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55事件翌日

「どうして、私のベッドに入り込んでいるのですか?そして、なぜ、半裸ですか?」


 朝、実乃梨が目を覚ますと、そばに和音の姿があった。妙に肌色が多いことに気付き、周囲を見渡すと、なぜか昨日、実乃梨が貸したパジャマがベッドわきに散乱していた。和音には来客用の布団を準備して、実乃梨の寝室とは別の部屋を用意していたはずだ。


「一人で寝るのはなんだか嫌だったの。それで、実乃梨さんのベッドにもぐりこんじゃった!気付いたら、暑くてパジャマは脱いでいたの」


 テヘッと可愛らしい笑みを浮かべて舌を出していたが、相手は実乃梨と同じ、不老不死の女性である。実年齢が何歳だかわかったものではない。そんな女性が可愛らしい仕草をしても、ただ気持ちが悪いだけである。


 下着姿の和音にあきれのため息がでるが、いつまでもベッドに居座り続けるわけにはいかない。実乃梨は反省の色が見えない和音を放っておくことにした。そのままベッドから降りて、パジャマからスウェットの上下に着替えをして、リビングに向かうことにした。



「ねえ、私の分も朝食はないの?」


 一人で朝食を取っていると、和音もリビングにやってきた。自分の家でもない、他人の家にも関わらず、家主に対して、ずいぶんと偉そうな態度である。実乃梨は無視して残っていたバターの塗られた食パンを口に入れ、牛乳で喉に流し込む。そして、朝のニュースでも確認しようとテレビをつけた。


「昨日未明、身元不明の女性の遺体が発見されました。場所は」


「これって、まさか」


「そうねえ。昨日、私たちがいたビルのことよねえ。警察の仕事の早いこと」


 テレビをつけたことを後悔した。昨日起こったことがすでに警察に調査されている。自分たちのもとに警察が来るのも、時間の問題だろうか。


「そんなに心配しなくても、私たちに警察の手が及ぶことはないから。そもそも、私が何人の不老不死の女性を《《救済》》したと思っているの?今までばれていないのだから、今回も大丈夫」


 実乃梨の青い顔に気付いたのか、事件の首謀者は、のんきに実乃梨の家の中を物色していた。冷蔵庫を勝手に開けて、自分の朝食を探しているようだ。卵やチーズ、ハムなどを見て喜んでいた。


「今までばれていないからと言って、今回はどうかわかりません。とはいえ、私は怪しまれないように、会社に行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 二人が会話している最中も、テレビでは昨日の不老不死女性殺害の事件が報道されていた。詳しく見る気にもなれず、実乃梨は食器を片付け、身支度を整えるために洗面所に足を運んだ。和音は勝手にキッチンを使い、自分の朝食を作っていた。




 家を出ると、実乃梨は最近の習慣で、つい永徳の姿がないか確認してしまう。昨日のことがあったのに、護衛の仕事を続けるとは思っていなかったが、いないとわかると、なんとなく寂しく感じた。しかし、それと同時に永徳の本性を知ったことで、このまま顔を合さない方が身のためだという気持ちもあった。


「久しぶりに自分の車で通勤すると思うと、変な気分」


 駐車場に停めてある自分の軽自動車が懐かしく感じてしまったが、そこまで時間が経ったわけではない。たかが一カ月ほどの間に、いろいろなことがありすぎた。自分の不老不死人生の中で、最も密な時間だった気がする。


「まだ、その時間は続いているけどね」


 事件が終わったわけではない、今はまだ実乃梨の家でゴロゴロしている和音だが、またいつ、不老不死の女性を殺そうと計画するのかわからない。さらっと殺人を辞めると口にした言葉を実乃梨は信じていなかった。



「さっさと事件を終わらせて、平和だけど、ある程度の刺激に満ちた生活を送りたい」


 そのために、実乃梨は今日も会社に通うのだ。


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