20 クリスマスプレゼントの準備
「鳴海君、おはよう」
「鳴海君……」
「鳴海……」
文化祭以来、教室では久し振りにこの光景を見る。レイ君の周りに女子が集まってとても華やかだ。いや女子だけでなく、普通に男子もいた。
レイ君は昔に比べると色々な人と積極的に話すようになり、交友を広げている。バンド活動のためなのか……少なくとも私に対するようなぶっきらぼうに対応する事はない。
一方カズ君は女子が詰め掛けるという事はないそうだ。
「それは吉山さんがいるからだよ」と、中里さんが言う。
「こんな完璧な彼女に立ち向かう女子なんていない」
完璧というのはよく分からないけど。
そして最近竜岡さんからレイ君について聞かれるようになった。でも私では意外と分からないことが多く、参考にならなかったようだ。
竜岡さんならレイ君と並んでもお似合いだと思う。ただレイ君の気難しい部分もあり、そこを受け止めてくれるだろうか心配ではある。
11月に入り、私はあるお店に初めて足を踏み入れた。
「色は……白。あ、やっぱり生成りかな」
「黒じゃなかったの?」
「黒は今してるから」
「あぁ、そう」
ここは手芸店。カズ君へのクリスマスプレゼントにマフラーを編んでみようと思いたったのだ。そのために手芸部の子に準備段階から色々教わった。
お店には面白がって中里さんがついてきている。
「お兄ちゃんに何かあげてみないの?」
「無理無理。格好いいから憧れてるだけだも~ん」
「ふーん」
実際中里さんは私の家に電話をかけてきても、お兄ちゃんとは話そうとしなかった。
「竜岡さんは鳴海君に本気みたいだけどね」
適度な毛糸を手に取り、中里さんは小声で言った。
「うん」
その竜岡さんは、今ここにいない。文化祭以降レイ君とはよく話すようになって、最近は駅まで一緒に帰る時もある。ずいぶん距離が近くなったようだ。
しかしレイ君からは竜岡さんをどう思っているのか、聞いたことはない。
どうにか毛糸とカギ針を購入して家に戻る。
教わっていて改めて私は不器用だと分かった。手芸部の子が『初めてだしね。手編みは気持ちだよ』と慰めてくれる位に。私の技術では今から始めないと間に合わない。
(ええっと、こうして……)
こうしてかなり時間をかけて格闘した一段目は少しヨレヨレだった。道のりは遠い。
例えどんな出来上がりだろうとカズ君は喜んでくれるだろう。だからと言ってそれに甘えてはいけない。
それから家で時間を見つけては編んでいった。しかし『一針一針心を込めて』と聞くけど私には全然そんな余裕がない。もし次に作る時には、そう思えるのだろうか?
もっともマフラー以上に簡単そうな物がないから、次があるかどうかは分からないけど。
(よし、出来た!)
期末テスト前は進まなくて焦ったけど、イブの直前にギリギリ完成した。途中も手芸部の子にアドバイスをもらいながら編んだので、出来栄えはなんとか合格点……だと思う。




