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アナザーレイド  作者: うーーーーちん
完結編
63/64

無力

なんとかこの物語をおわらせたいです

感染症は、世界を止めてしまった。


人々の暮らしも、生産も、文化も、何もかもが止まったように見えた。


けれど、本当に止まったわけではない。


人は生きている。

食事をする。眠る。働く。

病気にもなるし、怪我もする。


病院は、そうした人たちを助ける場所だ。


私は無力だと感じながらも、それでも看護師として働くことだけは辞めなかった。


私の時間が止まっている間にも、ほかの世界ではレイドが行われていたらしい。


誰かが戦い、誰かが勝ち、誰かが消えていく。


その事実を知っても、私の心は動かなかった。


いや、動かせなかった。


『このままでは、この世界は終わってしまうな』


仕事終わりの帰り道。

創造主様の声が、頭の中に響いた。


「……っ」


足が止まる。


「そんなこと言われても、私は何もできません」


声が震えた。


「何の力もなく、誰かの命が消えていくのを、ただ黙って見ているだけなんです」


そうだ。


私は何もできない。


大きな力の前では、人間なんてあまりにも無力だ。


『まあ、メイ君にその気がないのであれば仕方ない。レイドで不戦敗となるか、病で死に絶えるか。どちらが早いだろうね』


「……そんなこと、言わないでください」


分かっている。


私が戦わなければ、この世界は他の世界に淘汰される。


分かっているのに、身体が動かない。


心が、ついてこない。


「メイ様」


そっと、シロマちゃんの声がした。


「もしも、今までのことが無かったとしたら、どうされますか?」


「え……? シロマちゃん、それはどういう……」


「過去に戦って救ってきた人たち。守ってきた人たち。そして、メイ様がお仕事の中で関わってきた人々」


シロマちゃんは、静かに続けた。


「そうした出会いや時間がもしも無かったとしたら、メイ様は今、これほどの無力感を感じておられたでしょうか」


「……」


「無力だと感じるのは、メイ様が命の重さを知っているからです。救えなかった命だけではなく、救えた命の重さも、知っているからです」


「シロマちゃん……」


「今一度、お考えください。メイ様がこれまでしてきたことは、本当に何の意味もなかったのかを」


私は、答えられなかった。


けれど、胸の奥で止まっていた何かが、かすかに音を立てた気がした。


救えなかった命がある。


それは消えない。


けれど。


救えた命も、確かにあった。


私はまだ、その意味を見つけられていない。


それでも、もう一度だけ考えてみようと思った。


私が、何のために戦ってきたのかを。


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