第七話 夢なの
目を開くとそこは天国だった――――あれ?
(――――――……。)
私、桜庭毬は、トラックに引かれ、狼に襲われ、今度こそ天国に召されたはずだ。
(……えーっとですね……)
まず目に入ってきたのは白い天井、またも横になっていたらしい体を起こすと完全に思考が固まった。
現状を把握できない。
(……えっと、ここは見知らぬ部屋で、見知らぬベッドの上で私は寝ていたらしくて、それで……)
(…なんでさっきのオオカミさんが!?)
ベッドの上には自分だけではなく、さっき森で襲われたはずの三匹の白銀の狼が身を寄せて眠っていた。
(…えー!?私食べられたんじゃないの?もしかして、夢なの?夢!?)
「あはは…」
口から乾いた笑いが出る。
(笑えないよ……)
体も固まって、体中から冷や汗が出る。
すると、気配に気づいたのか、狼が一匹また一匹と目をあける。
ゴクリ……
自分の唾を呑む音だけが響く。
(今度こそ食べられる…!)
目を強く瞑り、体がビクついた。
(………?)
その瞬間何かざらついた生暖かいものが頬に触れるのを感じた。
目をゆっくりとあけると、狼が自分の頬をペロペロと舐めていた。
"人の子、お前、気に入った"
頭の中に響く声。
「……え?もしかして、あなたが……?」
じっと目の前の狼が自分の目を見つめていた。
"そうだ、人の子"
「…狼が、喋るなんて……」
狼はまたペロリと頬を舐められる。
そうして、さっき森で襲われたことをハッと思いだし、
「―た、食べないでくださいねっ!!私はおいしくないですよ!!」
"食べる…?"