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DAY72 最強の否定

ガレッジ(軍用大学拠点)周辺はゾンビ共が徘徊している。

衝動の解放の機会を(うかが)いながら暗い夜を過ごす。


ガレッジ(軍用大学拠点)内では、

衝動を解放するかのように、

一馬と朱華の戦いが続いている。


怒りを前面に押し出す朱華に、

冷静に対応する一馬。


第1ラウンドは一馬が制す。

一馬に飛び込む朱華の動きが、変化していく。


朱華が間合いに入るなり、

飛び上がり身体を回転させる。

勢いに合わせ、長い脚が一馬へ襲い掛かる。


一馬は不意の動きに、

後ろ回し蹴りを腹部で受け止める。


一馬(ぐっ、なんて威力だよっ!)


朱華は距離を取り、一馬を睨み観察する。


隼人「ソバット…」

黒羽(クロウ)「…飛び後ろ回し蹴り……だそうです。」

隼人「彼女……躍動感が出てきたね。」

黒羽(クロウ)「ええ、怒らせたままで決着したかったですが…。」


黒羽(クロウ)の懸念は当たっていた。

朱華は怒りに身を震わせているように見え、

一馬の認識を冷静に分析していた。


初見で朱華の動きを真似た一馬に、

あまり警戒心が働かなかった。


個体差はあれど、男性特有の柔軟性の低さが、

朱華の動きを完全再現する程では無かった。


しかし遠目で見たであろう動きを、

抜群の呼吸(タイミング)で、

再現する動きは、警戒すべきだった。


朱華(過小評価していた。)


朱華は頭の中で、一馬の情報に修正をかける。

一馬が戦う姿は、

朱華の目には隼人と黒羽(クロウ)に類似する。


朱華は一馬に対し、技の熟練度は

あまり高くは無いと”直感”で感じている。


しかし一馬の攻撃には、

人を殺す技術が詰まっていた。


的確に急所を狙う一馬の打撃。

瞬時に模倣する、

身体操作には反則じみたものがあった。


朱華が第1ラウンド取られた原因は、

過小評価によるベターな近接戦をした事。


朱華「ふぅぅぅぅ…(息は整った…借りは返すよ。)」


朱華は走り出し、

一馬に大きく右拳を振りかぶる。

一馬は反応し、朱華の右拳を警戒する。


突然、朱華の姿が一馬の視界から消える。

朱華の背中が見えた瞬間、

一馬は突然の衝撃に襲われる。


一馬の視界が歪み、

床に膝を勢いよく叩きつけられる。

一馬の視界が揺れ、視点が一点に集中する。


一馬(‼‼)

一馬の視界に大きな塊が迫ってくる。

左手を添え、

朱華の膝を流し顔を大きく横へズラす。


一馬は間合いを取る為、横へ移動する。

しかし朱華は追撃の、

左下段回し蹴りを一馬目掛け放つ。


一馬は咄嗟に両腕で頭を守る。

両腕をへし折る勢いで、朱華は脚を振り抜く。


一馬の腕は痺れ、

無防備な態勢から抜けられないでいる。

朱華は一馬の股間目掛け、左脚を振り抜く。


一馬は間一髪で、朱華の蹴りを抑止する。

蹴りの勢いに合わせ体を起こし、

立ち上がり間合いを作る。


朱華は攻撃を止めない。

一馬は頭の鈍痛と、

途切れそうな意識を繋ぎながら迎え撃つ。


朱華が身を低くしタックルの体勢に入る。

一馬は一瞬早く、朱華の動きに反応した。

一馬の動きに朱華は反応し上体を起こす。

一馬は朱華のフェイントに反応し体勢を整える。


朱華は一馬の懐深くまで接近していた。

一馬は攻撃を試みた瞬間…

朱華がまた一馬の視界から消えた。


その瞬間、一馬が崩れ落ちる。


黒羽(クロウ)「ここにきてコレかよ」

隼人「………(決まったかな)膝…。」


朱華が一馬の顔に膝を叩きつけた。


通常では飛びついて膝を当てる事や、

首相撲をしてくっついて叩きつけるのが定石。


しかし朱華は超近接で、

立ちながら膝を頭に叩きつけた。


180度を超える開脚が成せる技。

身体を大きく横に傾け、

弧を描きながら狭い範囲で右膝を放つ。


朱華が筋肉を隆起させながら、

拳を握りしめ咆哮する。


朱華「あぁぁぁああああああああああ」


朱華は一馬を見下ろし、満面の笑みを浮かべる。

瑠奈は朱華の戦い方を食い入るように観察していた。


瑠奈も柔軟性があり、立体的な動きで相手を翻弄する。

しかし瑠奈にとって朱華は完全な”上位互換”。


今すぐにでも一馬を助けに割って入りたいが、

確実に相手にならない事が容易に想像できた。


朱華「あははははは、どうだ?私が最強なんだよ!そのまま死んでろ!仲間も一緒に見物でもしてろクソがっ!あーはははははは」


隼人「……彼…一馬君だったかな。」


隼人は一馬の元へ向かおうと腰を上げる。


黒羽(クロウ)「先輩…見る目が落ちましたか?」

隼人「??」

黒羽(クロウ)「アイツ…一馬はここからです。」

隼人「ここから…って。」


隼人が一馬に視線を戻すと、

一馬が下を向きながら仁王立ちしている。

一馬に背を向け、

歓喜に笑う朱華も気配に気づく。


朱華「あっ?」


黒羽(クロウ)「|Transient Hypofrontalityトランジェント・ハイポフロンタリティ…」

隼人「……極限集中…。」


一馬の雰囲気が変わる。

朱華も空気が変わる事を感じ取る。

歓喜が一気に緊張に変わる。


一馬は虚ろな意識の中で、

朱華の言動を反芻している。


一馬(仲間を殺す…仲間…殺す…殺す…誰を………。)


一馬の視界に朱華が映りこむ。


ゾクッ…


朱華の全身から鳥肌が立つ。

何故かはわからないが、

朱華は一馬に攻撃を仕掛けていた。


左拳を軽く振り抜き、

流れるように態勢を低くする。

朱華は一馬の脚を刈り取る為、

水面蹴りを試みる。


その瞬間朱華の視界に、一馬の拳が迫ってくる。


朱華(は?)


朱華の顎は跳ね上がり、

空を見上げている。

素早く立ち上がり体勢を整える。


素早く右腕を伸ばし、一馬の顔に拳を向ける。

膝下を脱力し、

低く低く器用に脚を動かし一馬の懐に入る。


朱華の腕が空を切る。

朱華の動きに合わせ、一馬が後退していた。

前のめりに体勢を崩した瞬間、顔に衝撃が走る。


朱華は強烈な蹴りを顔に受け、苦痛に悶える。


隼人「黒羽(クロウ)、君の言っていた意味がわかったよ。確かに、彼しかいないかもね。」

黒羽(クロウ)「はい…気に入りませんが。」


朱華は立ち上がり、

鼻穴に指を強引に差し込み、いじり始める。


ブゥゥゥゥゥ


指を抜いた瞬間、鼻血が勢いよく噴き出る。


朱華(なんだなんだなんだコイツ?)


朱華は驚きを隠せない。

朱華の動きの上を行く人間に朱華は会った事がない。

動きと勘が勝ってたからこそ、暴力に屈しなかった。


朱華「(認めない…認めない…認めない)殺すっ!」


朱華が飛び出すと同時に、

一馬が懐近くまで接近していた。


朱華(えっ?)


朱華の鎖骨目掛け、

一馬の右肘が叩き込まれる。

痛みに耐えながら右手で一馬の胸ぐらを掴む。


掴む勢いに合わせ、

朱華の袖下を掴み一馬も引き寄せる。


一馬は同時に朱華の顎に軽く触れ、

右腕を勢いよく伸ばす。


朱華の脳は揺れ、掴んだ手の力が抜ける。

一馬は背を向け、

朱華の腕をひねり肩を突き上げる。


ゴキンッ


朱華の肩関節が外れる。

掴んだ腕から離れ間合いを取る一馬。


一馬が間合いを詰める瞬間…。

朱華の野生の勘が爆発する。


朱華が体を右に倒れるように動かす。

視界の外から、

朱華の左脚が弧を描き一馬を襲う。


一馬が一歩前に踏み出し、

一瞬早く朱華の股間に膝を叩きつける。


朱華「がぁ…」


男性でも女性でも人体の構造上、

急所の位置は変わらない。


朱華が倒れ苦痛に悶える姿を、

一馬が静かに見下ろしている。


朱華「はぁはぁはぁ…殺せえええええええええ」


一馬「はぁはぁはぁはぁ……殺…さない………」


一馬は一言朱華に伝え、振り返る。


朱華「……畜生がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


朱華は怒声のように泣き叫ぶ。

一馬はふらつきながら隼人達の元へ歩き、

目の前で意識を失い崩れ落ちる。


隼人と瑠奈が崩れ落ちる一馬を支えた。


隼人「お疲れ様…一馬君。」


長い夜も終わりを迎える。

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