶が遅れて申し訳ない。緊急事態だった故、許していただきたい。されど、カミーユはこの国の宝だ。持っていかれては困る。」

「婚約破棄した女をまた自分のものにするつもりか?見苦しい。」

 ピルケール王の一喝にも、シャールは動揺を見せることはない。

「私の妃にしようとは思わぬ。私には過ぎた女性だ。」

 二人の男がじっと睨み合った。

 そこにまた、会場の扉を開けて入ってきた者がいた。カミーユが目を見張る。


「ミュゼラ姫!なぜここに。」

「面白そうなことが起こっていると聞いてな。私を除け者にしないでほしいのう。」

 ニヤニヤとしながらミュゼラ姫が言う。

「ピルケール王にカミーユを取られるくらいなら、フレランジュに連れ帰るぞ。」

「む……。」

 ピルケール王が眉を寄せた。新しい国を興したばかりの王として、親交を深めにきたはずが、あちこちで不評を買って帰るのは困るだろう。


「私の人生を勝手に決められては困ります。」

 カミーユが静かに言うと、三人はカミーユを揃って見つめた。

「ではカミーユの望む人生とはどれなのだ?」


「私は……他の国に行く気はありません。ですが、この国の全権と言われても困ります。王太子殿下、それを背負って立つのは、貴方の仕事です。私は私の仕事がありますから。」


「反論の言葉もないな。」

 シャールが苦笑する。


「では、私のお仕事もさせていただきます。ミュゼラ姫。いっそのこと、この国にいらっしゃいませんか?今までよりも楽しいお仕事を提案させていただきますので。」


「ぬ?」


 急な提案にミュゼラが目を細める。


「妾はこれでも王族ぞ?しかるべき地位でもなければそんな話受けようがない。」


 その返事を待っていたと言わんばかりにカミーユは微笑む。その微笑みは月の光のようで、その笑みを見た全員が魅了された。


「では、姫のために、未来の王妃の席をご用意しようと思うのですが、いかがでしょうか?王太子殿下にはすでに了承をいただいております。」

この話もあと数話で終わりの予定です。

そこまでお付き合いいただけるとありがたいです。

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