自由
「久しぶりね。ナオヤ」
俺はそのアルメリアの姿を見て口にしたのは……
「偽物?」
だった。
「本物よ!」
アルメリアが俺の言葉を大きな声で否定する。
「だよな……偽物じゃないならって確かここは俺の精神世界だったか」
「本当にあなたらしいわね…なんで精神世界だけど再会したのにこんな漫才やんなきゃならないのよ……」
「そりゃ俺は俺だからな。会話でふざけるのはいつものことだろ?」
「そういえばそうね……」
俺の言葉にアルメリアは納得する。
「それで……なんで俺は精神世界にいるんだ?確か俺は魔力の吸収の途中だったんだけど」
「私が呼んだのよ。今までも何回も呼ぼうとしたけどうまくいかなくてね、魔力が完全な状態じゃなかったのが原因見たい。あなたの魔力が元に戻ったからやっとこっちの世界に呼べたみたい」
「そうなのか。俺の体は今どうなってる?」
「気絶してる」
「気絶してるの!?」
今度は俺が叫ぶ番だった。
「今一緒に来た二人が必死にあなたに声をかけてるわね」
そう言ってアルメリアは俺にテレビのような画面から俺がルルカたちに揺すられている姿を見してくる。
「まじか……ただ魔力を取り込んだだけなのに」
「あなたの魔力は勇者の中でも規格外の大きさでしょうに、それにあなたは元に世界でも修行を続けていたんだからそれに応じて総魔力も増えたりしてるんでしょう。いきなり増えた魔力に体が耐えきれなかったじゃない?」
「そういうもんか」
「ええ、そういうもんよ」
そう言ってアルメリアは俺がルルカたちに起こされている映像を見て少し羨ましそうな顔をする。
「どうしたんだ?」
「ううん、私も生きてたらあっち側にいたのかなぁって思って」
「……どうだろうな」
アルメリアのことだから多分無理矢理起こすんだろうな。とか、言える雰囲気じゃなかったので俺も黙ってしまう。
「なんでナオヤがそんな辛気臭い顔してんの。もう私が死んだことは過ぎたことでしょう?」
「でもよ……」
俺の顔を見てアルメリアがそう言うが俺は唇を噛みしめ俯いてしまう。
少し目尻が熱くなってきた。
「なんでナオヤが泣くのよ…普通、死んでる方の私が『あなたにまた会いたい』って言うところでしょう?」
「あのな……こっちだって、かなり立ち治るのに時間かかったんだぞ?」
「知ってるわ、私はここからあなたのことずっと見てきたもの。精神世界なんだからさらにその感情もダイレクトにきたわ」
「だったら……!」
そう言って俺が顔を上げた瞬間アルメリアの胸に頭を抱かれる。
「だから心配しないで。あなたはちゃんと私との約束を守ってくれてるもの」
「え……?」
「『あなたと世界を自由に冒険したい』、最後の時に私が言いたかった言葉よ。私はあなたの中であなたとともにあなたの眼に映る景色全部を見たわ。あなたの故郷、両親、向こうの世界での友人……私にはどれも刺激的で美しい景色だったわ」
「……アル、メリア……」
俺は彼女に声が震えていることに気がついて俺は顔を上げる。
するとそこにはその翡翠の瞳に涙をためて笑うアルメリアの姿があった。
彼女の薄く美しい唇が言葉を紡ぐ。
「だから今度はシルバを……私があなたと救ったこの世界の景色を見せて。あなたの中にいる私に」
「……また醜いものの姿を見るかもしれないぞ」
「承知の上よ」
「世界の全部は見せられないかもしれない」
「あなたが見たいと思った景色が私の見たいものだから」
「また……会えるかな」
「夢の中だけだけど、あなたが望むならいくらでも」
「そうか……じゃあ、もう行くな」
「ええ、また夢の中で」
俺はアルメリアの言葉を聞いて彼女の唇を塞ぐ。
その感触は本物のように柔らかかった。
『あなたは自由よナオヤ。いっぱい、この守った世界を見てきてね』
「ああ、もちろんだ」
ーーー様、ーーヤ様、ーオヤ様、ーナオヤ様!
「う……」
「よかった!気がついた」
「あれ、ルルカ?」
「私もいる」
「ペトラルカも」
俺は二人の声に応えながら体を起こす。
「あれ……ここは?」
「龍王の間です。ナオヤ様は魔力を取り込んだ後そのまま気絶したんです」
「そうか……」
ルルカの言葉を聞いて俺は頭に手を当てて記憶を探る。
確かアルメリアにあって…それから……。
思い出そうとしたところでルルかが顔を赤くして話しかけてくる。
「それでその……ナオヤ様服が……」
「服?」
下を見てみると成長した体には合わなかったのかあちこちが破れていた。
「あちゃ〜やっちゃったな」
「その…えっと、替えの服でも持ってくればよかったですが……」
「いや、確か前の時に使ってた服がアイテムバックの中に入ってるはずだ。ペトラルカ、そこに落ちてるポーチ取ってくれ」
「ん……これ?」
「そうそう」
俺はペトラルカから受け取ったアイテムバックからかつて着ていた服を取り出しそれに着替えることにする。
もちろんルルカたちに隠れて着替えたよ?
「よし、サイズもいいみたいだな」
俺はアイテムバックから取り出した服に着替えた自分を見る。
黒を基調としている落ち着いた服だが所々動きやすいように改良してある。
「せっかくだし鎧も来ておくか」
自分の姿を見て俺はそのままアイテムバックの中を漁る。
そして中から出てきた鎧を着ていく。こちらも黒を基調とした部分鎧で、急所をしっかり守り動きやすさを主軸に置いた設計になっているらしい。
素材は竜の中でも最上位種の黒竜の鱗を使ってるので普通の武器じゃ傷一つもつかない便利もので地味な印象だが細かい装飾が施されているのでバランスのとれた軽鎧だ。
「ルルカ、ペトラルカ、もういいぞ」
俺は制服をアイテムバックにしまってそのままアイテムバックを腰に装着する。
まだやる事があるしな。
「カッカッコいいですナオヤ様!」
「……似合う」
「ありがとう二人とも。でもまだクロスを抜いてないからここからだよ?」
そう言って俺は中央の台座に刺さっている石の剣に近ずく。
俺はその剣の柄を両手で握り、魔力を解放する。
解放した俺の黒い魔力は全てその石の剣に吸い込まれていく。
「いい加減起きろ…クロス」
そう言って俺はその剣を台座に引き抜く、それと同時にその剣から白い光が溢れ出す。
「……なに?」
「ナオヤ様!これは一体……!?」
「大丈夫、単純に力を取り戻しているだけだから」
その溢れ出した光を見て驚いたルルカたちに声をかけて俺はもう一度クロスの方に向き直る。ちょうど力が戻ったのかその光は無垢と同時に消える。
黒い漆黒の柄に同色の鍔そして漆黒の刀身、そして白の装飾がなされた十字架のようにも見えた剣がそこにあった。
「久しぶりだな。クロス、またよろしく」
俺の言葉に反応してクロスは黒い光を一層輝かせる。
剣の勇者、完全復活だな。




