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第九話 強引だよ、ナーガさん!

 ナーガさんの攻撃は続きます。

 かなりの手練れです。

 手加減の仕方を間違えるとコッチがやられてしまうかもしれません。


「やるなっ! だが、避けてばかりで反撃はできねぇ————」

「エンジ流剣殺法、狂詩剣ラプソディ一番————『拳槌』」


 握り込んだ剣の柄の先でナーガさんの拳を打ち据えます。


「イテッ! なかなかエグいな。

 躊躇いなく拳の骨を砕きにきやがった!」


 痛いはずなのにニコニコしています。

 痛いのが好きなんでしょうか?

 だったら私もバツの悪さを誤魔化すために思いっきりやってやります。


「エンジ流剣殺法、狂詩剣ラプソディ七番————『霞投げ』」


 ナーガさんの脇の下を通すように剣を突きます。


「うわっ!」


 刺された錯覚に陥ったナーガさんは体のバランスを崩してよろめく。

 そこに私は付け込みました。

 彼女の頭をむんずと掴んで勢いよく地面に叩きつけます。


「ガハアッ!!」


 身体を何度かバウンドさせ、ナーガさんは動かなくなりました。

『霞投げ』はうまく極まると無防備な状態で地面に叩きつけられます。

 やり過ぎたかもしれません。


 怖くなった私はナーガさんの肩を揺すります。

 ですが、ぐったりしたままで反応がありません。


「ひ……人殺しいいいいいい!!」


 さっき倒した連中がそう叫んで逃げ出しました。

 やむを得ません。

 他の人に見つかる前に口封じを————


「しんで……ねぇっつーの……」


 途切れ途切れにですがナーガさんが言葉を発しました。

 私は胸を撫で下ろします。


「ごめんなさい、ムシャクシャしてつい……」

「通り魔みたいな言い訳だな……

 吹っかけたのは、コッチだから文句ねえよ……」


 しばらくするとナーガさんは起き上がり、その場に座りこみます。


「かなりの使い手だなぁ。

 素手とはいえアタシが一方的にのされるなんて久しぶりだ。

 しかも手加減込みで」

「いや、割と力は入れてたんですけど」

「でも刃で斬り落とさなかったろ。

 さっきの連中だって。

 言っとくが、そんな加減する必要ねえぞ。

 フェブリアルの治癒術師は有能だからな。

 息の根が止まってない限り、四肢がバラバラになってもくっつけてくれる。

 ま、値段は張るがな」

「はあ、すごいんですね。

 教えていただいてありがとうございます」


 いきなり殴りかかってきましたがナーガさんは悪い人ではなさそうです。

 私はペコリと頭を下げてお礼を言いました。


「気にすんなって。

 これから一緒にパーティ組む間柄なんだし」


 そう言って私と肩を組みます。

 とっても馴れ馴れしいです。


「それもそうですね。

 私パーティ組むの初めてなんですよ」

「おお、そうか!

 てっきりどっかの街で冒険者やってたと思ってたんだがな!

 ククク、オマエさんの初めてはアタシのもんだ!」

「ハレンチです! まったくもう————って!?

 ……パーティ?」

「パーティ」

「誰が?」

「オマエが?」

「誰と」

「アタシと」

「パーティ? 冒険者の?」

「パーティ。冒険者だ」

「すみません、何言ってるか分かりません」

「ん? アタシ冒険者やってるんだけど、ソロでやってるのも厳しくなってきたし、腕が立って扱いやすそうなのとパーティ組もうと」


 すごいです。

 私もよくアクヤちゃんに「マイペース過ぎる!」と怒られていましたが、その比ではありません。


「困ります。私はフェブリアルの開拓事業に従事しろ、と命令が」

「冒険者による採集や討伐も開拓事業に含まれる。

 ていうか、一番なり手が足りねえんだ。

 特に腕が立つような連中はな。

 まー、アタシに任せときなって!

 面倒見の良さに定評あるナーガさんだぜ。

 よろしく頼むぜ————えーと……」


 強引ではありますが、実際、私は世間知らずです。

 ほどよく利用するつもりで話を合わせるのも手かもしれません。


「キサラ……です」

「うっし、よろしくキサラ。

 とりあえず親睦深めるために飯でも食おうか。

 奢ってやるよ。

 肉がいい? 魚がいい?」


 ごはん! そういえばここについてから何も食べてない!


「全部!!」

「ハハハ、食べ盛りだなあ。

 よし、昼は肉で晩は魚だな!

 フェブリアルの食文化をいちから堪能させてやる!」

「わーい! すっごくいい人ですね、ナーガさん!」

「ちょろいな〜、話早くて助かるけど」


 こうして私とナーガさんはパーティを組むこととなりました。

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