第2話 融合
「なんだこりゃ!」
俺は絶叫した。
なんで俺の腕がまともじゃなくなっている。
図鑑で見たインテリジェンスマンティスの鎌がついている。
なぜだ。
いや、それだけではない。
俺の体は上半身が女性で下半身がハナカマキリの、インテリジェンスマンティスのメスになっていた。
宇宙服は姿が変わった影響でビリビリに破れて、姿は裸同然になっている。というか、裸だ。
「なんだこれは!?」
俺は驚いて絶叫する。
(本当に申し訳ない。)
頭の中で声が響く。
この声は誰の物だ。
(私の名前はセンテ。インテリジェンスマンティスのメスだ。
私は先ほどウィングポイズンスピアと交戦状態にあって体力を消耗した。
体力を消耗し飢餓感を覚えたため、君から直接栄養源である知的情報を吸い取ったんだ。
その影響で融合現象が発生した。
融合現象とは、私達宇宙生物インセクトが知的生命体を摂取した時に稀に起こる、体が融合し一体化する現象の事だ。
知的生命体の姿の時にはインセクトの意識が体を操る事ができて、逆にインセクトの姿の時には知的生命体の意識が体を操る事ができる。
この現象の発生確率は10万分の1と言われていて、いまだに発生する原理は解明されていない。)
「分離する事は出来ないのか?」
(この現象が発生する原理が解明されていないのだから、分離する事などできるはずもない。)
「それもそうか......。」
俺は溜息をついた。
その頃、章描明人が乗船していた惑星観測宇宙船の救難信号を、地球の日本に存在する宇宙開発機関の宇宙船ナビゲーション室日本支部が受け取った。
ナビゲーション室にいるナビゲーターが室長に報告する。
「こちら宇宙船ナビゲーション室日本支部。宇宙船あおぞら号から救難信号を検知しました。
内容は船体に対する隕石の衝突による破損事故。
今、あおぞら号の監視カメラのデータを受信します。
......これはどういうことでしょうか?
インセクト......インテリジェンスマンティスのメスと宇宙船員の男性が融合し、インテリジェンスマンティスの姿となりました。」
室長はナビゲーターから報告を受け取り、宇宙センター日本支部長にあおぞら号の状況について報告する。
「あおぞら号の船員である章描明人の身に融合現象が起きました。
このような事態は滅多に起きる事ではありません。
宇宙センター日本支部長、どう対応いたしましょうか。」
「なるほど、確かに融合現象だ。
まさかあおぞら号の船員と融合するとはな。
この現象の原理を解明すれば、生体兵器の開発や医療技術の開発に役に立つ可能性がある。
早速捕獲し、研究しよう。
この船員の家族には、宇宙船の事故により亡くなったと伝えればいい。」
「しかし、それは人道に反する事ではないですか?」
「人道など関係あるものか。
この宇宙世紀時代、科学の発展による全体の幸福こそが、個の幸福よりも優先されるべきものだ。
それに、融合現象の原理を解明すれば、この宇宙センター日本支部の名前が泡沫になる事なく歴史に刻まれる事になる。
君もその名誉に浴する事ができるかもしれないのだぞ?
それでも私の意見に反対するのか?」
「いいえ、滅相もありません。
早速、融合体を捕まえます。」




