エピローグ
7/24 四話目
それから数週間後、すっかり元気になったセシリーンは王都の屋敷でドレスを身にまとい、着飾っている。というのも、これからパーティーが行われる。そのパーティーでセシリーンとブラハントの婚約発表が行われる。
(ああ、ドキドキするなぁ。カーデン様に正式にエスコートされてパーティーに参加するなんて、王都に来た時は考えてもいなかったのよね。それなのに色々あって、こういうことになっているから不思議だよね。これから注目も浴びるし、大変なことも多いだろうけれども、頑張ろう)
ドレス姿のまま、気合を入れるセシリーンに、ケーテは「あらあら」と楽しそうに笑っている。
そうしているうちにブラハントが迎えにやってきた。こうして迎えにやってきてもらえると、あの夢の世界での出来事が夢ではなかったのだなぁとセシリーンは思った。
「迎えに来たぞ」
「はーい! それにしても現実でも、夢の世界でも好きな人に会えるなんてとても素敵なことだよね」
小声でブラハントにそんなことを話しかけるセシリーン。ちなみについ先日も、ブラハントの夢にお邪魔していた。現実ではまだやっていない遠出なども、夢の世界だと自由なので、すっかり夢の中でお出かけしていたりする。
『夢渡り魔法』という魔法を使えるセシリーンだからこそ、他人の夢でも自由に動かせる。その場を湖にしたり、山にしたり、そういうのも自由である。
「……君はもう少し危機管理能力を持って他の人の夢にはあまり行かないようにした方がいいだろう」
「はーい。なるべくあなたの所にだけいくわ。でも他の人の夢にも時々は行くわ。その時はちゃんと気をつけるわ!」
「全く……君は」
二人でそんな会話を交わして、笑いあっている。
にこにこしているセシリーンに対して、ブラハントはぶっきらぼうだ。だけど時折セシリーンの言葉に笑みを浮かべている。何だかんだセシリーンと話すことが楽しのだというのが見て取れる。
「ドレスが君に良く似合っている」
「ありがとうございます。カーデン様もとてもお似合いですよ。私は不釣り合いって言われるかもしれないけど、堂々とします。私の事を認めないって相手を認めさせますよ。でも『夢渡り魔法』のことはバレないようにちゃんとします!!」
気合十分のセシリーンである。
そんなセシリーンをブラハントは優しい笑みで見ていた。
そしてその後の婚約発表の場で、彼らは仲睦まじい様子を見せつけることになる。
トートイズ王国には、若き美しい宰相がいる。そしてその隣にいる婚約者は、何処にでもいるような伯爵令嬢である。
どういう経緯で彼らが婚約を結んだのかは、本人達しか知らない話である。
「カーデン様、今日の報告は以上です! じゃあ、夢の世界で遊びましょうか! 何します?」
「そうだな。滝なんてものもここに生み出せるのか?」
「滝……んー、頑張って想像します。でも実際に見たものじゃないと想像しにくいんですよ。今度連れてってくださいよ。一先ず此処に想像の滝は出しますけど」
「ああ。君が空いている時間にな」
「はーい」
そしてそんな会話を二人は交わす。
『夢渡り魔法』を行使する夢渡り令嬢と、若き宰相である腹黒宰相。
その二人は今日も今日とて、仲良く夢の世界でも、現実でも会話を交わしているのだった。
夢の世界でよく一緒に会話を交わしているのもあり、現実でもわかりあっているようなそんな雰囲気を醸し出している。国内の令嬢や子息たちは「どうしてそんなに分かり合えているのか」と首をひねり、二人に仲の良くなる秘訣を聞く者もいるのだとか。
――それに対してセシリーンもブラハントも曖昧に笑うだけだったのだとか。
というわけでこれで完結です。
かいてて凄く難しかったです。ある程度、どんな風に書こうかというのは決めていたけれど、あんまり書かない感じの話だったと思うので、とても難しかったです。
反省点も多いのですが、かきたいものは書き切れたかなと思います。というかタイトルの腹黒宰相要素をあまり出せなかったのも反省点です。こういう話を書くのは楽しかったけど難しいですね。
でもこの話を書き終えたからこそ、かけるものってまた増えていくと思うのでこういう感じのお話もっと書いていけるようにしたいなと思いました。
セシリーンのように『夢渡り魔法』が使えたら毎日が旅行みたいで楽しそうだなぁと思いながら楽しく書けました。
セシリーンたちがこれからも楽しく夢の世界でも現実でも生きていくというのを想像するのも楽しいです。
此処まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたり感想をもらえたら嬉しいです。
2021年7月24日 池中織奈




