第43話 モノクロの兄妹
レイの転移術に巻き込まれた俺は、目の前がまっ白になった。
――次の瞬間、視界が開ける。
だが、何かがおかしい。身体を襲う浮遊感。
「なっ……!」
転移した先は――空中だった! 俺は空を舞っていた。というよりは落ちていた。地面なんて、どこにもない。
少し離れた場所に、仮面の少女――レイの姿も見える。視線を下に向ける。夜明け前の薄暗さでよく見えないが、その下には深い森林が広がっているようだった。
(――死ぬ!!)
反射的に俺は持っていた剣を捨て、彼女に手を伸ばす。
「くっ……!」
空中でレイの身体を抱き寄せる。
だが彼女はそれに抵抗した。
「は、はなしてっ!」
「バカ! 暴れんな、死ぬぞ!」
俺はレイをかばうように抱きかかえたまま。ふたりで、空から――落ちた。木々の枝葉を何本も突き破り、斜面を転がるようにして落下していく。
「うぐっ……!」
衝撃と枝の痛みが全身を走る。
「うおおおお!」
それでもなんとか着地し、俺は抱えていたレイの様子を確認した。
「……っ」
彼女の仮面は外れていた。その素顔を見た瞬間、俺は確信する。
(――やっぱり)
ハクの素顔を見たときから、なんとなくは感じていた。あのハクを“兄さん”と呼ぶ彼女の正体も。
「……静音」
思わず、その名をつぶやいていた。その名は地球にいる俺の妹の名前。
静音――いや、レイは額から血を流し気を失っていた。
息はある。命に別状はなさそうだ。
「よかった……」
安堵もつかの間。俺はすぐに、自分の状態にも気づいた。
「っ……つ……!」
右足に激しい痛み。感覚だけでわかる。
――たぶん折れている。
(クソ……あの激戦の後で、こんな落下まで……)
体中が痛む。呼吸もままならない。それでも、静音を守れたことだけが、唯一の救いだった。
やがて、空からぽつぽつと音が落ちてくる。
雨――
空は、まだ夜の色を残している。こんな森の奥で夜明け前に誰かが通るとも思えない。
(……そもそもここはどこなんだ……)
俺は妹の体を抱いたまま、何もできずに座り込んでいた。
血と雨が混ざる。意識がじわじわと遠のいていく。
(……ここで……終わるのかな)
どれくらい時間が経ったのか――
俺は、静かに、眠りの中へと落ちていった。
ここから第2章がスタートです。
皆さま、どうかよろしくお願いします。




