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第1話 宇宙の狭間で出会った2人

 お腹が空いた。文字が足りない。外骨格に包まれた腹部が空腹の唸りを上げる。


 私の名前はセンテ。知的生命体の知的情報を栄養源とする生命体インテリジェンスマンティスのメス。

 全長は3メートルの幼児期と成人期の中間である個体。

 インテリジェンスマンティスの外見は、人間の上半身と地球にあるハナカマキリという昆虫の下半身で構成されている。

 更には、全身に鋼鉄の様に頑丈な外骨格を持ち、高度な擬態能力とステルス能力も持ち合わせている。


 そんな私は、群れからはぐれて宇宙を漂っていた。

 群れからはぐれたのは、仲間を守るために天敵であるウィングポイズンスピアの一団と一人必死で戦ったからだ。

 おかげで味方は全員逃げる事ができて、私は勝利したが、その直後に耐え難い飢えに襲われた。

 エネルギーを限界まで消耗してしまったから、極端な栄養不足状態になってしまった。


「お腹空いたよー。本の文章を食べたいよー。」


 私は虚空に向かって叫ぶ。


 インテリジェンスマンティスは知的生命体の知的情報を栄養源とする。

 私の好みは、本の文章だ。

 本は素敵な物だ。

 本には様々な知識や物語がある。

 見て感じて触れると、自由な空想の世界に連れて行ってくれる。


 私の叫びは虚空に消える。

 これからどうしようか。

 私は宇宙という海を必死で泳ぎ、何か食べ物となる本が無いか探す。


 しばらくすると、人間がよく乗っている白い宇宙船を見つけた。

 宇宙船は隕石とぶつかり、ぺしゃんこに潰れていた。

 人間。

 本を作り、読み、それを通して感情を昂らせて幸せになる生命体。

 人間はいないだろうか?

 いたら体に取りついて栄養源にできる。


 私は宇宙船の操縦室に向かう。

 宇宙船に乗っている人間はだいたい宇宙船の操縦室に集まっているのが定番だ。

 宇宙船の操縦室は、血を流した人間の死体だらけだ。

 インテリジェンスマンティスが知的生命体から情報を得る時は、生きている生命体から摂る必要性がある。

 その中でも一人だけ、息のある人間の男がいる事を確認できた。

 意識不明のようだ。

 顔つきは日本人だろうか。

 私は両腕についている鎌で、生きている人間の男の頭を抑えつけ、口から食腕をだして頭蓋にぴとっと吸い付く。

 そうすると、人間の男の知的情報を摂取できた。


 この男が章描明人しょうかあきとという名前である事、孤児だった事、宇宙センターが運営する孤児院に拾われた事、宇宙センターに恩を感じて惑星観測員になった事が分かる。


「まだ文字が足りないよー。」


 私は叫ぶ。

 ぐーと腹が鳴る。

 私は文字を食べ足りなくて、更に頭蓋に吸いついて情報を得ようとした。


 そうすると、だんだんと体が溶けてゆく感覚がして、私はしばらく意識を失った。




 俺の名前は章描明人しょうかあきと

 惑星観測員の一員として働く日本人だ。

 俺は地球から月に移動している時に宇宙船に乗っていたが、隕石の衝突事故に遭い、意識不明の重体になった。

 しばらく時間が経って、俺の意識が戻った。

 体を動かそうと思って動かす事を試みるが、体は言う事を聞いてくれない。

 周囲を見渡すと、生きている者は俺しかいないようだ。

 そのうち、インテリジェンスマンティスが俺のそばに寄ってきた。

 インテリジェンスマンティスは宇宙生物図鑑に載っているの画像を見たぐらいで、実際には見た事は無く、生態もよく知らない。

 段々と近づいてくる。


 インテリジェンスマンティスの口から食腕が出て、俺の頭蓋にぴったりと吸いつく。

 そして、俺の頭の中にある何かを吸う。

 吸われている間、俺の頭の中には走馬灯が走り、文字が浮かんでは消えていた。


 俺は亡くなってしまうのだろうか?


 不安になり、心臓が早鐘を打つ。

 手足の先から汗が滲み出していく。


 緊張して体を強張らせていると、唐突にインテリジェンスマンティスの捕食は終わった。


「?なんだ?あのハナカマキリはどこかに行っちまったぞ?」


 俺はようやく体を動かせるようになったので動かしてみると、両腕にインテリジェンスマンティスの武器である鎌が腕についている事に気づいた。

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