41 最後の文化祭(3)
「最後の曲です」
カズ君は一言告げると、レイ君のピアノにのせて歌いだした。
ゆったりとした優しいメロディー。観客は静かに耳を傾け、その心地よさに身を預けた。
美しく透明感があるのに力強いカズ君の声は聴く人全ての心へ沁み込ませる。それがそれぞれの感動となって大きく跳ね返ってくるのだ。
だから観客の反応が少なくても、熱気や興奮が高まっていくのを肌で感じた。
サビに入るとギターもベースもごく自然に加わり、曲を彩る。畑君と飯沼君のハーモニーも入って、ラストに向けて徐々に盛り上がる。
そしてまさに絶唱と呼ぶにふさわしい最後のサビ。
何度か聴いているはずなのに思わず身体が震えた。
曲は再びピアノ伴奏だけに戻ると、綺麗な余韻を残して終わった。会場は水を打ったように静まり返っている。
しかし私の拍手をきっかけに、体育館が揺れるほどの拍手や歓声が起きた。
メンバーは呆然としていたが、やがて笑顔で応えた。
結局、2日目のライブには体育館へ入りきれない人が集まってしまった。
興味なかったけど評判を聞いて……という人や、『また聴きたい』という人。とにかく集まった人達が初日の比ではなかった。
しかし中学の同級生だった大賀さんや、同じく中学のバンドメンバーだった下級生の岡田君と坂井君には無事にチケットを渡せた。
「将来有名になったら同級生だった事、自慢するよ」
ゆっくり話せなかったが、大賀さんはそう言って人ごみに消えていった。下級生コンビは学校が違っても、それぞれ音楽を続けているそうだ。
私も公平にするため2日目のチケットは持たなかった。
「美紀ちゃんらしいね」
カズ君はそう笑う。
本当は行きたかったけど、一人でも多くの人に聴いて貰いたかったのだ。
しかし当日、レイ君が『文化祭実行委員会』と書かれている腕章を持ってきた。
「これで少なくとも中に入れる」
「でも……」
「美紀がいなくてカズの力が引き出せるか」
腕章を手に顔が赤くなった。
席には着けないけど腕章のおかげで2日目のライブも聴けるようになった。
直接話せなかったが、カズ君は会場に私の姿を見つけると嬉しそうな顔をした。
やっぱり来て良かった。もう一度心の中でレイ君にお礼を言う。
もちろん今日のライブも大成功だ。
(カズ君は本当に歌手として成功する)
ステージ終了後、拍手喝采を受けているメンバーを見ながら思った。
本当に……と言うと疑っていたかのようだけど、そういう訳ではない。でも2日間のライブを聴いて、そう確信したのだ。
打ち上げの時、飯沼君はともかくレイ君までテンションが高かった。畑君もちょっとだけ口数が多かったので、やはり嬉しかったのだろう。
カズ君は黙ってニコニコしながらジュースを飲んでいた。
どうでもいいが一番賑やかだったのはお兄ちゃんだったかも知れない。
こうしてRIZEの初単独ライブは大成功で終わった。
この後の体育祭を最後に、私達3年生の受験は山場に差し掛かる。




