九年後
大学を卒業した私は、マヅチの魂が眠る地、レンジュの故郷で彼と結婚した。現地の小学校に勤務し、そこで子供たちに日本語を教えている。最初は自分と同じような境遇の子供を救ってあげたいという思いで教師の道を選んだが、相変わらず周りの人たち――児童にさえ助けられてばかりで、大人になっても私のダメっぷりは直らなかった。
家の裏には、私たちだけのマヅチの墓を建てた。毎朝そこでレンジュと一緒にその日の意気込みをマヅチに話すのが習慣になった。泣きたい夜には、墓の前でしんみりと泣いた。マヅチの前で泣くと、心が落ち着いてくるから。
「じゃ、俺はそろそろ行くよ」
スーツ姿のレンジュはそう言って立ち上がり、墓を後にした。
「私ももう行くね」
今でも、マヅチが死んでいなかったらと考えては悲しくなってしまうことがある。もしも私たち三人、みんな一緒に生きていられたら、どんなに楽しいだろう、と。
でもそういう思いが頭の中に浮かぶたびに、私は目を閉じ、自分の胸を押さえた。そしてその奥に感じるマヅチの命の鼓動を心に刻み付けた。
「かつても今も、これからも、私たちはずっと、三人一緒だよね」
私は立ち上がった。七色に輝く日差しが眩しい。
「今日も、こんな日差しに負けないくらいの笑顔をマヅチに見せるからね」
私は家を出て、学校へと向かった。
マヅチは自分の価値に怯えていたと、レンジュは言っていた。でも、彼は私に生きる理由を与えてくれた。私の世界に、色を塗ってくれた。きれいに、生きたいと思えるくらい美しく。
きっとマヅチは、私にどれだけ大切なものを与えてくれても、自分の価値に怯えたまま生き続けていたのだろう。そういう恐怖は、何となく私にもわかる。
だから私は、私を幸せにしようと命の限りを尽くしてくれた大切な人が胸を張れるように、たくさん笑おうと思う。七色に輝くこの世界に負けないくらい、眩しく。
そして、私は生きる。笑って泣いて、幸せに、生きるのだ。
――全ては私のために生きてくれた、私の大切な人たちのために。




