第七話 路地にいる奴だいたい悪者
アクヤちゃん達の竜車が地平線の彼方に消えていくのを見送った後、私は宿屋さんを探すためフェブリアルの街に入りました。
ワケアリの女性ばかりが集まるからどんな街かと思えば、至って普通の街です。
駆け回る小さな女の子は当然、お母さんらしき人に抱えられた赤ん坊もいるし、腰の曲がったおばあちゃんだって。
でも男の人は一人もいません。
お店の前に立って声を張り上げているのも女の人。
重そうなレンガを一輪車で運び、積んで家を建てているのも女の人。
女の人を両手に侍らせて前髪をサラサラさせているのも男装した女の人……アレは労働なのでしょうか、趣味なのでしょうか?
この街が女の人しか住めない街というのはホントのことのようです。
それだけでなんとなく安心できるような気になって……油断しました。
街を歩き回っていると、いつの間にか迷路のような路地に迷い込んでしまい、汚れた地面や木箱で塞がれた道を避けて進んでいると袋小路に突き当たりました。
それと同時に大勢の足音が押し寄せてきました。
「へっへっへっ。一名様ごあんな〜い」
「おうおう、メチャクチャべっぴんさんじゃねえか。
ちょいと見ねえ顔だな。新入りか?」
「とりあえずネーチャン、痛い目に遭いたく無けりゃ身ぐるみ置いてきな!」
あらら……
肩にトゲ付きのアーマーをつけていたり、髪の毛を鶏のトサカのようにしていたり、両腕にタトゥーを入れていたり……見た目から悪そうな奴らまで全員女の子です。
「お断りさせていただきます。
私の持ち物は母や友から賜った大切な品。
おいそれとお渡しできません」
と返すと、
「なんだぁ、何語使ってんだテメェ!?」
「めんどくせえ言い回し……まさかお貴族様か?」
ハッ! いけません。
隊長さんに言われましたものね。
この街で貴族とバレたら面倒なことになると。
私はコホン、と咳払いして、
「てやんでい! バーロー!
このすっとこどっこいが!
テメェらにくれてやるモンなんてビタイチねえんだよ!
おとといきやがれ!」
と啖呵を切って返します。
すると、彼女達は少しの間を置いてから、
「ギャハハハハハハハハ!!!」
とお腹を抱えて笑い始めました。
「な、なんだよ! そのマンガでは出てくるけど実際は使わねえ言葉の羅列はよぉ〜」
「お前、お笑い芸人か?
だったらいい線行くと思うぜ。
舞台の上で素っ裸でそうのたまったら客席がドッカンドッカンよ」
マンガ、お笑い芸人……彼女達は私の知らない言葉を使います。
埒があきません。
フレンドリーすぎるのはどうかと思いますが、アクヤちゃんに対するような口調で話しかけましょう。
「笑って楽しんでくれたなら、どいてもらっていいかな?
早くお宿に泊まりたいの」
「ダーメ。コッチはろくに飯を食えてないんだ。
お恵みくださいませよぉ〜、お嬢さま」
ご飯食べられてない……本当ならかわいそうですけど。
じーっと彼女達の体つきを見ます。
「おい、なにジロジロ見てやがんだ?」
「……ご飯食べてないわりに豊かな腹回りだと……胸よりお腹の方が出てるじゃない?」
「はぐぅ!!」
私の言葉を聞いて女の子達は仰け反ります。
「二の腕や太ももまわりもしっかりしてるし、柔らかくてまるで脂身のよう」
「がはぁっ!!」
「ついたお肉が顔面にまで達してるじゃん。
目鼻が埋もれかけてる」
「ぐほぉっ!」
「本来ゆったり着るはずの服をはちきれそうにさせておいて……なにがご飯食べれてないんだよ!!
言葉遣いには気をつけなよ!!」
貧しい食卓が常になっていた私としては許せん話でしたので声を荒げました。が、
「ぶっ殺すぞてめぇーーー!!!」
どうやら怒りを買ったみたいです。
最新部分まで、読んでいただいてありがとうございます。
まだ追放先に入ったばかりですが、
「これは面白くなりそう!」「安心して見ていられる」「キサラちゃんにご飯食わせたい!」
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