42 放課後のひととき
「あぁ、時間だね」
図書館で勉強していたが、周りがザワザワし始めた。閉館のようだ。向かい側にいるカズ君も大きくのびをしている。
『大学受験はしないが怠けたくない』と、こうして放課後一緒に勉強していた。特に暗くなるのが早くなったこの頃は毎日一緒に帰っている。
「部活も無事世代交代出来たし、余計に学校へ行く意味がなくなったなぁ」
「変な事いわないで」
「あはは、ちゃんと卒業するよ」
「当たり前です」
お互いの部活は後輩が中心になっていた。女子バスケは3年間で勝率をかなり上げた。さすがに大会の優勝というのは叶わなかったが、これからまだ伸びるはずだ。
野球部も秋季大会でベスト8まで残っていた。これはかなりの快挙だ。
カズ君はレギュラーを譲ったものの、その大会までは練習をサポートしていた。だからベスト8進出を決めた時は自分が出た試合のように喜んだ。
しかしそういった事もたった2ヶ月前なのに、遠い昔の話みたいだ。
部を引退したカズ君は髪を伸ばし始めていた。小学校4年生の時に野球チームに入って以来、ずっと坊主頭だった。その前はどんな髪型だったのか忘れていた位だ。
「レイ君みたいにする?」
「いや~僕は合わないよ」
レイ君はコンテストのたびに金髪にしたり戻したりと繰り返したのにサラサラな髪で、今は少し長めにしていた。
反対にカズ君は黒く硬めの髪質で、まだスポーツ刈りの状態だった。
「いっその事うんと長くして立ててみたら?」
「ええっ?!」
「金髪にして……意外といけるかもよ」
「本当に? ジャンルがちょっと違うけどなぁ」
メイクをして、鋲のついた皮のジャケットやパンツなどを身に着けたカズ君。
「ふふふっ……」
自分で言っておきながら笑ってしまった。
「ほら、やっぱり似合わないでしょ?」
「ゴメン……それ以前に想像出来なかったの」
「ひどいなぁ」
二人して顔を見合わせ笑いあった。
こうやって帰り道は受験を忘れるような話をして帰るのだ。
四大からの進路変更とはいえ受験の緊張感は変わらない。だからこうした一時が本当に助かっていた。
「そういえば、イブに予定入れて大丈夫?」
ようやく笑いが収まるとカズ君が聞いてきた。
「うん、大丈夫」
「あまり長く出歩かないようにしよう。風邪をひいたら大変だからね」
「ありがとう。たしかに早い時間のほうがいいかも」
もともと派手な事はしていなかったが、今年はもっとささやかになりそうだ。それでも受験生だと思えば十分だろう。
しかし私は再び手編みのプレゼントに挑戦していた。去年はセーターを挫折したので、もっと小さいもの……手袋にしようと思ったのだ。
2ヶ月以上前からコツコツと編み始め、完成は直前か当日かといった具合だった。
小さいから楽だろう……始めるまではそう思っていた。しかし本来、手袋も初心者には少し難しいらしい。かなりの労力と時間がかかり、受験勉強の何十倍も大変だ。




