グナー遺跡3
「それにしても…グナー遺跡はほとんど探検が終わっていると聞いていたのですがなんでこんなに魔物がいるんですかね?」
「確かにきになる……」
階段を下りながらルルカが疑問を口にする。
するとペトラルカも同意見なのか頷く、その答えは多分……
「俺の魔石が本人が近くにいることで反応しているんだろ、魔石の魔力が漏れ出し始めてるんだ」
魔物が発生する条件は魔力の濃度が高く、その濃度が高ければ高いほど発生しやすくなる。
グナー遺跡に魔物がいなかったのなら俺がきたことで俺の魔力の封印された魔石が反応して魔力が漏れ出たことによる可能性が高い。
「多分俺が近づくほどに反応するから龍王の間の近辺はキメラ以上の魔物が出ると思う。注意してくれよ二人とも」
「わかってる……」
「はい!」
どうやら二人もちゃんと準備できているようだ。
なら心配はないかな。
俺は一人感じるひときわ大きな魔力を感じながらそう思う。
先ほどのキメラの比ではない大きな魔力を龍王の間扉の前あたりに感じているのだ。
ルルカやペトラルカの魔力の大きさが10だとすればこの感じは70ぐらいの差があるのでかなりの大物だろう。
昔の魔物ではやっと下の中ぐらいだが今の時代の魔物では上の下ぐらいだと予想するがどうなんだろう。
「すみませんナオヤ様」
「ん…?どうしたルルカ」
「あそこにいるのは……」
「んー……」
トカゲのような赤い鱗に大きな羽と尻尾、コモドドラゴンのような顔つきの爬虫類に近い顔立ちの四足歩行の生き物……
「竜種、火竜だねえ……」
「ですよね!?私の目がおかしくなったとかそう言うんじゃないですよね!?」
「まあまあ、でもかなり弱い部類だけど……ペトラルカとルルカの二人に竜の討伐経験は?」
「「あるわけない(でしょう!!)」」
「ですよねー……」
そうだと思った。
確かに竜の討伐は前の召喚の時でもかなり大掛かりでやるものだったけど。
でもこのくらいなら俺一人でもできるレベルだな。
「仕方ない俺が一人で行く。二人はそこで待ってな」
「えっちょ…ナオヤ様!」
ルルカが何か言いたそうにしていたがめんどくさいからいいや。
走り出した状態から強化魔法を体にかけて白鋼と黒鋼に魔力を注ぎ込む。
「チャージ!」
そう唱えると二本の短剣が大きくなり二本の大剣に変わる。
そのまま火竜の片翼を切る。
「UUUUUGAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「怒ったか?でもすまないがすぐに済ますぞ?」
黒鋼を肩に担ぎながら口の中に魔力を溜め込み始めた火竜に向かってまた走る。
ブレスなんかさせるわけないだろ。
残っている片翼を切り落として今度は俺も魔法の発動準備に入る。
「エンチャント…『魔力撃』、『蒼炎』、『一迅』」
俺は使えるもう一つの魔法である付与魔法を白鋼と黒鋼に付与する。
付与魔法は様々な能力を武具に付与してその武具の性能を引き上げる魔法だ。
今回付与したのは威力増加の「魔力撃」、火属性を攻撃に付与する「蒼炎」、切れ味を増加させる「一迅」を今回は白鋼たちに注ぎ込んだ魔力を使って付与した。
元の短剣の大きさに戻った白鋼と黒鋼から蒼い炎が迸る。
「蒼炎連撃……『叢雲』!」
俺は飛龍の懐に入り込みその体を切り刻む。
その切り口からジュゥと肉が焼ける音がなり鮮血があちこちから吹き出す。
そのまま高速移動しながら火竜の体を切って切って切って切りまくる。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA……」
火竜の口から苦悶の鳴き声が溢れるが関係ない。そのままとどめを刺させてもらうぞ。
俺は最後に火竜の首を切断して終わらせる。
ドシンと大きな音を立ててその場に落ちる火竜の首と倒れる体。
その音が戦闘が終わったことを告げていた。
「ふう……おーわりっと」
俺は白鋼と黒鋼をしまいルルカたちを呼ぶ。
「ペトラルカ……これ」
「火属性の魔法付与で攻撃した後、そのまま首を切り離している…ここまでの魔法付与の使い手はそうそういない。しかも首のところは完全に焼き切ってるから炎もかなり高温……」
「前の召喚の時はそんなに難しい付与魔法じゃなかったけどそんなにすごいか?」
火竜の骸をみながらルルカとペトラルカは唖然としているが、昔の付与魔法にはもっと強力なものがあるからこの程度で驚かれては困るんだが。
「さあ、さっさと龍王の間に行こうか。この世界で旅をするのなら早く魔力を取り戻したい」
「はい!五百年前の伝説級の武具…私……気になります!」
「ん……気になる」
なんかルルカの言い方が前に見たアニメのキャラみたいな感じがしたけど気のせいということにしといて火竜の骸の奥にある大きな扉のところに手をかける。
「確か魔力を注ぎ込んで……」
開け方は覚えていたのでそのまま扉を押す。
ゴゴゴ…
と大きな音を立てながら龍王の間の扉が開き、中にあるものが見えてきた。
その部屋は神殿造りの20畳ぐらいの大きさでその中心にある台座には石の剣が刺さっている。
そしてその奥には二メートル四方ほどの黒い魔石と七色の魔石がそこにあり静かで時の時間が止まっているような空間がそこにはあった。
「ここに武具があるのですか?」
「正確にはあの魔石の中に一緒に封印されている。その方が安全なものがあったりするし」
ルルカが龍王の間を見て俺に聞いてくる。
あの黒い魔石には俺の、七色の魔石には魔力の他その中心に異空間に荷物をしまうことができるマジックバックというものが入ってる。
確か容量は30メートル四方のもので中に入ってる荷物は時間経過もしないので確か料理も入っているとしても出来たてのものが出てくるはずだ。
……まあ、流石に捨てよう。
俺はそのまま中に入り黒い魔石に手を触れる。
「確か取り込むには……『封印解除』」
俺がそういうと黒い魔石にひびが入りそのひびのあちこちから黒い魔力の奔流が溢れ出して俺に降りかかる。
「ナオヤ様!?」
「大丈夫!?」
流石に驚き、声をかけてくるが俺は心配ない、と声をかけてそのまま魔力を取り込むことに集中する。
取り込む魔力の量が思ったより大きかったので集中しないと俺が魔力に押しつぶされるからだ。
俺の体が取り込んだ魔力に順応しようと成長しているのか身体中からミシミシと音が鳴り身長が伸び、髪の色が少し色素が抜けて灰色になっていきその代わり体の左半分の肌の色が少し褐色肌っぽくなる。
前の召喚された時の容姿に少しづつ戻っているのがわかり少し懐かしくなるがそんなものの感傷をしている時間はない。徐々に流れ込んでくる魔力の量も増えてきているのだ。
「…ぐ…あ」
少し苦しいがこのままいけば無事に取り込めるはずだ……
♢♢♢
「あれ?ここは?」
気づいたら俺は一面白い世界にいた。体も取り込む前の姿に戻ってる。
俺は身の回りをみわして場所を確認するが何もここがどこなのか判別することのできる場所がない。
「何がどうなんってんだ?」
「ここわあなたの精神世界よ。あなたが複製模倣した魂たちの保管場所にもなっているわ」
一人で呟くとどこからか女性の声が聞こえた。
その声はひどく懐かしくもう聞けないと思っていた彼女の声。
「アルメリア……?」
「久しぶりね。ナオヤ」
魔族特有の角に銀色に輝く綺麗な長い髪、そして魔族にしては珍しい翡翠色の瞳。
五百年前、俺と共に戦った魔王にして覡の巫女そして俺の恋人であった女性……アルメリアがそこにはいた