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首椿  作者: 真崎いみ
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第7話

「ー…、」

人の声、というか悲鳴で目が覚めた。

健は脳に血液が廻るまで、しばらくぼんやりと天井を見つめていた。目線を動かして部屋の時計を確認すると、午前11時を過ぎたところだった。

「あー…。一樹、見つけてもらったかな…。」

布団から手を出して、室温を確認する。ベッドの中との温度差が激しくて、起きるのが億劫になった。そのまま腕を伸ばして、ベッドサイドにあるテーブルから手探りでエアコンのリモコンを取って、操作した。

空気が温くなるのを待って、ようやく健はベッドから出ることに成功する。

大きくあくびをしながらカーテンを引くと、警察が到着していて人だかりが前の駐車場にできていた。

「あらら。」

結構な騒ぎになっている。人一倍騒ぐことが好きな一樹にとって、良い最期になるのではないだろうかと思う。


アパート所有の駐車場だったために、住民全員に警察の事情聴取が行われた。知らぬ存ぜぬで通したが、最後に指紋の採取の協力を促されたので了承した。

玄関の扉を閉めて、考える。

一樹の自動車には証拠を残しすぎた。遠くない未来、健の罪が明るみになり逮捕されるのは間違いないだろう。となると、一樹の殺人の他にも色々と露見することになる。今まで捕まらなかったこと自体が奇跡だったのだ。腹をくくるべきだ。だが。

「もう一人ぐらい、食べたいなあ。」

逮捕されて名前や顔写真が公表されたら、誰もが健に警戒するようになる。きっと人間を食べるのは、困難になるだろう。

…というのも、釈放されたら、の話だが。

今まで食べてきた人たちのことを思えば、死刑が相当だ。

健は小さなため息を吐く。ただマイノリティに位置する人肉食が好きなだけなのに、生きるのもままならない。


警察はバカじゃない。だからこそ、逮捕されるまでは自由に過ごそうと思う。健は身支度をして、アパートを出た。

さて、どこに行こうか。

スマートホンは置いてきたので、会社から連絡が来ることもない。月曜日が来ようと、もう出勤する必要も無いのだ。その開放感から、妙に清々しい思いだった。

「…、」

両手に白い呼気を吹きかける。手袋を忘れた手は寒さにかじかんで肌を紅く染めていた。手を揉むように温めていると、雪の結晶が肌に降りて一瞬で溶けた。

健は頭上を仰ぐ。12月の名残を惜しむような雪が降り始めた。

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