40 最後の文化祭(2)
今回のステージ上にはピアノが用意されていた。例のバラードを演奏するためで、その曲の時にレイ君が弾く。
バンドの曲でピアノを演奏するのは中学の予餞会以来だった。おそらくほとんどの人がレイ君のピアノを聴いた事がないだろう。周りがどんな反応するか楽しみだ。
「他のバンドがいくつも集まるより観客が多いね」
中里さんが周りをグルッと見渡すと、肩をすくめた。
「夏休みのコンテストが更に効果あったのかも」
あのコンテストは後日ラジオで放送されたのだ。
「これで終わりだなんてもったいないなぁ」
「しょうがないよ。みんな進路がバラバラだもん」
「鳴海君くらいは続けられないのかね」
「大学は東京だけど勉強が大変なんだって……ね?」
私は竜岡さんにふった。
「そうみたいね」
ひとごとのような返事だ。
「その辺の事、私にはあまり話さないの」
「それは……リューちゃんには心配かけない自信があるんだよ」
中里さんがフォローした。
「あ、始まるよ」
若干気まずい空気が流れたところだったけど、丁度メンバーが出て来た。
観客席から歓声があがる。
(どうしてレイ君は竜岡さんに大学の事を言わないのだろう)
練習で集まった時には少しだが話していた。
中里さんの言うとおり離れる事に不安は感じてないから? レイ君の目指す音大は東京にあって家からは通うにはかなり遠いので、一人暮らしをするはずだけど。
ステージを見つめる竜岡さんの横顔を複雑な気分で眺めた。
「……!」
いつの間にか準備が終わっていて、レイ君のカウントでカズ君が叫ぶ。
ライブの始まりだ。
コピー曲を日替わりで2曲ずつ、オリジナル曲はバラードもあわせて5曲。まさに総決算だった。
初めから軽快にとばす。
観客はすでに身体が揺れ始めていて、テンションが急上昇していくのを感じる。
そのまま2曲3曲とハイスピードナンバーが続き、勢いは加速していく。
メンバー全員も自由に『暴れて』いて、コンテスト以上に生き生きとしていた。
ミドルテンポのコピー曲を挟んだ後、また勢いのあるオリジナル曲が始まった。
カズ君はますますステージを縦横無尽に動く。
今度はカズ君もギターを弾く場面もあり、畑君との掛け合いや飯沼君とも並んで弾いたりして、とても楽しい。
いつも弾き終わった後、私まで嬉しくなるような笑顔になる。それがとても好きだ。
ドラムソロの後にはレイ君を振り返り、アイコンタクトをとりながら歌っていた。
これはアドリブだ。
レイ君がそれ気付き、少しはにかんで笑う。何故か女の子の悲鳴のような声が聞こえた。
観客も頭を振ったり身体を動かしたりしながらそれぞれが楽しんでいる。メンバーも観客も、いい雰囲気でこの空間を共用していた。
それでもやがて終わりが近づいてくる。
あと1曲……新曲のバラードを残すのみとなった。
レイ君がドラムを離れてピアノへ向かう。観客はざわついた。
ここで初めてピアノは片付け忘れではない、と気がついた人が多かったようだ。




