第八話 ハレンチだよ、ナーガさん!
私は口が悪いわけではないのですが、思ったことをそのまま口にするのでトラブルになりがちです。
学院でも似たようなことがありましたっけ。
彼女達はナイフや短めのメイスなんかを手にして私に襲いかかってきました。
動きは予想どおり遅いです。
倒すだけなら簡単なのですが、剣で斬りつけると大変なことになります。
なので、ここは————
「エンジ流剣殺法、狂詩剣、二番————『土竜の飛礫』」
地面の石畳をえぐるように剣を叩きつけます。
すると、砕けた石畳や地盤が散弾となって向かってくる彼女たちに襲いかかりました。
「ギャアアアアアアアア!!」
「イダダダダダダダ!!」
「んっほおおおおおおおお!!」
当たった箇所をさすったり押さえたりしつつ悲鳴を上げて地面に転がります。
「ふぅ、この技は直接剣で斬りつけないから大怪我しない。
私の剣技の中でも優しい技なの」
「「「どこがじゃああああああっ!!」」」
彼女たちは一斉に叫びます。
うん、元気ですね。
安心して、立ち去ろうとした矢先でした。
「クックックッ、小物を狩りにきたら思いがけぬ上玉に出くわしたじゃんか」
路地の向こうからゆっくりと近づいてくる影があります。
引き締まったスレンダーな長身。
ビキニアーマーの上にジャケットと腰布を身につけた出で立ちから戦うことを生業にしているのは分かります。
「げえええっ!! ナーガ……さん……」
地面に転がっている一味が声を上げました。
明らかに狼狽えています。
「テメエらカツアゲみたいなしょーもないことに精出しやがって。
そんなに元気ならしばらく苦役命じられても問題ねえな」
「そ、そんなぁ〜〜!」
フフン、と鼻で笑ったナーガという女性の顔がはっきりと見えました。
猫科の獣を思わせる凶暴そうな印象を受けますが、顔の作り自体は整っています。
紫がかった黒髪や褐色の肌はミステリアスな印象を受けます。
そして、長くてとんがった耳……
「あのー、もしかするとダークエルフさんですか?」
「なんだい、エルフは見たことないのかい?」
「はい。本や絵で見たことはありますが実際には」
「ふぅーん、なるほど新入りか。
どうりでアタシが見知らぬわけだし、コイツらがカモにしようとするわけだ。
アタシはナーガ、フェブリアルにようこそ。
お嬢様」
マズいです。私が貴族であることがバレてしまいそうです。
「おうおう! 誰がお嬢様でいやがりますかあ!
私はこれでもシャバの空気を吸うのは久方ぶりの極悪人で」
「なんだっていいよ。
それよりさー、アタシとイイコトしない?
剣振るうアンタのこと見てたら疼いちゃってさぁ……抑えが効かないんだよ」
細く長い指で艶かしく自らの肢体をなぞり、唇に咥えます。
フゥー、とってもエロティックです。
「や、やっぱりこの街では女の人同士でそういうことをするんでしょうか?」
「そだね。野郎がいないから仕方ナシだ。
だが、これが案外悪くない。
特にアタシはそんじょそこらの男とは比べ物にならないぜ。
お手合わせしてくれるかい?」
えぇ〜〜……どうしましょう。
とっても魅力的な女の人だし、そういうことを想像すると顔が赤くなってしまいます。
うーん、でも下手をするとここに10年くらいいることになりそうですし、そういう楽しみ方を覚えておいた方が良いのかもしれません。
女は度胸! なんでもやってみるものです!
「じゃ、じゃあ……少しだけ。
痛いことはナシですよ」
「ふふーん、そりゃあ————無理ってモンだろっ!!」
「えっ!?」
ナーガさんはいきなり飛びかかってきて私の顔面目掛けてパンチしてきました。
首を傾けてかわします。
「うららららあらぁっ!!」
拳と蹴りを織り交ぜた連続攻撃。
当たれば絶対痛いです。
「な、なんの真似ですかあ!!」
「オマエが承諾したんだろうが!
アタシと決闘、してくれるんだろ!
……恥ずかしさと自分のバカさ具合に死にたくなってきました。
もうワザと一撃もらっちゃおうかなぁ……




