2. ジェノサイドゲーム
「日本国民の皆様にはこれから殺し合いをしていただきます」
黒服の男が発した言葉を聞いた瞬間、優人はゾッと身の毛もよだつのを感じた。
そして、男は続ける。
「現在日本の総人口は約1億2000万人です。日本国民の皆様には本日深夜0時より人口が1万人になるまで殺し合いをしていただきます。拒否権はありません。殺し合いに際しまして、皆様にはこちらのナビゲーションシステムというデバイスが配られます」
淡々と話す男はスマホのような大きさと形をした小型のデバイスを取り出す。
「このナビゲーションシステムは今回の殺し合いにおいて皆様をサポートするデバイスとなっております。皆様方のお手元に本日中に配送される予定となっておりますので忘れずに受け取ってください。なお、紛失した場合は再度お渡しすることはできかねますのでしっかり保管してください」
「ナビゲーションシステムは本日深夜0時より使用が可能となり、それ以降皆様の携帯電話やパソコン、その他通信機器は一切使用が出来なくなりますのでご了承ください。説明は以上とさせていただきます。また、不明点についてはナビゲーションシステムを使用し、各自お調べいただくようよろしくお願いします」
そういうと黒服は席を立ち、会場を後にしようとした。
「てめぇ!ふざけんなっ!!!」
会場にいる報道陣の男の声が響くーー。
男は怒りを露わにして黒服に歩み寄って行く。
徐々に黒服に近づき、遂には走り出した。
黒服に飛び掛かろうとした次の瞬間。
パァンッーー
乾いた銃声が会場にこだまする。
一瞬の出来事に誰も声を出さない。
拳銃をジャケットの内側に仕舞いながら黒服が一歩前に出る。
「皆さん言い忘れておりましたが、この殺し合いのゲーム。【ジェノサイドゲーム】を運営する私共に逆らう者には死んでもらいます。生き残りたければ殺すしかありません。健闘をお祈りいたします」
一礼すると黒服の男と政府関係者が会場を後にする。
「し、し、ししし死んでる!!!」
「うわあぁぁあぁああ!」
「助けてぇー!」
黒服が会場を後にすると、絶望に満ちた声が響き渡り中継が終了した。
そして、戻ってきたスタジオの出演者は皆顔を青くしており、スタッフに暴言を叫ぶ者、震えて声が出ない者、泣き崩れる者とカオスとかした映像が流れた後、しばらくお待ちくださいという表示と共に放送事故などで出てくるお馴染みの虹色の画像がテレビ画面に映った。
プツンーー
テレビを消す優人。
「う、うそだよな?」
「壮大なドッキリか何かか!?」
優人は現実を受け入れられず頭の中が真っ白になる。
頭を整理できないまま、時間だけが過ぎていく…
ピコンッーー
スマホからの電子音に放心状態の優人は現実に引き戻された。
スマホに目を移すとチャットアプリの通知メッセージが届いていた。
そこには友人の緑山 賢一から一通のメッセージがあった。
『優人大丈夫か?すぐに連絡くれ』
賢一は大学時代の友人で大学の頃は毎日のように優人の家に遊びに来る程仲が良かった。
頭脳明晰でこれまで生きてきて、賢一より頭のいい奴を見たことがない程の秀才だった。
そんな賢一が何故、平凡な頭の俺と同じ大学に通っているのか本気で気になって聞いてみたところ、家から近いという理由だけで大学を選んだと聞いた時はこいつアホなんじゃねえかと思った。
卒業後は大学院に進み研究で忙しいながらも今だに月に数回は遊び、よく連絡を取り合う親友の一人だ。
震える手を抑えつつ、すぐに電話をかける。
「もしもし、賢一!お前は大丈夫か?」
「大丈夫だ優人。連絡がついてよかった!急ぎで悪いが、そろそろ回線が集中しすぎて連絡が取れなくなる可能性がある。いつもの場所に集合しよう。諒と朱里には俺から連絡しておいたからすぐに来てくれ。」
「わかった!すぐ行く!」
そう言って電話を切ると優人はすぐに家を出た。
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向かったのはいきつけの喫茶店。店の前まで着くと三人の姿があった。
「よかった!みんな無事で!」
そう言って三人に近づくと急に抱きつかれる優人。
「優人!よかったぁ!」
抱きついてきたのは矢野下 朱里。
朱里は賢一と同じく大学時代の同級生で、容姿端麗で天真爛漫。
何故朱里が平凡な俺なんかと仲良くするのか分からない程大学時代はモテていた。
それなのに、何故か彼氏は作らないというよく分からない奴だ。
「お前、すぐに連絡つかないからまだ寝てんじゃねえかって心配してたんだぞ!何してたんだよ!?」
そう言って怒っているのは黒水 諒。
諒も他の二人と同じく大学からの友達で卒業後に県内有数の上場企業に就職した。
いわゆる陽キャってやつで、仕事で忙しいながらも腐れ縁なのかなんなのか、今でもよく遊ぶ親友の一人だ。
「悪い悪い!突然のことで何が何だかわからなかったんだよ」
抱きつく朱里を受け止めながら苦笑いする優人。
「再会喜んでるとこ悪いが、一刻も早く情報共有したい。店が開いてないから、すぐそこの公園に行こう」
そう賢一が言うと、皆頷いて徒歩数分の公園のベンチに向かうこととなった。
ベンチに座るとすぐに三人に声をかける。
「みんなの家族は無事か?」
そういう優人は社会人になってすぐに唯一の家族である母親を病気で亡くしている。
母親が大好きだった優人は誰よりも家族を失くす辛さを知っているからこそ出た言葉だった。
また、賢一以外の三人は全員大学時代に地元を離れて愛知県に引っ越し、同じアパートに住んで居たことですぐに仲良くなったという経緯があり、家族が近くに居ない。
そのため、離れて暮らす家族を心配したのだった。
「俺は大丈夫!姉貴が実家にいるから親父とお袋と一緒に行動するってさ」
と答える諒。
「私も大丈夫!お兄ちゃんが実家に戻ってる時だったからお父さんとお母さんは心配ないと思う」
少し不安そうな顔で答える朱里。
「僕はまだ連絡がついてない…運悪く僕以外の家族で旅行中にこんなことになってしまったんだ…」
賢一の言葉によって暗い雰囲気になってしまった。
それを察した賢一がすぐに話題を変える。
「みんなはこれからどうするつもり?」
賢一の言葉にみんな黙ってしまう。
そんな状況を見かねて再度賢一が口を開く。
「僕はみんな一緒に行動した方がいいと思う。正直僕も動揺してるし、どうしていいかわからない。でも、殺し合いが始まったら間違いなく、一人よりもみんなで一緒にいた方が安全だと思うんだ」
「俺も賛成!みんなに死んでほしくないし、一緒にいた方が安心だ」
賢一の意見に賛同する。
「私は…」
そう言って言い辛そうに話始める朱里。
「私はみんなと一緒にいたいけど、家族のことも心配…」
「俺も朱里と同じで家族のことも心配だ」
そういう諒も苦しい表情だ。
しかし、朱里も諒も実家まで車で片道10時間以上離れており、しかもこの状況である。
飛行機や新幹線なんて動いてないだろうし、車だとまず間違いなく渋滞に巻き込まれるだろう。
そして、その渋滞中に殺し合いが始まってしまう可能性が非常に高い。
みんなが押し黙る中、意を決して話しを切り出す。
「みんなが家族の心配をするのは分かるし、俺も心配だ。でも、それ以上にみんなのことも心配なんだ。そして、心配しているだけじゃみんなの家族も俺達も救われない。だからまずは俺達が生き残ろう。そして生き残って家族を探しに行こう!」
四人は大きく頷いた。




