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白黒の英雄 ~ちょっと記憶力の良い俺が、魔法を無効化しながら異世界を救う話~  作者: アキラ・ナルセ
第一章 火の国編

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第37話 ラスボスが戦う理由。でもそんなの関係ない。

 


(なぎ)! それ以上、君の力(白の力)をその力をそれに(その玉)加えてはいけない!」


 俺ははっとして振り返る。彼は何かを決意したような目で、さらに声を張り上げた。


「その男が持っている玉は、この地に伝わる“封龍玉(ふうりゅうぎょく)”! 千年前に封印された《魔龍(まりゅう)》を閉じ込めた封印の器なんだ!!」


「……なんだってっ!?」

 俺は思わず声をあげた。


 横にいたリシアも青ざめる。

「じゃあ……あの伝説は……本当だったというの!?」


 直後、ハクが怒気を()びて動いた。無言でユーリスの首元をつかみ、その顔を睨みつける。

「貴様……余計なことを。俺たちを裏切るつもりか……?」


 しかし、ユーリスはひるまなかった。むしろ、その瞳には初めて“迷いのない意志”が灯っていた。

「僕は君達の味方になった覚えはないよ。もう……僕には耐えられないんだ……!」


 ハクの怒りを振り払うようにユーリスは言葉をつづける。

「二人ともいいかい、よく聞いてくれ! 魔龍は千年前、二人の英雄が≪神話級魔法≫によって封印した存在なんだ!」


 声に力がこもる。

「何重もの魔法による術式が、封龍玉(ふうりゅうぎょく)の中に刻まれている……。でも、君の“白の力”は、あらゆる魔法を無条件に無効化する!」


 ――そこで俺は気づく。

 俺の白の力で“魔法の封印”を解いてしまう……そういうことか。

「まさか、俺の力を……利用されたのか!」

「そうだ!」

 ユーリスはうなずく。

「もっとも、伝説の英雄による封印魔法だから、まだ完全に封印は解かれていないようだけどね。そして、それが……この者たちの真の目的だ!!」


 俺はあの声の主がしきりに俺を止めた理由を今理解した。


「じゃあ、じゃあさっきから聞こえるあの声は……」


 ユーリスは苦しげに、けれどはっきりと続けた。

「すまない凪……。僕はイグナスのスパイとして……この国の最重要機密である“封龍玉”の在処(ありか)を密告していたんだ……!」


 リシアが胸元をぎゅっと握りしめて一歩前に出る。


「ユーリス……!」

 その目に怒りと悲しみが入り混じっていた。


 そして俺は目の前の黒い鎧の男――藤原統魔(ふじわらとうま)を睨みつけた。

「藤原統魔……! どうしてあなたはそんな恐ろしいことをするんだ!?」


 藤原は俺の問いに、静かに答えた。

「どうして……か。では逆に聞こう、君は——地球に帰りたいとは思わないのか? 未練は、残っていないか?」


 あまりにも意外な言葉だった。俺は返す言葉に詰まってしまう。


「なにを……」


 彼は続けた。

「黒瀬くん。君がなぜ今になってこの世界へ"戻って来た"のかは知らない。だが——地球からこちらの世界に転移できる者たちには、ある共通点があった」


(俺はここで一瞬引っかかった)


 藤原の声は低く、そして重かった。


「それは現実に絶望し、同時になにかへの未練を抱えていた者たちだ」


 俺は思わず問い返していた。

「……あなたも、そうだというんですか?」


「——想像に任せるよ」

 藤原はわずかに目を細めた後、ゆっくりと続けた。

「魔龍が持つ力……それは神にも等しい。そして、その力を用いれば、地球への道を切り開くことができるのだよ。

 この世界に来て以来、私は地球への帰還を模索し、あらゆる研究と犠牲を積み重ねてきた。すべては、その目的のためにね」


 その言葉にリシアが苦しげに目を伏せる。

「じゃあ……パパが払った“犠牲”って……私たち家族も含まれているの? ママや兄さんも……」

 彼女の声は震えていた。


 藤原は目を閉じ、静かに答える。

「リシア……愛しい娘よ。ルミリアも、レオンハルトも——彼らを失った痛みは今も私の中にある。二人は私の研究の過程で、私の望まぬところで犠牲になった。だからこそ……この悲願をどうしても果たさなければならなかったのだ」


 俺は言葉を失った。

 それが、ただの独善だとしても——彼の信念はあまりに重く、歪んでいた。


「そんなの……そんなの変よ!」

 リシアの叫びが、夜空に突き刺さる。


 そのときだった。

 俺たちのいる広場へ、焔戦団(えんせんだん)ことイグナス軍の仲間たちが駆けつけてきた。赤き軍服の誇り高き戦士たちが次々にこちらに向かってくるのが見える。


「来てくれた……!」

 俺が思わず声を上げると、隣でリシアが力強く告げた。


「パパ。それにハクとレイも——ここで終わりにしましょう」


 藤原は大きく息を吐き、静かに言う。


「ハク。レイ。どうやら、今の私は黒瀬くんの力で魔法が使えない。だが、黒瀬くんの白い力とリシアの持つ鍵。この二つは必ず必要になる。今は退く。あの二人も一緒に連れていく」


 ハクとレイはその言葉にうなずき、レイはすでに準備していた黒の魔法陣を発動させた。

 複雑な術式が緻密に絡み合い、転移術が起動する。それは藤原とハクだけでなく——俺とリシアの足元にまで広がっていた。


 俺は言う。

「く! 逃げられな——」


 その光景を見たユーリスは躊躇なく魔法陣に身を滑り込ませる。

「間に合え!!」


 そして——


 その場にいた面々は闇に包まれた夜の広場から、その姿を消した。

☆今回の一言メモ☆

もし、異世界に急に飛ばされたとしたら。確かにチートな能力を持っていてチヤホヤされるのは嬉しいかもしれませんが、やはりどこかで地球に帰れる方法を探したい。いつか人はそう思うのではないでしょうか?

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